【相談募集中】教職を愛しているのに、職員同士の人間関係で辞めてよいのか迷っています

特集
先生のための個別相談サービス【みん教相談室】相談&回答一覧

臨床心理士・公認心理師

大多和二郎

教師歴25年の先生から「みん教相談室」にSOSが届きました。教師の仕事にやりがいを感じているけれど、人間関係で悩んでいて毎日が辛いそう。退職するか迷っているという相談に、教員向け法定研修でメンタルヘルス研修の講師をされている臨床心理士・公認心理師の大多和二郎先生からアドバイスをお届けします。

イラストAC

Q.教職を愛しているのに、職員同士の人間関係で辞めてよいのか迷っています

私の今の悩みは教師を辞めるべきかどうかです。 職員室のことが重くのしかかっています。 自分のアイデンティティの一つだった教師という仕事。辛いことがあっても、嫌いになったわけではないこの仕事を、周りの大人が理由で辞めてよいのかと迷っています。

今、職場に行くのが毎日辛いです。 今年度は、専科担当です。 勤務校にこのポジションができたのは今年度初で、 今年度から来た新校長の意向でできました。 

このポジションは、先生方の文句のはけ口だと感じています。 ポジションが悪いのか、私という人間が悪いのか、分かりませんが……。 たくさんの先生方と連携を取らなければなりませんが、もはや、わがままのぶつけどころになっています。

通知表の提出が何日も遅れている教務主任に催促をすると、「先生には出さずに、直接管理職に出すって言ったろ」と言われます。 毎週のように専科をしてきたクラスの先生に、このままでは早いうちに時数がオーバーすると話すと、 「3月まで空き時間を作るのは先生の仕事だ」と言われます。 若い先生からは、物をしまうことなどを頼まれます。

 委員会の仕事は、担任が忙しいという理由で、3人体制なのに、自分だけで進めざるを得ません。 荒れたクラスの援助にも行き、他の先生が休めば代わりに入り、先生方の空き時間を作るために給食指導にも入ります。私の空き時間などはありません。

ある教諭は、私が「優しすぎる」からそうなるのだ、と言います。 そうなのかもしれませんが、どうしたらよいか分かりません。 そして、以前は仲の良かった周りの先生方とも、最近では意思疎通ができません。 こんなことになっているのは、今年度に入ってからです。

今年度の校長は私が前任校で1年一緒に勤務した方です。 大きな問題があったとは認識していませんが、その年度の終わりに私は異動させられました。 まだ3年目の勤務校なので、何度も何度も断りました。 しかし、「支援級であれば、〇〇市内に残れる」と言われるだけでした。 私は学級経営が大好きです。決して支援級に偏見があるわけではありませんが、通常級にやりがいを感じ、長い間勤めさせていただいていました。 市外の勤務も希望しましたが、私の希望はかないませんでした。

ところが、昨年度の私は、とても恵まれていました。意外にも通常級の担任ができ、子どもたちにも、学年団にも恵まれ、自分らしく過ごすことができました。 この学校に来て、よかった、幸せだ、と感じていました。 しかし、また、私を異動させた校長がやってきたのです。 自分の心がフリーズしたようになり、結果的に専科となりました。春には体調を崩しました。原因不明の体調不良。 それでも、なんとか、半年は「自分にできることをしよう」と動いてきたつもりです。 が、それをすればするほど、状況は良くなりません。 

今は、帰宅後、必要な家事以外はほとんどの時間を布団の中で過ごしています。 夜もよく眠れず、朝になると学校に行く、というのを繰り返しています。 私が弱くて、私がわがままで、私がネガティブなだけで、こんな話はどこの学校にもあり、パワハラでも何でもない、と、言われてしまうかもしれません。

