だるま回り!連続で回転するにはどうすればいいの? 【使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業 #55】

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小学校教諭

平川 譲
使える知恵満載! ブラッシュアップ 体育授業

だるま回りを行うと、回転感覚を養うことができます。特に、連続回転を経験するには、だるま回りはもってこいの教材で、これは他の教材では味わうことができない面白さです。 だるま回りの連続回転で回転感覚を高めておくことで、これ以降の鉄棒運動の回転系の技や、マット運動、跳び箱運動といった他の器械運動でも、回転をより楽しむことができるようになります。ここでは、前回のだるま回りができるようになった子どもたちが、連続回転に挑戦する過程を紹介していきます。

執筆/筑波大学附属小学校教諭・山崎和人
監修/筑波大学附属小学校教諭
 体育授業研鑽会代表
 筑波学校体育研究会理事・平川 譲

1.だるま回りの連続回転

だるま回りで1回転をした後も、膝の曲げ伸ばしを続けます。頭が鉄棒の上に来たとき(③)に膝をしっかり伸ばして、頭を前方に落とし込んで(⑥〜⑦)膝を曲げます。鉄棒の上に来たとき(③)に正面を見て、背筋を伸ばすとより回転の勢いをつけることができます。

図説 だるま回り

2.授業で扱うにあたって

◎クラスの3分の2以上が1人で回転できたら、連続回転を課題として提示する。
だるま回りの授業を行う中で、すぐに連続で回転する子が出てくることがあります。だるま回りの指導が進むと、以下のような段階の子が混在した状態になります。
膝の屈伸を上手に行い、連続回転している子
よくわからず2回程度回っている子
1人で回転することができている子
まだ、1人で回ることができていない子
この段階で連続回転を共通課題として取り扱うことは避けるべきです。連続回転ができている子には、「すごいね」と声かけをする程度にとどめておきます。ここで連続回転を課題としてしまうと、学級内の個人差が広がってしまいます。だるま回りの授業では、まずは1人で1回転することがはじめの大きなステップです。

3.連続回転の習得に向けて

①お手伝いを活用しよう
はじめは5回を連続回転の目標とします。だるま回りの指導と同様にお手伝いを活用します。お手伝いは、試技者の両脇から計2人で行うと回転の勢いをつけやすくなります。自力で1回転をした直後にタイミングよくお手伝いで5回回転させます。落下防止のため、試技者とお手伝いの子の全員で、回転数をしっかりと確認します。このようにして、まずは連続で回転することを体験していきます。慣れてきたら3回転目までをお手伝いで回転して、残りの2回転を自力で回転することに挑戦させます。繰り返し行い、少しずつお手伝いで回転させる回数を減らしていきます。

図説 連続回転の補助

②上手に運動している子の観察をしよう 
連続回転をするときには、回転中に膝の屈伸を続けることが大切になります。
上手に連続回転できている子は、しっかりと膝を伸ばしています。全員を集合させて、上手な子の膝の屈伸を観察させることで、タイミングを確認します(観察時の集合方法については「ブラッシュアップ体育授業#4」を参照)。

③口伴奏を活用しよう
試技をしている子は、逆さ姿勢のため自分の体の状態を認識しにくくなっていて、膝の曲げ伸ばしのタイミングがずれてしまうことがあります。また、頭が鉄棒の上に来たときには、膝を伸ばして回転の勢いをつける準備をしますが、回転をすることに集中して膝が曲がったままになってしまうことがあります。そのため、見ている子が「のばしてー、まげて!、のばしてー、まげて!……」と言い続けることが大切になります。

4.こんなときどうするの

①安全面で気をつけることは
◎回転中は手を離さない、終わるときは鉄棒を握って前回り下りを徹底する。
連続回転中に手を離すことは大変危険です。前方や後方に投げ出され、大きな怪我に繋がってしまいます。回転が終わるまではしっかりと腿をつかんでおくことを伝えます。

回転が止まるとふとんほしの姿勢になるので、そこから鉄棒を持って前回り下りをします。だるま回りの指導を行うときには「最後は前回り下りで終わる」ということを、はじめから徹底することが大切になります。

②目が回ってしまったら
◎すぐに動かずに、その場にしゃがむ。

はじめて連続回転を経験するため、めまいを起こしてしまうことがあります。すぐにその場から動くと、隣で試技をしている子とぶつかる危険があります。すぐには動き出さずにその場にしゃがみます。

③モチベーションを維持するためには
◎連続回転の記録をとる・お手伝いの姿を称賛する
連続回転ができるようになると、5回など決められた回数で満足してしまう様子が見られることがあります。教師が子どもたちの最高の回数を記録しておき、活動終了後に新記録が出たら報告しにくるように伝えることで、前時よりもたくさん回ろうという目標をもたせやすくなります(記録の方法については「ブラッシュアップ体育授業#3」を参照)。

また、同じ班の中でも1人で1回転に挑戦する子と、連続回転に挑戦する子など、課題に違いが出てきます。そのため、試技者に触れてお手伝いをする、連続回数を数えるなど、お手伝いの方法も変わってきます。相手に合わせたお手伝いを選択できていることや、口伴奏をするなど、仲間の運動に関心をもって活動していることを称賛しましょう。

④どうしても1人で回れないときは
◎ツバメ姿勢からだるま回りを行う
連続回転まで、課題が進んでいても1人で回ることができない子がいます。そのような時には、ツバメ姿勢からだるま回りを行います。頭が下になって股関節が鉄棒に引っかかったタイミングで、鉄棒から手を離して腿を持ちます。上半身が伸びているため、勢いがつけやすくなります。ただし、この方法はクラスの1、2人だけがどうしてもできていないときに行う最後の手立てなので、基本的には膝の屈伸を上手に行って回転するようにします。
ふとんほしブランコで大きく振動できないと、だるま回りの連続回転ができる可能性が低くなってしまうのです。

図説 つばめ姿勢からだるま回り

だるま回りで連続回転を経験しておくと、頭を前に落とし込むことや、回転することに抵抗がなくなっていきます。頭の位置が上下に目まぐるしく入れ替わる連続回転の世界に没入させていきましょう。

【参考文献】
木下光正(2013)『「できたー!」を共有 指導ポイントがわかる器械運動の授業』明治図書出版

イラスト/佐藤雅枝

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山崎和人先生

執筆
山崎 和人
筑波大学附属小学校 教諭
筑波学校体育研究会 理事
1993年埼玉県川越市生まれ。簡単・手軽に「動ける体づくり」ができる体育授業を目指して、実践・研究を重ねる。子どもの「できた」が増えるように基礎感覚を重視した授業を展開し、日々研鑽中。『すぐ使える!体育教材30選』シリーズ(共著)(学事出版)等、共著多数。


平川譲教諭

監修
平川 譲
筑波大学附属小学校 教諭
体育授業研鑽会 代表
筑波学校体育研究会 理事
1966年千葉県南房総市生まれ。楽しく力がつく、簡単・手軽な体育授業を研究。日本中の教師が簡単・手軽で成果が上がる授業を実践して、日本中の子どもが基礎的な運動技能を獲得して運動好きになるように研究を継続中。『体育授業に大切な3つの力』(東洋館出版社)等、著書多数。


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