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学級崩壊の立て直し 体験教師から学ぶワークフロー

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学級崩壊・学級の荒れ:立て直しからリアルな緊急避難まで
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学級崩壊を体験した小学校教師の体験談から、リアルな立て直しのワークフローが見えてくる貴重な記事です。学級崩壊はどの先生にも起こりうること。もし、あなたの学級が崩壊してしまったら、どのように立て直しを図るべきでしょうか? 実際に学級崩壊を起こしたことがあるという先生が、ご自身の体験談から学べることを教えてくださいました。

執筆/福岡県公立小学校教諭・中雄紀之

学校

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私も学級崩壊させました

私は学級を崩壊させたことがあります。精神的に弱りきり、それは体にも表れました。出勤する前に必ず嘔吐します。職員室から教室に上がる前にも嘔吐します。夜は夜で反抗する子供たちが夢に出てきます。あまりの辛さでバッと目が覚めます。体は汗だくです。夜中の2時、3時にベッドの上で途方にくれました。

もはや、立て直しはおろか、私一人で教壇に立つことさえ無理でした。私の教室には、多い時で3名のサポート教師がいました。3名ですよ。いったいどれだけ悲惨な学級だったのでしょうね。でも、その3名の先生方が、私と子供たちを救ってくれたのです。そんなエピソードから始めましょう。

当時は、なぜ学級崩壊したのか、その原因が全く分かりませんでした。私なりに一生懸命にやっていました。最初は私に反発する子は男子1名でした。その子は悪い意味で有名な子供でしたから、まあ、しょうがないと思っていました。しかし、不思議です。1人の反発が2人、3人と増えていくのです。女子に至っては、5人で徒党を組み、冷ややかな目で私を見るようになりました。「えっ、どうして君が?」と思うような子供でさえ、私の言葉に耳を傾けなくなっていきました。それから連鎖のように起こるケンカ、いじめ、クレーム・・・。無力感に包まれる私がいました。

放課後の職員室では、電話器が鳴るたびにビクビクしました。「中雄先生、○○さんの保護者から電話ですよ」この言葉がどれだけ怖かったことか。

どんどん口数が少なくなっていく私を同僚の先生方が気にかけてくださいました。「中雄先生、そんなに落ち込まなくてもいいよ。誰が受け持っても一緒だから」

しかし、学校内で学級崩壊させているのは私一人です。プライドも何もかもズタズタでした。

勤務校は、いわゆる困難校と呼ばれる学校でした。そういう学校でしたので、担任を受け持たず、子供や教師を支援する立場の先生が配置されていました。精神的に追い込まれていた私はついに、その立場である田代先生に次の言葉を吐き出しました。

『田代先生、もうだめです。助けてください』

田代先生は、優しく微笑んで私の肩をたたき、こう言ってくれました。

「中雄さん、心配しなくていいよ。明日から、俺たちが教室にずっと入るから。子供たちの問題行動は俺たちで対応するから。中雄さんは授業だけ進めればいい」

次の日から、私の教室は先述のような4人体制になりました。教室に3人も、4人も先生(大人)がいることで、様々な変化が起きました。

まずは秩序です。離席や私語がなくなりました。時間も守り始めました。おそらく、子供たち自身も、自分たちがよくない行為をやっていたことを自覚していたのでしょう。秩序が保たれることで、子供たちも落ち着いていきました。

次に、私自身の変化です。一言でいうと「肩の荷がストンと下りた」です。サポートの先生方が教室に入る前は、問題行動を起こす子供にかかりっきりになる反面、その他の子供たちに対して手薄になります。それが原因で学級の荒れ-学級崩壊が進んでいきました。

しかし、サポートの先生方が教室にいてくださると、問題行動に対しては、その先生方が対応してくださるので、私はその他の子供と授業を進めることができます。私の肩の重さはすっとなくなり、驚くような軽さを感じたことを覚えています。

サポートに入ってくださった先生方は、子供への接し方が上手でした。怒鳴り声など一回も上げませんでした。今思えば、どの先生方も、凄腕教師だったと思います。

まず、子供を観察する力。些細な表情を汲み取って、子供たちがマイナスの行為に出る前に声をかけていたような気がします。その声かけが温かいのです。愛情をもった言葉づかいでした。子供たちの心の棘が落ちていくのが見えるようでした。私は初めて、子供に寄り添う指導を目の当たりにしたのです。あの先生方だったからこそ、私と私の学級はなんとか崩壊から立ち直れたのでしょう。

私も徐々に元気を取り戻していきました。そんな私に、サポートの先生方はこう言いました。

「いつまでも俺たちが中雄さんの教室にいるというのはやっぱり不自然だよね。少しずつ、俺たちが教室から離れていくようにしないとね」

つまり、私自身が教師としての力をつけないといけないというメッセージだったのです。

「誰かに話す」ことが立て直しの第一歩

私の経験から読者の先生方に一番伝えたいことは、「自分の辛さを誰かに話す」ということです。もしあの時、私が田代先生に「もうだめです。助けてください」を言わなかったらと考えると怖くなります。きっと立ち直れないぐらいの傷を負っただろうと予測できます。

以前、コーチングの研修に参加した時のことです。講師の先生がこう言っていました。

「ここにある水の入った1.5リットルのペットボトルを『持ち上げてください』と言われたら、できない人はいませんね。でも、『20分間持ち続けてください』と言われたら、きつくなりませんか。想像してみてください。20分間ペットボトルを持ち上げ続けている自分を。どうしたいです? ペットボトルを放したくなりますね。放すことで楽になりますもの。自分の辛いこと、苦しんでいることを誰かに話すということは、このペットボトルを放すことと同じなのです。人に話すことで楽になるのです」

私たち教師は、あまり弱音を吐かない人種のような気がします。あなたは、自分一人で学級の悩みを抱えていませんか。私は、43歳というこの年齢になっても同僚や仲間にうまくいかないことを口にします。それで解決するわけではありませんが、分かってもらえたり、同様な経験を話してもらえたりすると、楽になります。友人でも家族でも同僚でも、相手は誰でもよいのです。辛いことを話して=放してください。

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