「知識構成型ジグソー法」とは?【知っておきたい教育用語】
近年、「アクティブ・ラーニング」の1メソッドとして注目を集めている「知識構成型ジグソー法」。その目的や、授業での実施の流れについて解説します。
執筆/「みんなの教育技術」用語解説プロジェクトチーム
目次
知識構成型ジグソー法とは
「知識構成型ジグソー法」は、認知科学者の三宅なほみ氏が考案した学習手法です。ある問いに対し複数の視点から書かれた資料をグループに分かれて読み、その後、他のグループの人と共有し合うプロセスを経て、理解を深めます。
教師から児童生徒へ知識を一方的に教え込む従来の形ではなく、児童生徒同士が対話を通じて知識を深める協働学習を通し、真の知識が生徒に定着することをめざします。このプロセスの中で、知識の表現方法、活用方法も学びます。
心理学者エリオット・アロンソンが1971年に考案した「ジグソー法」との違いについては、教育環境デザイン研究所が下記のように説明しています。
Aronsonの狙いが人種の融合など児童生徒の関わり合いの促進にあったのに対し、知識構成型ジグソー法の狙いは関わり合いを通して一人一人が学びを深めることにあります。したがって、知識構成型ジグソーは手法としても、明確な問いを設定して、学習の前後で問いに対する回答を二回求めるなどの特徴を持ちます。
出典:一般社団法人教育環境デザイン研究所 ホームページ
知識構成型ジグソー法の流れ
知識構成型ジグソー法を活用した授業の流れは、次の通りです。
事前準備 教師は、授業の柱となるテーマについて、3~4つの知識を組み合わせて解くことができる「問い」を設定します。そして、その問いを解くために必要な資料を、知識のパートごとに分けて準備します。
1.問いを受け取った生徒は、まず1人で答えを考えます。
2.同じ資料を読み合うグループを作ります。資料を読んで話し合い、そのパートの理解を深めます。この活動をエキスパート活動と呼びます。
3.違う資料を読んだ人が1人ずつとなるようグループを組み替え、先ほどのエキスパート活動でわかった内容を説明し合います。元の資料を知っているのは自分1人だけのため、自分の考えを自分の言葉で伝えることが必要となります。同時に他のメンバーからの説明も聞き、理解を深めます。それぞれの知識を組み合わせ、問いに対する答えを出します。この活動をジグソー活動と呼びます。
4.グループごとに、答えとその根拠をクラスで発表します。互いの答えと根拠を検討し、その違いを通して、自分なりのまとめ方を吟味します。この活動をクロストークといいます。
5.もう一度1人で、最初の問いに向き合い、答えを考えます。
(一般社団法人教育環境デザイン研究所 ホームページをもとに作成)
これからの社会を生き抜くための力の育成
他者との対話を通して自身の考えを深める知識構成型ジグソー法は、学習指導要領がめざすアクティブ・ラーニング「主体的・対話的で深い学び」のための有効な1メソッドです。また、複雑化した社会を生きていくための、発想力や思考力の育成にもつながります。
ただし、1人の理解が浅いとグループ全体の理解も浅くなるなど、授業で実践するうえでの課題もあります。全員が理解する機会を平等に得られるよう、発表の後に教師が補足説明をするなどの配慮が求められます。
▼参考資料
一般社団法人教育環境デザイン研究所 ホームページ(ウェブサイト)「知識構成型ジグソー法」