つながりを教師の学びに! 各地の教員仲間と行った「全国教材研究旅行」の学び効果
全国規模の教師ネットワークで知り合った各地の先生と「教材研究旅行」を実践した、青森県公立小学校教諭の三浦健太朗先生のレポートを紹介します。各地の先生をガイド役に、歴史、地理、防災、生き方など土地ごとの生の教材を知り、社会科教員としての見方・考え方を深める、教師のための探究活動です。
執筆/青森県公立小学校教諭・三浦健太朗

目次
各地の教員仲間と行った「全国教材研究旅行」
青森県で小学校教員をして20年目になる三浦健太朗(みうら・けんたろう)と申します。教員向けオンライン研修プラットフォーム『授業てらす』に第1期から参加しています。社会科が大好きで、『授業てらす』では社会科部屋のリーダーを務めており、全国の先生たちと一緒に、社会科に関する勉強会を企画・運営しています。そのおかげで多くの出会いがあり、全国各地に社会科が大好きな先生たちの仲間ができました。
『授業てらす』についての記事はこちら
・教員研修プラットフォーム「授業てらす」が生まれたワケ~創業者・星野達郎が目指す学校教育のHAPPYな未来とは~
・教員研修プラットフォーム「授業てらす」が提供する教師のための学びの仕組みとは?
社会科は地域によって授業が変わる教科ですので、各地の先生の授業を見合うと、たくさんの学びがあります。前回の記事でも紹介しましたが、沖縄の子供たちと青森の子供たちをオンラインでつないで、気候に関する社会科の授業も行ったのも、そんなつながりの成果です。そうやって子供たちに教師のつながりを還元できるのも、全国規模の教師ネットワークに加わっている魅力です。
今回は、そんな『授業てらす』の仲間たちと一緒に実施した「全国教材研究旅行」のことをお伝えしたいと思います。
1.東京での歴史をたどる教材研究旅行
教材研究旅行の第1回目、私は『授業てらす』で知り合った千葉県の太田先生を誘って、東京での歴史ツアーを企画しました(元同僚教師で『授業てらす』代表の星野達郎氏も参加することに)。せっかくなら星野代表が好きな「高杉晋作」が関わった場所をたどりたいと考え、「イギリス公使館焼き討ち事件」に関わる場所をたどるツアーにしました。
実際には、高杉晋作のほかにも、明治維新に関わった伊藤博文・井上薫ら幕末の志士たちがこの焼き討ち事件に関与していました。小学校の教科書には出てこない出来事ですが、仲間たちと語り合いながら幕末の志士たちがたどった道を実際に歩くことで、歴史を見る視点を深められると考えました。

品川の旧東海道沿いの道を歩いて、現場に向かいます。古地図を見ると、今は陸地でも東側は海だったことがわかります。
高杉らが休憩した場所から、実際に歩いてイギリス公使館のあった場所に向かいました。今では郵便局の官舎が建っている場所が、イギリス公使館焼き討ち事件の現場。石碑も何もありません。ただの住宅街に立ち尽くした3人は、日本を異国から守ろうとした男たちの姿を想像しました。
この事件の翌年、伊藤博文・井上薫らは、なんとイギリスに渡航。その経験から、帰国後は倒幕に動き出すことになります。公使館を燃やしたのに、あっさりその国から学んで新しい国の仕組みを作ったのですから、何という鞍替えの早さでしょう。柔軟というかなんというか……。
高杉晋作は、前年に上海で英国支配の現実を見ました。だからこその焼き討ちでした。高杉晋作がもしも英国を見ていたら何をしたのか、また、彼らが焼き討ちをどんな思いでやったのか、現地で思いをはせました。
『近くの妓楼(ぎろう)から火を見て酒を飲んでいた』と記録が残っていることから、「遊びの要素もあったのではないか」と星野代表は推測。驚きと納得が入り交じったような感覚でした。太田先生も当時の光景に思いをはせ、大いに楽しみながらの歴史ツアーとなりました。
教師コミュニティで知り合った仲間と、歴史的な事件が起きたその場所で、約150年前のことを思いながら語り合うことで、歴史を学ぶ楽しさをより一層感じたのでした。