子供たちといっしょに読みたい 今月の本#1 学級開きにおすすめの本
新連載のはじまりです。このコーナーでは子供たちといっしょに読みたいおすすめの本を紹介します。今月のテーマは「学級開きにおすすめの本」です。子供たちの1人読み、先生が読む、読み聞かせなど学級の実態に合わせてください。学級文庫などのヒントにもなります。
監修/東京学芸大学附属小金井小学校司書・松岡みどり
目次
低学年
入学したての1年生にも、少し学校生活に慣れてきた2年生にもおすすめの本です。学年はじめに先生が読み聞かせをしてもよいし、子供自身が読んでもよいでしょう。
『しんぱいなことが ありすぎます!』
作/工藤純子 絵/吉田尚令
金の星社刊
ももは忘れ物をしたくなくて、教科書やノートを全部ランドセルに入れてもっていきます。かずま君は荷物を全部学校に置いています。そんな対照的な2人は……。
松岡司書のおすすめポイント
主人公のような心配性な子供もいるんだということが分かると、子供たちが少し安心できるのではないかと思います。
『がっこうのてんこちゃん はじめてばかりでどうしよう! の巻』
作/ほそかわ てんてん
福音館書店刊
はじめての学校で、誰もが経験する不安を少しずつ乗り越えていく姿を描いた物語。今日から学校が始まります。はじめてのことが苦手な、テンのてんこちゃんはドキドキしながら学校へ行きます。てんこちゃんは、自己紹介で緊張しすぎてしまい……。
松岡司書のおすすめポイント
とても緊張する女の子が主人公です。緊張する子供の気持ちやクラスの友達にもいろいろな人がいるというのが分かるとよいですね。
『はじめくんがっこうへいく』
作/森川成美 絵/山西ゲンイチ
ナツメ社刊
年長さんの主人公はじめくんが、小学校でわくわくドキドキの大冒険! 絵探しや迷路を織り交ぜながら、小学校がどんなところかが分かる絵本です。入学までに身に付けておきたいことも無理なく紹介しています。
松岡司書のおすすめポイント
年長さんのはじめくんが忍者の格好をしておねえちゃんの学校に忍び込むところがおもしろい。まちがい探しなど楽しみながら学校のことが分かります。入学前や入学直後に読むとよいと思います。
中学年
新しい学年になり、期待と不安が入り混じった気持ちの小学3年、4年の子供たちにおすすめしたい本です。子供が1人読みをしてもよいし、先生が子供理解のために読んでもよいでしょう。
『9歳のこころのじてん』
文/パク・ソンウ 絵/キム・ヒョウン 訳/清水知佐子
小学館刊
9歳という感受性豊かな成長期には、様々な気持ちが入り混ざった感情を経験し始めます。
「この気持ち、どんな言葉で表す?」を学ぶ本。韓国で出版され、アジア各国でも翻訳された20万部を超えるベストセラー。
松岡司書のおすすめポイント
気持ちの言い換えが豊富で、言葉で表現する力がつき、視野が広がると思います。先生ご自身が読まれてもよいのではないでしょうか。
『ぼくのつばめ絵日記』
作/深山さくら 絵/宮尾和孝
フレーベル館刊
小4の男の子が主人公の物語。親友の伸に頼り切っていた雄太だが、小4の春に転校することに。さよならをうまく言えないまま、新しい町でつばめに出合い、つばめの観察記録を付け始めます。
※品切重版未定
松岡司書のおすすめポイント
春の季節に新しい生活を始める際にぴったりの内容です。子供自身の新しい生活と重ね合わせられそうですね。つばめの観察記録の付け方も注目です。
『セイギのミカタ』
作/佐藤まどか 絵/イシヤマアズサ
フレーベル館刊
小4の男の子が主人公の物語。小4の木下守は、はずかしいと真っ赤になる赤面症が悩み。人気者の大我にからかわれると、いつも正義感の強い周一がやってきて……。
※品切重版未定
松岡司書のおすすめポイント
小4の男の子が主人公で、同じ年代の子供たちの物語なので、共感がわきやすい。人物像が上手に描かれていて、人間関係がおもしろいですね。
高学年
高学年になり、学校のリーダー役になってみんなを引っ張る立場になる小学5年、6年の子供たちにおすすめの本。子供が1人読みをして、いろいろと考えたり、意欲を高めたりするきっかけになるでしょう。
『ほんとうのリーダーのみつけかた』増補版
