「ペア対話をどの学習でも1回は取り入れよう」対話型授業と自治的活動でつなぐ 深い絆の学級づくり #2
コロナ禍以降、コミュニケーションに苦労する子供や人間関係の希薄な学級が増えていると言います。子供たちが深い絆で結ばれた学級をつくるには、子供同士の関わりをふんだんに取り入れた対話型授業と、子供たちが主体的に取り組む自治的な活動が不可欠です。第2回は、ペア対話を取り入れた授業による学級づくりについて解説します。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
学級づくりは、学級活動+授業という戦略をもとう
学校生活で一番長く過ごすのは、何の時間でしょうか。考えるまでもなく「授業」ですよね。
子供が8時から15時30分まで7時間30分学校に滞在するとします。そのうち、45分×6時間=270分、4時間30分が授業です。
滞在時間の半分以上を過ごす授業が、学級全体に与える影響は決して少なくありません。したがって、深い絆をつくるには、この時間にできることは何かという戦略が必要になってきます。
絆のベースはコミュニケーションです。教師が一方的に説明するような授業では、子供同士のコミュニケーションはほとんど生まれないでしょう。
そこで、「対話的授業」を積極的に取り入れ、子供同士のコミュニケーションを活発にしていきましょう。それにより絆を深めていきましょう、というのが本連載の提案です。そのため、タイトルに「対話的授業」という言葉が入っています。
当たり前のことですが、学級づくりは学級活動だけでできるわけではありません。授業でも学級づくりをする、それが重要なのです。
では、対話型授業は、どんなことから始めればいいのでしょうか。
結論から言えば、「ペア対話」です。1対1のコミュニケーションがすべての基になります。ですので、このペア対話をまずは徹底していきましょう。
「ペア対話」の3つのルール
いきなり授業でペア対話をしても、なかなか話は弾まないもの。一方の子がずっとしゃべって終わる可能性もありますし、逆に沈黙したままということもあるでしょう。
そこで、まずはたわいもない話から始めましょう。その際、ペア対話の基本的なルールも確認していきましょう。
1.交互に話をする
2.肯定的に聞く(うなずく、なるほどと相づちを打つなど)
3.話が途切れないようにする
対話ですので、どちらか一方がずっと話していてはだめです。そこで「交互に短く話す」をルールとします。
また、話を否定されたら話をする気になりません。対話というのは親和的な雰囲気が大切です。ディベートとは違います。そこで、笑顔でうなずく、相づちを打つなども約束にします。
そして、話が途切れないようにすることもポイントです。沈黙していては、対話が成立しません。
このような決まりを設けても、話が弾まないこともあるでしょう。そのような場合は、「もう一度同じ話を繰り返してもいい」と伝えます。なぜなら、まったく同じ話を繰り返すことは実は難しいのです。私の経験では、先ほどの話に少し付け足して話すことが多い印象です。そうなると、少し話の筋が変わることがあるのです。それが対話の面白さとも言えるでしょう。思いもしなかった方向に話が進む、というのがいいのだということも伝えましょう。
「ペア対話」導入のしかた
まずは、朝の会で1分間の対話から始めましょう。
朝のスピーチに取り組んでいる学級もあるでしょうが、1分間スピーチだと、30人学級の場合、30日に1回しか話す機会がありません。ですが、1分間対話ならば、毎日話をする機会をもてます。やはり、慣れるというのが何事も大切です。
対話の内容はごく簡単なものがいいでしょう。対話というよりもおしゃべりというイメージでかまいません。
○好きな給食のメニュー
○好きなテレビ番組
○今はまっていること
などは気楽に話ができるでしょう。
話をする前に少しだけ時間をとって、何を話すか考えさせます。
私の好きな給食のメニューはカレーです。なぜかというと、家のカレーよりもあまいからです。
この程度でかまいません。
聞き手に回ったほうは、
家のカレーはどのくらい辛いのですか。
カレーの他にも好きなメニューはありますか。
こんなふうに質問もするようにします。
30秒くらいたったら、教師が「交代」と声をかけます。そうしたら同じように発表し、質問をするというようにします。
まずはこんなふうにして、何回かやったら、同じ話題で、相手を替えるという経験をさせます。
例えば、「好きなテレビ番組」について隣同士で対話したら、次の日は前後に座っている人同士で、その次の日は斜め同士などで行います。すると、同じ話題でも、ペアが変わると盛り上がり方が変わるなど、いろいろな人と話をする面白さが分かります。
また、教室を自由に歩かせ、「今まで話をしたことのない人とペアになる」などにも挑戦させましょう。こうして、いつも親しい人と対話するのではなく、クラスメイトの誰とでも対話ができるようにしましょう。こうしたことにより、クラスの絆が深まっていく土台ができるのです。
授業にも取り入れよう
朝の会の取組を1~2週間程度行うとかなり慣れますので、授業でも取り入れていきます。
授業の場合は、これまでよりも少し長めに自分の考えをまとめる時間をとりましょう。
例えば、「ごんぎつね」の授業で、「ごんはなぜ兵十につぐないをしようと思ったのだろうか」と子供たちに投げかけます。そうしたら、何分か時間をとり、考えをノートにまとめさせます。何も書けない子には教師が個別に支援し、ひと言でも書けるようにします。
それから、ペア対話に入ります。
朝の会でやったのと同じように、1人が自分の考えを述べ、もう1人が質問をする。それから、役割を交代する。ただし、教師がきっちりと時間を区切るのではなく、「交互に話をするのだよ」、この程度の確認だけでよいでしょう。
また、話が途切れたら、同じことを繰り返すだけでなく、話し合う中で新たに気付いたことなどを取り入れて話を発展させてもいいことを伝えます。
話し合う時間も厳密に1分とせずに、盛り上がっているようならば延長したり、内容によってははじめから2分程度にしたりしましょう。
そして、どの学習でも1時間に1回はペア対話を入れるように心がけましょう。そうすることによって、子供同士の絆を深めることはもちろん、授業改善にもつながります。
ペア対話は全ての対話型授業の基本となるものです。ペア対話を積極的に取り入れ、子供同士のコミュニケーションを活発化させ、絆を深めていきましょう。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/高橋正輝
【瀧澤真先生執筆 連載】
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【瀧澤真先生ご著書】
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