ICT活用で授業改善と働き方改革をあわせて実現!北海道・発寒東小学校の事例紹介

働き方改革の文脈で校務の情報化を進めている北海道札幌市立発寒東(はっさむひがし)小学校。同校は、リーディングDXスクールや生成AIの活用研究(いずれも文部科学省の事業)にも参加している。この事業をどのように進め、どのような成果を生んでいるのか、推進役の尾形朝良先生に話を聞いた。

尾形朝良(おがた ともよし)先生

職員朝会はナシ!朝の時間での活用

本校でICTはすっかり日常的なツールになっています。

先生方は、朝出勤すると出勤システムで打刻をして、すぐに教室へ向かいます。職員への連絡は「Google Classroom」(Google)や「まなびポケット」(NTTコミュニケーションズ)のチャンネル機能で通知されるので、職員朝会はありません。職員が集まるのは週1回放課後に行う職員集会だけです。

子供たちも、登校するとすぐに端末を起動し、「Google Classroom」で担任の先生からの連絡事項を確認し、先生からの指示に対してコメントを書きます。その後、各自ドリル学習やタイピング練習などに取り組む、というのが朝の流れ(全学年共通)です。

子供たち全員が毎朝コメントを書くことで、意外な子の意外な姿が見えてくるようになりました。タイピングスキルが向上するメリットもあります。

情報共有はGoogle Classroomを徹底活用

朝の時間のほか、委員会活動やクラブ、異学年交流の活動でも「Google Classroom」を活用しています。打ち合わせが効率的になるという省力化のメリットだけではありません。互いの活動や考え・感想が共有されることで、「認め合い」「励まし合い」など、活動の質的向上が見られるようになってきました。

また、係や日直の連絡でも活用しています。最終板書を撮影して貼り付けておくと、授業の振り返りに役立ちますし、欠席している子供にとっては、授業をイメージすることができて便利です。

ただ、課題もあります。「Google Classroom」は、情報更新の連絡をしてくれません。自分の関連するクラスを日々チェックしておかないと、情報を見落としてしまうのです。大事な情報は、別の手段でも伝えるなど工夫が必要になります。

紙のドリルは廃止!デジタルドリル3つのメリット

授業では「ミライシード」(ベネッセ)や「Google Jamboard」(Google)などのツール系アプリや、デジタル教科書、デジタルドリルなどを活用しています。これまで使っていた紙のドリルは廃止しました。デジタルドリルには、次のようなメリットがあります。

  • 採点業務をなくせる
  • 子供たちの達成状況が容易に把握できる
  • 前の学年の問題に取り組むことが容易

もちろん、アナログな学習活動をすべてやめたわけではありません。たとえば国語の言葉探しのワークシートでは、端末上であれこれシミュレーションし、最終的にワークシートへ手書きして提出するといった活動をしています。こうすることで、すべて端末上で完結させるより定着すると考えています。

「ことばあそび」の活動で紙とデジタルを上手に使い分ける

夏休みの課題・日記も紙からデジタルへ

いままで紙の教材を購入していた夏休みの課題や日記は、「スクールタクト」(コードタクト)というアプリに移行しました。デジタル日記だと、子供たちの日々の様子がわかりますし、毎日コツコツ書いていく子、数日分まとめて書く子など、性格も見えてきます。

夏休みのデジタル日記(スクールタクト)

また、北海道新聞社が主催する「どうしん小学生新聞グランプリ」にも参加しました。これは全員参加の取り組みです。子供たちは、取材した内容を「はてなのタネ」という形でまとめます。それをもとにして、各自手書きで新聞にまとめました。子供たちには、手書きには手書きの良さがあることを感じさせることができたと考えています。また今年は学校賞をいただくことができました。

新聞の「タネ」(左)と完成した新聞の例(右)

紙の配布物を徹底的に減らす

本校のICT活用は、働き方改革の一環でもあります。給食だより、学校だよりなどは紙での配布をやめ、「まなびポケット」や「tetoru」(Classi)というアプリを使ってデータ配信しています。保護者との連絡も基本はオンラインです。「tetoru」は、出欠席の連絡、学級閉鎖や懇談会延期に伴う連絡、時間割の配信などで便利に使っています。朝の電話が大幅に減りました。

また、先生方へICT活用のためのヒントや便利な情報を提供するため「電脳☆通信」という不定期の新聞を発行しています。もちろんデータ配信のみで、印刷はしません。ある程度データで情報をまとめて閲覧できるようにしておくことで、マニュアル的に使っていただくこともできます。

「電脳☆通信」の例

生成AIをどう活用していくべきか?校内研修もデジタルで

文部科学省の事業として「ChatGPT」(OpenAI)の活用研究に参加したことから、10月初旬にChatGPTを校務で活用するための研修を行いました。外部から生成AIに詳しい講師を招き、概要と使い方を指南してもらい、「ムーブノート」(ベネッセ)を使って活用案を出してもらう、という形式です。

今年の7月から、札幌市として「ムーブノート」が採択されたため、それに慣れるという意味もありました。先生方からは、たくさんの活用アイディアとともに、「ぜひ使ってみたい」などの感想が寄せられました

生成AI「ChatGPT」の活用を考えた際、次のようなアイディアが寄せられました。

  • 教材研究の時間を短縮する
  • Excelのマクロを作成する
  • 保健だよりの挨拶文の下書きを作成する
  • 通知表の所見文のたたき台を作成する

これらはどれも教員の作業負荷を減らすことができそうなアイディアです。実際にできそうなものから少しずつ取り組んでゆき、さらなるICT活用につなげていければと思っています。


取材・文/村岡明
国語教科書編集者を経て「ジャストスマイル」など教育ソフトを多数企画する。その後教職員向けのネットマガジンを創刊。ソフト開発、Webサービスの開発を20年以上経験している。

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