保護者との個人面談は「おもてなし」精神で

連載
松下隼司の笑って!!エヴリディ

大阪府公立小学校教諭

松下隼司

学期末になると、保護者との個人面談があるかと思います。保護者一人にかける時間は、学級の人数にもよりますが、10分~15分間程度でしょう。この10分~15分のために、保護者は仕事を調整し、場合によっては仕事を休んだり、早退したりされています。この時間調整が本当に難しいということを、松下先生は自分自身が小学生の子どもをもつようになって、初めて分かったそうです。

期末個人懇談会を少しでも実りのある時間にするために、準備する先生方も多いはずです。学習面のがんばりや課題を伝えられるように資料を用意したり、友達関係で気になることをつかんでおいたりするかと思います。今回は、保護者に「短い時間でも来てよかった」と感じて帰ってもらうための「期末個人懇談会のおもてなし」を紹介します!

【連載】松下隼司の笑って!!エヴリディ

廊下でのおもてなし☆5つの心遣い

期末個人懇談会のスタートは、保護者が教室に入って席に着いてもらったところからではありません。保護者が教室に入る前から始まっています。

次は、これまで教師21年間の経験の中で、少しずつ改善してきた「廊下でのおもてなし5」です。同僚の先生から学び、自分の失敗を改善してきた、期末懇談会において保護者に廊下でどう待ってもらうかの5つの心遣いです。

  1. 保護者に廊下で座って待ってもらう椅子は、オルガン用の椅子にする。
    (椅子の高さが大人向けでクッションがあり、お尻が痛くならない。)
  2. 暑い夏は扇子、冬は膝かけ用の毛布を用意する。
    (「暑い(寒い)中、ありがとうございます。どうぞご自由にお使いください」と、メモも置いておく。)
  3. 廊下側の教室外の壁に、子どもの作品を掲示する。
    (「〇学期の成長」「クラスのいいところ」「〇班のいいところ」など、学校生活についての新聞がおすすめ。1人1枚書かせる。)
  4. 遠足や社会見学などの行事や、係活動、授業の様子が分かるような写真を廊下に掲示したり、アルバムにして置いたりする。
  5. 廊下側に教室用カーテンがあれば閉める。
    (教室にいる保護者が、廊下の保護者を気にしないでいいように。)

保護者への最高のおもてなしは、待たせないことです。「待たせないなら、上のような心遣いはいらない」と思われるかもしれませんが、担任の心遣いに保護者の方は意外と気づくものです。

教室でのおもてなし☆14の心遣い

個人懇談会は、保護者が教室の席に着いたところからがスタートではないことは前述しました。廊下にいる保護者をどう教室に招き入れるか、話が終わった保護者をどう教室から見送るか、接客業のアルバイトで培った経験を取り入れました。

始まり方と終わり方をポイントに、「おもてなし」の具体的な作法を紹介いたします。

  1. 「こんにちは」と明るく笑顔で保護者よりも先に挨拶する。
  2. 教室入り口まで保護者をお出迎えする。教師がドアを開ける。
  3. 挨拶後にさらに一言、感謝の言葉を保護者に言う。
    (例「暑い中・雨の中・寒い中・お忙しい中ありがとうございます」)
  4. 保護者に座ってもらう椅子まで案内する。
    (保護者の机椅子は教師用。教師は子ども用の机椅子。)
  5. 座ってもらう椅子を教師が引いて、保護者に座ってもらう。
  6. 「手荷物はこちらにどうぞ置いてください」と伝える。
  7. 「1学期は大変お世話になりました。ありがとうございます」と改めてお礼を言う。
  8. 「時間は10分程度と短い時間ですので、先にお母さまからお話があればうかがいたいです。何かございますか?」と聞く。
    (時間の目安を再度、確認する。相談事を先に聞く。)
  9. 相談事があれば、最優先に聞く。
  10. 保護者からの相談事などで残りの時間がなくなってきたら、「もっとお母さまから、お話をうかがいたいです。よろしければ、改めて、別の日に個人懇談会を設けさせていただけませんか?」と聞く。
    (無下に「時間ですので」と打ち切らない。)
  11. 学校での友達との様子を伝える。
    (休み時間はクラスの誰と、どんなことをして過ごしていたかなど。)
  12. 学習面での努力・成長を伝える。
  13. 来学期に向けて、学習面などの課題を1つだけ伝える。
  14.  教室出口までお見送りする。教師がドアを開けて、深々と礼をする。

教師と保護者の話す位置は、斜め45度のL字がおすすめです(保護者が教師用の椅子に、教師は子ども椅子に着きます)。リラックスした雰囲気になり、話を進めやすくなります。

医師と患者が座る位置も、このようになっていますよね。

松下隼司先生

松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。

イラスト/したらみ

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