著/梨木香歩
岩波書店刊
同調圧力が強まるなかで、誰かの大きな声に流されることなく、自分自身に問いかけてほしいというメッセージが込められています。村ぐるみの選挙不正を告発した1人の少女をめぐるエッセイを新たに増補。
松岡司書のおすすめポイント
集団のリーダーではなく、自分に問いかけてアクションする内容なので、一人一人が気持ちを奮い立たせる1冊になるのではないでしょうか。
『私立探検家学園1 はじまりの島で』
作/斉藤 倫 画/桑原太矩
福音館書店刊
探検家を育てるという学校「私立探検家学園」に転校した小学5年生・松田コロンの冒険を描く読み物作品。世界中から集ったクラスメートたちと共に、一風変わった授業を受け、謎に満ちた「実習 (ミッション)」に挑戦していきます。シリーズ4まで発刊。
松岡司書のおすすめポイント
各教科の単体で分けられない授業がある探検家になるための学校の物語で、こんな授業があるとおもしろいですね。
『ともだちの かたち』
文・絵/ダニエラ・ソーサ 訳/木坂 涼
岩崎書店刊
「友達がいないと悩んでいる」「これから、たくさんの出会いが待っている」そんな子供たちへのメッセージ。友達のかたちは様々。自分なりのかたちを見付ければよいのではという手紙のような絵本。読み聞かせにもおすすめ。
松岡司書のおすすめポイント
いろいろなシチュエーションで友達がいます。自分の周りを見渡してみて! 様々なかたちで友達がいると思えるでしょう。読み聞かせにもおすすめ。
こちらもおすすめ!
小学2年生の子供たちへの読み聞かせに最適です。
『やっぱり たまごねえちゃん』
作・絵/あきやま ただし
鈴木出版刊
妹のわがままに翻弄されるたまごねえちゃんはへとへとになってしまいます。でも、お父さんがずっと優しく見守っていてくれました。ユーモアとともにあたたかく強い親子のきずながちりばめられた絵本。
松岡司書のおすすめポイント
小学2年生の子供たちは、1年生の入学を機に、自分たちがおにいさんおねえさんになったんだ! と張り切る気持ちがある反面、お世話をしたりお手本になったりするのはけっこう大変……と思う場面もあるのではないでしょうか。そんな気持ちに寄り添ったお話になっています。
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松岡みどり司書からのメッセージ
新年度がはじまる4月は、子供たちにとって楽しみでもあり、「友達できるかな」「勉強が難しくなるかな」など不安でもある時期です。エネルギー全開の子、心配なことがいっぱいある子などいろいろな子供たちが出会うことと思います。私がおすすめする本は、様々な子供たちが登場し、いきいきと活躍する内容となっています。子供たちに心配事があるのは自分だけではない、いろいろな人がいるんだと思ってもらえるとうれしいです。心優しいスタートが切れるとよいですね。
読書や本の情報が満載
ウェブサイト「先生のための授業に役立つ学校図書館活用データベース」(東京学芸大学 学校図書館運営専門委員会)
https://www2.u-gakugei.ac.jp/~schoolib/htdocs/
取材・文・構成・撮影/浅原孝子
授業で使える312冊の絵本を紹介
著/齊藤和貴(京都女子大学教授)
司書教諭の経験を生かしながら、長年、学校現場で「絵本を活用した授業」を行ってきた元小学校教諭が、小学校の授業で使える絵本312冊を厳選。絵本を使った実際の授業が、板書や指導案、豊富な写真とともにオールカラーで具体的に紹介されていますので、授業の進め方がよくわかります。
B5判/112頁
ISBN9784098402212
〈著者プロフィール〉
齊藤和貴(さいとう かずたか)
京都女子大学発達教育学部准教授。元小学校教諭・司書教諭。東京都公立小学校及び東京学芸大学附属小金井小学校、附属世田谷小学校で28年間、教育活動や授業実践に取り組む。その間、生活科や総合的な学習の時間を中心に指導法やカリキュラム、評価方法の工夫・改善を図り、「子供とともにつくる授業」の創造に励む。また、司書教諭の経験を生かし、「絵本を活用した授業づくり」にも取り組んできた。