「ナンバリングメモ&なるほどベスト3」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#9
子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第9回は、あらゆる場面で活用できる「ナンバリングメモ&なるほどベスト3」です。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
メモ力を驚くほど上げるコツ
主体的に学び取る力は、「メモ力」だと私は考えます。
しかし、子供たちにメモ力を付けるのはとても難しいもの。メモが高度な営みになってしまうのは、聴書と要約の2つの作業を同時に求めてしまうからです。
そこで、「聴書だけ」に、まずは専念します。そして、大事なことの要約は「後から選ぶ」ようにしましょう。
①聴書…「ナンバリングメモ」で、大事じゃないことも鉛筆を止めないで書き続ける。
②要約…メモの中から「なるほどベスト3」を選んで赤印を付けペアで伝え合う。
このように、「聴書」と「要約」を分けて取り組むと、驚くほどメモが書けるようになります。
大事じゃないところも鉛筆を止めずに書き続ける
「ナンバリングメモ」は、番号を付けてメモを書く手法です。
最大のポイントは、「大事じゃないことも鉛筆を止めないで書き続ける」ことです。
聞こえたこと、見えたこと、考えたことなど何でもいいです。とにかく数を多く書きます。5秒程度で描ける簡単なイラストも数にカウントします。
「ナンバリングメモ」のトレーニングに最適な方法があります。「NHK for School」の10分間の動画を見ながら、メモを取ります。導入期は、1分、3分、5分…と適宜動画を止め、メモを書けた数を確認しながら進めます。
ここまで書けたメモの数を、ペアで確認しましょう
〇〇さんは、12個だね。
〇〇くんは、もう20個、すごい!
では、何個書けたか手を挙げて教えてください。1、2、3、4、5、6、7、8、9個書けた人? その調子!
10、11、12、13、14個書けた人? ここが多いんだ!
[5人の子供が挙手する]
15個以上書けた人? すごいなぁ!
数の可視化は、学習のモチベーション向上に強力に機能します。番号を付けるだけなのに、メモがみるみる増えていきます。1行に1文書くと数が意識しやすいです。私の学級ではノートを2ページ、3ページ使うこともざらです。かしこまらない真っ白なコピー用紙を教室に大量に常備しておき、これを使うのも効果的です。10分間の動画で100を超えるメモを書く子もいます。
導入期は、教師も黒板や白板にメモを書きます。子供たちと競い合うようなつもりで、本気で書きます。手を動かし続けると、脳が活性化します。ゾーンと呼ばれる集中状態に没入する感覚を味わうことができるでしょう。心地よい達成感と疲労感を子供たちと一緒に実感してください。
子供たちが慣れてきたら、1人1台端末にイヤホンを付け、それぞれのペースで動画を再生しながら「ナンバリングメモ」を書きます。
大事なことは、後から選ぶ
最終的に書けたメモの「数」を先述したような挙手で確認したら、書いたメモから自分にとって大事なものの「なるほどベスト3」(内容によっては「ベスト1」)を決めます。20秒程度で赤鉛筆で印(丸や王冠マークなど)を付けます。
このように、大事なことは、「後から選ぶ」のです。
すると、それなりの質のものを子供たちは選びます。「なるほどベスト3」をペアで交互に聴き合います。情報を取捨選択する経験を積み重ね、質の高い交流を子供たちはできるようになっていきます。次第に、メモそのものに質の高い言葉が書き取られるようになっていきます。つまり、聴書と要約の2つの作業を同時にできるようになっていくのです。
校外学習やインタビュー活動、出前授業などへの子供たちの前のめり感も大きく変わります。
あらゆる場面で使える「発散」→「選択」の学習法
「メモ力」が育つと、日々の授業が劇的に充実します。「ナンバリングメモ」で鉛筆を止めずに考えやアイデアを書き出し、友達の意見を聴書して書き足すことができるようになるためです。
学校は学び合う場です。よい選択をするためには、圧倒的な量の「発散」が必要です。目に見えて数が増えていくところから、協働的に学ぶことのうまみを実感できる子も多いようです。そして、出し尽くしたものの中から自分の「なるほどベスト〇」を「選択」します。質の高い考えを要約する力が育まれる営みです。
例えば、
・国語で、登場人物の心情をナンバリングしながら友達の意見を書き足し、最終的な自分の考えを1つ選ぶ
・道徳で、級友の気付きを聴き合いながら書き足し、ベストキーワード3つを入れた振り返りをまとめる
・生活科で、町探検のインタビュー案を出し尽くした中から3つに絞り込む
低学年でも、活用場面を挙げたらきりがありません。学活で学級集団の問題を解決する話合い活動も「発散」と「選択」という流れにぴったり重なります。
「発散」→「選択」
これは、一生の武器になる最強の学習法です。
あらゆる教科に汎用性があります。まずは、聴書と要約を分けて取り組むメモのトレーニングからスタートしましょう。
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
イラスト/佐藤雅枝、イラストAC
参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、多賀一郎監修、鈴木優太編、チーム・ロケットスタート著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク 』(明治図書出版)
【鈴木優太先生 連載】
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク