「コグトレ」でコミュニケーション力を育てよう〔危険予知トレーニング(人に対するリスク)〕#6ダウンロードプリント付
6回目の今回は、周りの状況から危険を予知して自分自身の命を守る力を養う「危険予知トレーニング」のなかの〔人に対するリスク〕にチャレンジしましょう。「コグトレ」とは、宮口幸治先生たちが開発した「コグニティブ(認知)機能」に着目したトレーニングのことで、身体面、学習面、社会面の3方面から包括的にトレーニングする特徴があります。本連載では、社会面のトレーニング(認知ソーシャルトレーニング)を基に、感情を上手にコントロールしたり相手の気持ちを考えたりするコミュニケーション力や、危険のリスクを前もって予知し自分の命を守る力を高めるトレーニングを紹介します。ダウンロードプリントを活用して、ぜひ試してみてください。
監修/立命館大学教授・宮口幸治
目次
認知ソーシャルトレーニングとは
コグトレの認知ソーシャルトレーニングは、感情を統制する、危険を予知する、対人スキルを高める、問題を解決するなど、社会で生きる力を養うトレーニングです。以下の表のように「段階式感情トレーニング」「危険予知トレーニング」「対人マナートレーニング」「段階式問題解決トレーニング」など、4つのトレーニングから成り立っています。
今回は、「危険予知トレーニング」のなかから、〔人に対するリスク〕の課題を紹介します。
このトレーニングは、日常の状況の中にどのような危険が隠されているかを想像することで、危険な状況を予測する力を養います。子どもたちは経験が浅いために、知らない人の言葉でもそのまま信じ、被害者になってしまうというケースがあります。誘拐や暴力などの被害に遭わないためには、あらかじめ危険を予測できる力が必要です。ここでは人に対する危険な状況を予測する力をトレーニングによって向上させていきます。
〔人に対するリスク〕にチャレンジ!
ねらい
人に対する危険な状況を日頃から事前に予測しておくことで、危険を回避できる力を養います。
進め方
1 課題シートにあるイラストを見てもらい、危険だと思うことを予想して1~5に書き入れてもらいます。
2 危険だと思う順番について番号を並べ、今後、どれに気を付けたらよいかを考えさせます。
※課題シートにあるイラストがどのような状況にあるのかを説明します。グループ活動がおすすめです。みんなで話し合いながら危険であると思われる状況をできるだけ多く出すようにします。
課題シート
解答例:
(1)
1 誘拐される。
2 知らない場所に連れていかれ、暴力をふるわれる。
3 撮影中にわいせつな行為をされる。
など
※想定されるリスクはこれで全部ではないかもしれません。この例を子どもたちにあげてもらう必要はありません。あくまでトレーニングを行う参考にしてください。
授業の進め方
進め方は以下の手順を参考にしてください。※詳しくは『子どもの認知能力をグングン伸ばす!マンガコグトレ入門』(小学館)をご覧ください。
宮口幸治(みやぐちこうじ)
立命館大学教授 一般社団法人日本COG-TR学会代表理事
京都大学工学部を卒業し建設コンサルタント会社に勤務後、神戸大学医学部を卒業。児童精神科医として精神科病院や医療少年院に勤務、2016年より現職。困っている子どもたちの支援を行う「日本COG-TR学会」を主宰。医学博士、子どものこころ専門医、日本精神神経学会精神科専門医、臨床心理士。著書『ケーキの切れない非行少年たち』(新潮新書)が大ベストセラーになる。
取材・文・構成/浅原孝子 イラスト/畠山きょうこ、荻野琴美(オーデザインチャンネルズ)
出典:『社会面のコグトレ 認知ソーシャルトレーニング①段階式感情トレーニング/危険予知トレーニング編』(三輪書店)
著/宮口幸治 ・神島裕子
新書判 192ページ
逆境に苦しんでいる子への支援のヒントが満載
どの親のもとで生まれたかによって子どもの人生が左右される現実をカプセルトイにたとえた「親ガチャ」という言葉。 『ケーキの切れない非行少年たち』の著者と気鋭の哲学者が、全ての人が幸せを追求できる社会のあり方を考えながら、逆境を乗り越えるための心の持ち方、人生を切り開く力のつけ方を、哲学・精神医学・心理学の観点から具体的に提唱する。
『子どもの認知能力をグングン伸ばす! マンガコグトレ入門』(小学館)
著/宮口幸治
A5判 224ページ
教室を舞台にしたマンガでコグトレの進め方を楽しく具体的に紹介しています。「コグトレを取り入れたいけれど、何からどのように始めたらよいかわからない」という方にもピッタリの1冊です。「コグトレ」の代表的な50種のトレーニングのねらいや進め方・ポイントなどを、マンガを交えて易しく解説。紹介する課題のワークシートはすべてダウンロード可能。