ひとクラスは何人まで? 学級編制と少人数学級の実施~シリーズ「実践教育法規」~

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田中博之

教育に関する法令や制度に詳しい早稲田大学教職大学院・田中博之教授監修のもと、教育にまつわる法律や制度を分かりやすく解説していく本連載。第9回は「学級編制と少人数学級の実施」について。あなたの小学校のひとクラスの人数は、すでに35人以下になっていますか?

執筆/藤原 寿幸(横浜国立大学教職大学院准教授)
監修/田中 博之(早稲田大学教職大学院教授)

【連載】実践教育法規#9

1学級35人に引き下げ

学級編制とは、学校において児童生徒を一定人数で分割組織することです。小学校設置基準第4条および中学校設置基準第4条によると、1学級の児童生徒数は「法令に特別の定めがある場合を除き、40人以下とする」となっており、ただし、「特別の事情があり、かつ、教育上支障がない場合は、この限りでない」とされています。

2021年3月31日、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(以下、標準法)の一部を改正する法律案が参議院本会議において、全会一致で可決、成立しました(概要は「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律の一部を改正する法律案の概要」参照)。

その趣旨は「Society5・0時代の到来や子供たちの多様化の一層の進展、今般の新型コロナウイルス感染症の発生等も踏まえ、GIGAスクール構想によるICT等を活用した個別最適な学びと協働的な学びを実現するとともに、今後どのような状況においても子供たちの学びを実現することが不可欠」であり、小学校(義務教育学校の前期課程を含む)の学級編制の標準を5年間かけて計画的に40人(小学校第1学年は35人)から35人に引き下げるものです。2021年4月1日に施行されました。

少人数学級の実現は、教育現場からの強い要望の一つであり、学級編制の標準を引き下げるのは1980年以来のことでした。

なお、公立中学校では、学級編制の標準は40人のままです。

また、学級は原則同学年の児童生徒で編制するものとされています(標準法第3条)が、特別の事情がある場合においては数学年の児童生徒を1学級に編制することができる(小学校設置基準・中学校設置基準ともに第5条)となっています。複式学級(2学年以上で編制する学級)の場合は、小学校16人(小学校1年生を含む場合は8人)、中学校は8人、特別支援学級は小・中学校ともに8人、特別支援学校は小学部・中学部ともに6人(重複障害の場合は3人)が標準、とされています。

都道府県または市町村の設置する義務教育諸学校の学級編制は、国の標準を超えない範囲で都道府県が定める基準を標準として、当該学校を設置する教育委員会が、児童生徒の実態を考慮して行います(標準法第4条)。また、指定都市の義務教育諸学校の学級編制は、標準法に定める児童生徒数を標準として、指定都市の教育委員会が児童生徒の実態を考慮して行う(同法第4条2項)ことになっています。このように、都道府県および市町村においては、国の標準を下回る学級編制を行うことができるようになっています。

学級数の標準と実際

小・中学校の学級数は、「12学級以上18学級以下を標準とする」(学校教育法施行規則第41条、第79条)、また、義務教育学校は、「18学級以上27学級以下を標準とする」(同第79条の3)とされています。ただし、「地域の実態その他により特別の事情のあるときは、この限りでない」とも規定されています。義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律施行令第4条でも適正な学校規模の条件として、「学級数が、小学校及び中学校にあつてはおおむね12学級から18学級まで、義務教育学校にあつてはおおむね18学級から27学級までであること」、小規模校を統合する場合は、小・中学校では12学級から24学級、義務教育学校の場合は18学級から36学級が、各々適正な規模とされています。しかし、公立小学校・中学校において標準規模の学校は半分にも至らないのが現状です。

昨今は教員の大量退職の時代であるにもかかわらず、教員採用試験の倍率が年々低下している状態です。少人数学級の実施に伴う、教員の質と数の担保が課題となるでしょう。

参考文献
勝野正章・窪田眞二・今野健一・中嶋哲彦・野村武司『教育小六法2023 年版』(学陽書房)
窪田眞二・澤田千秋『学校の法律がこれ1冊でわかる 教育法規便覧 令和5年版』(学陽書房)

『実践教育法規 2023年度版』に加筆・修正

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