「こども誰でも通園制度」とは?【知っておきたい教育用語】

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すべての子どもたちの育ちを支援することを目的として「こども誰でも通園制度」の創設が進められています。今回は、本制度が求められる背景や、その意義、実施までの計画について解説していきます。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

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こども誰でも通園制度が求められる背景

はじめに「こども誰でも通園制度」とは、現行の幼児教育・保育給付に加え、親が就労していなくても月一定時間までの利用可能枠の中で子どもを保育所などに預けることができる給付制度のことです。

2023年6月13日に閣議決定された「こども未来戦略方針」で創設が求められました。「こども未来戦略方針」では、「0~2歳児の約6割を占める未就園児を含め、子育て家庭の多くが『孤立した育児』の中で不安や悩みを抱えている」ことが指摘されました。

そこで、「全てのこどもの育ちを応援し、こどもの良質な成育環境を整備するとともに、全ての子育て家庭に対して、多様な働き方やライフスタイルにかかわらない形での支援を強化する」ために「こども誰でも通園制度」が創設されることになったのです。

こども誰でも通園制度の意義

創設にあたって、検討会では子どもの成長や保護者にとっての意義について、次のように述べられています。

①こどもの成長の観点からの意義

●在宅で子育てをする世帯のこどもも、こどもの育ちに適した人的・物的・空間的環境の中で、家庭とは異なる経験や、地域に初めて出て行って家族以外の人と関わる機会が得られること

●こどもに対する関わりや遊びなどについて専門的な理解を持つ人がいる場で、同じ年頃のこども達が触れ合いながら、家庭にいるだけでは得られない様々な経験を通じて、ものや人への興味が広がり、成長していくことができること

●こどもにとっては、年齢の近いこどもとの関わりは、社会情緒的な発達への効果的な影響など成長発達に資する豊かな経験をもたらすこと

●こどもに対する関わりや遊びなどについて専門的な理解を持つ人からこどもの良いところや育っているところを伝えられる、こどものよさを共感してもらう、保護者自身やこどもへの温かいことばや応援の声をかけられるなど、保護者が「家族以外の人が自分たちを気にかけている」と実感できることは、こどもへの接し方が変わるきっかけとなったり、こどもについて新たな気づきを得たり、こどもの出来ていることを伝えてくれることで自信を回復することにもつながり、こどもの育ちや保護者とこどもの関係性にも良い効果があること

こども家庭庁(PDF)「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめについて

②保護者にとっての意義

●こども誰でも通園制度の対象となる在宅で子育てをする世帯の保護者は、孤立感や不安感を抱えながら子育てを行っていることも多く、こうした保護者にとって、こどもに対する関わりや遊びなどについて専門的な理解を持つ人との関わりにより、ほっとできたり、孤立感、不安感の解消につながるとともに、月に一定時間でも、こどもと離れ自分のための時間を過ごすことで、育児に関する負担感の軽減につながっていく。

●また、保育者からこどもの出来ていることを伝えてもらうことで、自信が回復することや、口頭でのアドバイスに限らず、実際に目の前で育児方法の模範を見ることにより、こどもの成長の過程と発達の現状を客観的に捉えることができ、保護者自身が親として成長していくことにつながると考えられる。

●さらに、こどもに対する関わりや遊びなどについて専門的な理解を持つ人との関わりにより、こどもの育ちを共に喜び合えるようになることで、子育ての楽しさを実感できるようになると考えられる。

●そのほか、こども誰でも通園制度の利用により、親子が地域の様々な社会資源につながる契機となり、これにより様々な情報や人とのつながりが広がり、こうした社会資源を活用しながら、保護者が主体的に子育てをすることにもつながり得ると考えられる。

こども家庭庁(PDF)「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめについて

以上のように、こども誰でも通園制度は、ただ子どもを預かるといったサービスではなく、子どもの育ちを保護者と二人三脚で支えていくということを主軸とした制度であることを認識しておくことが大切です。

実施までの計画

具体的な制度設計にあたっては、基盤整備を進めつつ、地域における提供体制の状況も見極めながら、速やかに全国的な制度とするものとされました。

具体的には、2024年度に150程度の自治体で試験的に導入し、2025年度には子ども・子育て支援法に基づく、地域子ども・子育て支援事業として制度化し、2026年度には、1人が1か月に利用できる時間の上限を設けたうえで、全国すべての自治体で実施するとしています。

しかし、実際に導入するまでには、預かる側である保育施設の受け入れ環境や保育士不足の問題など、解決すべき問題も数多くあります。保育現場の声を聞き、課題をきちんと解消したうえで制度を実現できたなら、保護者への手厚いサポートであることは間違いなく、少子化対策にも効果を発揮していくことでしょう。

▼参考資料
NHK(ウェブサイト)「『こども誰でも通園制度』3年後 全国の自治体で実施へ向け調整」2023年12月6日
こども家庭庁(PDF)「こども誰でも通園制度(仮称)の本格実施を見据えた試行的事業実施の在り方に関する検討会における中間取りまとめについて

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