卒業⽂集の「クラスのページ」のテーマ決め【卒業文集の指導⑤】

連載
松下隼司の笑って!!エヴリディ
特集
卒業特集ー6担初心者もこれで安心!ー 

大阪府公立小学校教諭

松下隼司

クラスの特色が色濃く出るのが卒業文集の「クラスのページ」。寄せ書き、ランキング、将来の夢…子ども全員の思いを1ページに載せるため、このテーマ選びもなかなか苦戦します。成功すれば子ども同士の絆が深まりますが、テーマを誤ると、苦い思い出の卒業文集へと……。そこで今回は、「学級づくり」につなげるテーマ決めの工夫を紹介いたします! 子ども主体で行うのが理想的ですが、そこには教師のさりげない配慮も必要です。

【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ

クラスのページづくりを通して、学級の絆を深めよう

卒業⽂集は、⼦ども一人ひとりの作⽂だけでなく、「クラスのページ」のコーナーがあります。1ページに、クラスの⼦ども全員分の思いなどが載っています。

例えば、次のようなコーナーです。

・寄せ書き
・自分を漢字一文字で表したら
・生まれ変わったら、なりたいもの
・好きなものランキング(食べ物、キャラクター、教科、曲、アニメ、色など)
・今だから言える自分の黒歴史(失敗エピソード)
・将来の夢
・プロフィールコーナー

卒業⽂集のクラスのページは、クラス全員の協⼒が必要になります。クラスのページづくりを通して、学級の仲がさらに深まります。⼦ども同⼠の互いの理解も深まります。学級経営、学級づくりにも⼤きく活かせます。

クラスのページづくりを「クラスの思い出作り」だけで終わらせるのでなく、「学級づくり」につなげる5つの⼯夫を紹介します。

(1)クラスのページ数を事前に確認しよう

卒業⽂集のクラスのページの枚数は、学校によって違います。私がこれまで勤務した学校は4〜5枚でした。

まず、ご勤務されている学校の前年度までの卒業⽂集を⾒て、クラスで何ページの割り当てがあるのかを確認しましょう。卒業⽂集の印刷製本をどこかの会社に注⽂している場合は、その会社にも事前に確認します。

(2)クラスのページの⼿本を事前に渡して、イメージをもたせよう

クラスのページ数が確定したら、ページごとのテーマを決めます。私が初めて6年⽣の担任をした20年前、このテーマ決めで失敗をしてしまいました。

卒業文集は、一人ひとりの作文だけでなく、この6年2組のみんなで、1ページを1つのテーマでつくっていくよ。例えば、寄せ書きとかね。他にどんなテーマでつくりたい?

と、⼦どもたちに聞いてしまったのです。

⼦どもたちはポカーンとして、リアクションはありませんでした。意⾒も出ませんでした。そうなって当たり前です。⼦どもたちにとっては初体験だからです。いきなり、

「どんなテーマでつくりたい?」

と聞かれても、答えようがないです。卒業⽂集のクラスのページの具体的なイメージがないからです。

それなのに、私は⼦どもから意⾒が出ないので、

「じゃあ…。」

と⾔って、私がクラスのページのテーマ案を提⽰して、進めてしまいました。教師が一方的に決めたので、クラスのページづくりも、どこかやらされ感が漂っていました。

事前に、クラスのページを⼦どもたちに⾒せて、イメージをもたせておく

ということが必要でした。

⼦どもたちに⼿本として⾒せる際は、卒業⽂集を1冊丸ごと渡すのはあまりおすすめしません。理由は、⼦どもたちが、クラスのページとは違うページも⾒てしまうからです。写真が載っていたら、写真を⾒てしまうからです。作⽂を読んでしまうからです。

事前に卒業⽂集全体のイメージをもたせるためならいいのですが、クラスのページづくりに向けた時間の場合は、関係のない情報は⼦どもたちに提⽰しない⽅が効率がいいです。だから、私は、学校にある卒業⽂集や⾃分がこれまで担任したときの卒業⽂集の中から、(これはいいな!)と思ったページを印刷して、⼦どもたちに⾒せるようにします。