でも、これだけは言えるのです。 「自分らしくない」と。 それが苦しいのに、 「優しすぎる」からだと、理不尽なことを言われることに 気持ちが耐えられなくなってきました。 今の自治体を退職して、他県で教員をしようか、とも考えました。 でも、なぜ、自分が退職しなければならないのか、と家族に言われ、 考えが少し揺れています。 私は、ここに住みたい。 そして、去年、落ち込んでいた私を元気にしてくれた今の学校の子どもたちとは、今でも一緒にいたいと思っています。 どうしてよいのか分かりません。 どうか、ご教授を願います。(みゅう先生・女性・50代)

A.「自分らしさ」をとりもどすために、信頼できる人に状況と心境を相談しましょう

今年度は「たくさんの先生方と連携を取らなければならない今年度初のポジション」になり、そのポジションは先生方の文句のはけ口になっているということですね。教師という仕事は嫌いになったわけではないけれども、職員間のことで辞めてよいのか迷っている現状についてのご相談ですね。分かりました。

具体的に、いろいろな仕事をしなければならない現状と、担任の先生方とのやりとりでの辛さが書かれていますので、ご苦労がよく分かります。昨年度はこの学校に来てよかったと思えていて、とても恵まれていましたね。それなのに、今年度になり、自分を異動させた前任校の校長がお気に入りの先生とともに現任校に異動してきて、現在のポジションになったことから、昨年度とは打って変わって辛い日々になっているのですね。昨年度と今年度とがあまりにも違う状況なのでより辛いですね。また、夜も眠れないことや、そして原因不明のめまいと血圧の上昇など、体調的にも心配です。

今のみゅう先生の苦しみは「自分らしくない」ということから来ていますね。昨年度は自分らしく過ごせていたし、教師という仕事にはやりがいとアイデンティティを感じているのですから、問題は「自分らしくない」ということですね。今年度の学校で取らされている役割や、それにまつわる人間関係からくるストレスで、気持ちも体も参ってきています。ポジションとしていろいろなことをやらされる立場であるだけでもストレスを感じやすいところにきて、職員間のやりとりでの「理不尽さ」を感じることが多くなってきて、自分らしくないところに追い詰められている感じがします。

教師という仕事は好きだし、今の学校の子どもたちとは今でも一緒にいたいと思っていらっしゃるのですから、辞めるという方向ではなく、自分らしくない状況から抜け出して仕事を続けていく方向で考えたほうがよいかと思います。

今年度のポジションでストレス状況がきつくなってきていますので、まずは、「この新しいポジションでの大変さ」をどなたかに話せるとよいかと思います。養護教諭からは「優しすぎる」と言われて耐えられなくなったということですから、他の方ですね。大変な状況に置かれている苦しさを聞いてくれる人がいるだけでも気持ちが少し軽くなると思います。学校内の職員で話せる人が思いあたらなかったらカウンセラーでもよいでしょう。守秘義務を持った専門家に現在置かれている状況と心境を話し、気持ちを受け止めてもらいながら、今後のことを一緒に考えてもらいましょう。

ストレス反応で、心身の不調がひどくなってきているのでしたら、一度病院で診察してもらいましょう。ストレスによる不調の場合、心療内科がよいと思います。ストレス状況と体調の関係を診てもらうことにより、今後の勤務について医師からの助言ももらえると思います。来年度の配置についても、専門家の助言があると管理職との話が進めやすくなるでしょう。特に、現在の校長との関係では、昨年度までの校長のように対応してもらえない可能性があるならなおさらです。医師から現在の役割と職員間の関係性がストレス状況を悪化させる可能性があるという言葉をもらえたなら、配置についての希望を出しやすくなります。

自分らしさをとりもどし、ずっとやってきた教師というやりがいのある仕事を続けるためにも、味方になってくれて、客観的な視点で見てくれる人に相談することで、この状況を乗り切っていってほしいと思います。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

学校の先生に役立つ情報を毎日配信中!

クリックして最新記事をチェック!
特集
先生のための個別相談サービス【みん教相談室】相談&回答一覧

教師の働き方の記事一覧

雑誌『教育技術』各誌は刊行終了しました