小6国語科「準備」全時間の板書&指導アイデア

連載
国語科 令和6年度版 新教材を活用した授業づくりー文部科学省教科調査官監修の実践提案ー
特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、令和6年度からの新教材、小6国語科「準備」(光村図書)の全時間の板書例、教師の発問、想定される児童の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した授業実践例を紹介します。

小六 国語科 教材名:準備(光村図書・国語 六)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/山梨大学大学院教授・茅野政徳
執筆/千葉大学教育学部附属小学校・青木大和

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元では、通常とは違う言葉の順序や繰り返しの表現の効果を考えながら、どのように音読すればよいかを話し合うことを通して、抑揚、強弱、間の取り方など音読の技法を知識として確認し、それを活用して音読する技能を高めることを目指します。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

言語活動と指導事項との関連

各学年の冒頭に詩を音読する単元が位置付けられていることが多いのはなぜでしょうか。
短い文章からでも情景を想像することができ、それをもとに音読という形で表出できることを児童が実感することで、これからの学習へ見通しをもつためであることが理由の一つでしょう。
そこで、本単元では「作者のメッセージを想像し、音読で表現する」という言語活動を位置付けました。具体的には、まず「準備」の表現や言葉の順序に着目して、誰に向かって何を呼びかけているのかを想像する活動です。
しかし、この活動が単元のゴールではありません。想像した作者のメッセージをどのように音読によって表現するか、考える必要があります。想像したことをもとにして、これまで学習してきた音読の技能を想起し、友達と相談しながら音読の仕方を確認し、児童が詩から想像したものを音読で表現できるようにしていきます。

〇 教材の特徴

本単元で扱う詩である「準備」は、子供たちに向けて恐れずに飛び立とうと呼びかけている四連からなる詩です。6年生の児童にとって小学校における最後の1年をどのように過ごしていけばよいかを考えられる詩となっています。
「測ろうとしているのだ 風の向きや速さを 初めての高さを」といった倒置法が多彩に活用されていたり、「こどもたちよ おそれてはいけない この世のどんなものもみな 「初めて」から出発するのだから」といった表現がされたりしています。6年生の児童をはじめとする、これから何かに挑む人への背中を押すメッセージを授業者として感じ取りました。
詩の解釈をすべて児童に委ねるのではなく、授業者がある程度自分の解釈をもつことで、児童の感じ方の違いや着目する表現の違いなどを知ることができ、児童だけではなく授業者も考えを広げることができます。
また、詩の解釈を共有している際、児童の解釈が限定的になっている際、「先生はみんなと違ったことを感じたんだけど……」と切り出すことで、話合いを活性化することができます。ただ授業者の感じ方が正解ではないことを児童と確認しておくことが必要です。
一連の詩に着目してみると、通常の文章では「待っているのではない。飛び立っていくための準備をしているのだ。」となるところを「待っているのでない 準備をしているのだ 飛び立っていくための」と言葉の順序が異なっていることがわかります。
こうした表現の工夫に目を向けると、作者が強調したい表現を捉えることができ、自分の心に強く響いた言葉を中心に、どのように音読をしたらよいかを理解することに繋がります。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉 これまでの学習を振り返る

児童は、1年生から今日に至るまで音読をする学習を複数回にわたって経験してきているはずです。
その学習で身に付けた音読の技能を想起できるようにすることで、「準備」の音読に生かせるようにします。
その際、単に音読の技能を振り返るだけではなく、それぞれの音読の技能を活用することでどのような効果があるのかを確認するようにしましょう。そのことで、詩を読んで想像した世界(作者のメッセージ)を音読で表現する活動に見通しをもって取り組むことができ、また、自分の音読を振り返る際には改善点や成果を自覚することができるでしょう。

〈対話的な学び〉 詩から想像したことを友達と話し合う

個人で音読をしている段階では、想像した情景や心情を適切に表現できているのかを自覚するのが難しいものです。
そもそも、それぞれの詩や表現からどのような情景や心情を想像したか、他者と話し合わなければ、自らの考えを広げることができません。
そこで、友達と相談をしながら想像した情景や活用できる音読の技能について話し合う場を設定します。まず、【どのような作者の思い(メッセージ)を想像できたか】という視点で話合いをし、次に【どのように音読すればよいか】という視点で話合いをします。

〈深い学び〉 友達の音読と自分の音読を比較する

録音した音読を掲示板アプリやデータフォルダに格納し、お互いに聞き合うようにします。
その際、自分が想像した情景や伝えたい思いを掲示板に書き込んだり、録音の冒頭に話したりして、自分が何に気を付けて音読しようとしているのかがわかるようにします。
複数の友達の音読の様子を視聴し、想像した情景や伝えたい思い、音読する際に気を付けた点などを知ることで、感じ方の違いに気付いたり、似たようなことを想像していても音読の仕方に違いが生まれることに気が付いたりすることができます。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)ボイスメモによる学びの振り返り
自分がどのように音読しているのかを自覚することは、案外難しいものです。言い換えれば、「どのように読もうとするか」という意識はあるけれども、「どのように読めているか」を意識化するまでには至っていないというわけです。
音読は音声言語なので、これまで自分がどのように読めているかを知る方法は、友達など他者に聞く以外に方法がありませんでした。
しかし、PCやタブレット等のボイスメモや録音機能(あるいは録画機能でもよい)を活用すれば、自分の音読を簡単に振り返ることができます。
また、ボイスメモはデータ化することもできるため、1回目の音読と2回目の音読を比較することができたり、複数の友達の音読を比較することができたりします。ヘッドホンマイクなどを活用して録音すると、雑音などが入りづらくクリアな音声を聞くことができます。
ボイスメモのもう一つのメリットは評価のしやすさです。教師が児童一人一人の音読の様子を即座に見とらなくても、掲示板アプリ(例えばMicrosoft TeamsやGoogle Classroomなど)や共通のデータフォルダに格納するよう促すことで、児童の学習状況を見とりやすくなります。
児童には、想像したことや工夫しようとしている部分を掲示板に投稿するか、録音の冒頭に話すよう指示することによって、児童が想像したことや工夫しようとしていることを確認でき、その後の児童への指導や支援に見通しをもつことができます。

6. 単元の展開(1時間扱い)

 単元名: 作者のメッセージを想像して音読しよう

【主な学習活動】
・第一次(1時
①「準備」の作者の思いを想像して音読をする。〈 端末活用(1)〉

全時間の板書例と指導アイデア

【1時間目の板書例 】

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イラスト/横井智美

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