その際、クラスの⼈数分を印刷するのではなく、班の数だけ印刷するようにしています。理由は、印刷する枚数が増えるからです、そして、班で1枚ずつ印刷して班の友達で回し読みするようにすることで、⼦ども同⼠の交流が⽣じるからです。私は、班で20枚ほど印刷して回し読みさせています。

⼿本として⼦どもに渡す基準は、テーマだけでなく、丁寧さ、楽しさ感、ぎっしり感です。私は、特にぎっしり感を重視しています。すかすかだと寂しい印象があるからです。ぎっしりだと、にぎやかさや楽しさを感じるからです。良い⼿本を提⽰すればするほど、⼦どもたちのクラスのページの完成度も⾼まります。

(3)班で相談して、テーマ案を出させよう

下の写真は、班ごとにクラスのページのテーマ案を相談させて、板書させたものです。

 若手だった頃の私は、

「クラスのページ、どんなテーマにしたい?」

と聞いたときに、発表してくれた子どもだけの意見だけで進めてしまっていました。

そこで、一人ひとりがどんなテーマにしたいかを考えさせたうえで、班で相談させるようにしました。全体の場だと理由を言いにくい子どもも、少人数の班だと自分の意見を言いやすくなるからです。

クラスのページのテーマ案を班で相談して決めるとき、1つだけでなく2つ挙げてもらうようにしました。1つの班に1つしかテーマ案を挙げられない場合、自分の意見が通らなかったらとても悲しいですが、2つだと自分の意見が取り上げてもらえる可能性が高まるからです。そして、班で1つだけだと、他の班とテーマ案が重なって、テーマ案が足りなくなるかもしれないからです。

(4)班で相談した後は、クラス全体で相談しよう

班ごとにテーマ案を板書させたら、

「この中から決めていい?(他に何か意見ない?)」

と、確認をします。この確認はとても大切ですが、結構、忘れがちです…。この確認が大切なのは、後になって自分の意見が通らなかったことに対して文句を言ったり、非協力的になったりするのを防ぐためです。

「オレ(わたし)は、〇〇のテーマがよかったのに~!」

とあからさまに言う子どもが出るのを防ぐためです。このような子どもが出てしまっては、クラスの雰囲気が悪くなってしまうからです。思わず言ってしまった本人もかわいそうだからです。

板書させたテーマ案を元に、クラスのページについての話し合いを進めていいことを確認したら、

「どうやって、決める?」

決め方を考えさせます。経験上、結果的に多数決になることが多いのですが、それでも教師がいきなり(一方的に)、

「多数決で決めるよ」
「多数決で決めていい?」

と決め方を提示するよりも、決め方を考えさせる方が学級づくりにも活かせます。私はついつい焦って子どもに話し合わせないで進めてしまうことが多いので、落ち着いて進めるようにしています。何のための卒業文集づくり、クラスのページづくりなのかを考えるようにしています。

クラスのページづくりを、単に「クラスのページの完成」を目的にしてしまってはもったいないからです。クラスのページづくりを通して、「さらにクラスの仲が良くなる」「協力する態度を養う」「話し合う力を養う」ことを目的にするようになってからは、クラスのページづくりの前と後とでは、子ども一人ひとりやクラスとしての成長も大きく違ってきました。クラスのページの完成度も高くなりました。

(5)おすすめのテーマと、配慮が必要なテーマ

①「黒歴史」

私のおすすめのテーマは、「黒歴史」です。「今だから言える、親や先生や友達に内緒にしていた失敗エピソードや、いたずらエピソード」です。

  • お家の人に内緒で、冷蔵庫の中のプリンやお菓子を食べたこと
  • お兄ちゃんやお姉ちゃんのゲーム機やおもちゃを、自分が壊してしまったことを内緒にしていたこと
  • 小学〇年生のときに、おねしょをしてしまって、パンツとパジャマをこっそり洗濯機に入れたこと

など、とても楽しいエピソードが出てきます。クラスのページづくりの時間、クラスの雰囲気がとてもやわらかく明るくなります。(私も、「子どもたちに内緒で、こっそりと給食の大人気のバターを自分だけ1つ多めに確保していた」ことを書いたことがあります♪)

ただ、この「黒歴史」(失敗・内緒エピソード)は、あまり手放しにしすぎると、笑い話で済まない内容が出てくるときがあるかもしれません。例えば、公園の遊具を壊したり、誰かの心身を傷つけたりは、笑えないことです。こういった境目は、まだ判断できない子どもがいるかもしれません。

②「わたしは誰でしょうか

「わたしは誰でしょうか」のテーマもおすすめです。例えば、「趣味」「将来の夢」「好きな人」の3つを書いてもらいます。 私でしたら「(趣味は)筋トレ」「(将来の夢は)劇団をつくること」「(好きな人は)オフロスキー」です♪ これを、答えの私の名前を載せないでクイズ形式で載せます。もちろん、クラス全員分、載せます。「答え合わせは、〇年後、同窓会でしようね!」と注意書きをしておくと、再会が楽しみになります。単にプロフィールをテーマにするよりも、楽しいです。

「好きな人」は、実際に好きな異性でもいいですし、友達として好きな人でもいいですし、芸能人でもスポーツ選手でもゲームや漫画などのキャラクターでもいいです。

③「クラスの全員分の似顔絵」

テーマではないのですが、クラスの全員分の似顔絵をどこかのページに描いてもらうのをおすすめします。クラスの子どもの誰かに描いてもらうのです。先ほどの「黒歴史」や「わたしは誰でしょうか」のページの余白があれば、似顔絵を描いてもらうのです。文字だけでなく、似顔絵があったほうが、楽しさやあたたかさが増します。

④「ランキング」は配慮が必要なので要注意

配慮が必要なテーマは、「ランキング」です。好きなアニメランキングや、好きなキャラクターランキング、好きな曲ランキング、好きな教科ランキング、好きな動物ランキングなどでしたら大丈夫です。クラス全員の意見が反映されるからです。

配慮が必要なのは、「クラスで〇〇な人ランキング」です。例えば、「クラスで面白い人」「クラスで足が速い人」「クラスで将来、有名になっていそうな人」「クラスで優しい人」「クラスで将来、お金持ちになっていそうな人」「クラスで、早く結婚しそうな人」「クラスで将来、イケメン・美人になっていそうな人」などです。

これらのランキングで配慮が必要な理由は、名前が出てこない子どもが多く出る可能性が高いからです。多くの項目で同じ子どもの名前が挙がる可能性、偏る可能性が高いからです。クラスで面白くて、足が速くて、有名になっていそうで、さらに優しくて、お金持ちになっていそうな人を独占する子どもがいるかもしれないからです。

そうなってしまっては、クラスのページではありません…。だから、そういった項目は1つだけにして、あとの項目は、「好きなキャラクターランキング」や「好きな教科ランキング」などにした方がいいです。

それと、「好きな先生ランキング」も控えた方がいいかもしれません。理由は、これまで担任された先生方が見たときに、自分の名前が挙がっていなかったら悲しい思いをされるかもしれないからです。逆に自分の名前が挙がっていても、名前が載っていない元担任の先生のことを考えたら、きっと素直に喜べないかと思います。

ただ、こういった配慮が必要な項目は、教師が一方的に「だめ」と言うのではなく、

「本当にいいの?」
「もう少し考えてみて」

と、子どもたちに考えさせて、子どもたちから「やめとこう」と答えを導き出したほうがいいです。自分で考える力、相手を思いやる力、先のことを見通す力を養う大切な機会になるからです。こういった経験は、今後の学校生活、友達づきあい、人付き合いにも活きるかと思います。

松下先生の卒業文集指導アイデア記事はこちら!
卒業文集に向けたテーマ選びのひと工夫【卒業文集の指導④】
卒業文集では、手本を見てイメージをふくらませよう【卒業文集の指導③】
手書き卒業文集は、文字の「大きさ」と「濃さ」に気を付けよう【卒業文集の指導②】
手書き卒業文集は、ひらがなの書き方確認から始めよう!【卒業文集の指導①】


松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
連載
松下隼司の笑って!!エヴリディ
特集
卒業特集ー6担初心者もこれで安心!ー 

学級経営の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました