【相談募集中】多動傾向があり嘘もよくつく児童を、どう指導すればよいかわからない

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支援を要する子への適切な対応ポイント記事まとめ

岡山県公立小学校教諭

南惠介

多動傾向のある児童への対応をどうしたらよいかわからず、クラスも乱れてしまって悩んでいる先生からの相談が、「みん教相談室」に届きました。ここでは、特別支援教育をベースとした学級経営を提唱されている岡山県公立小学校教諭・南惠介先生の回答をシェアします。

イラストAC

Q.多動傾向があり、嘘もよくつく児童が学級にいて、どのように指導していけばよいかわかりません

多動傾向があり、嘘もよくつく児童が学級にいて、どのように指導していけばよいかわかりません…… 。

診断は受けていませんが、前年度の担任や特別支援学級の先生も、ほぼ確実にADHDはあるだろうと言っています。 授業中は勝手に立ち歩いたり、寝転んだりします。1人1台端末を使って関係のないことをしたり、ボールを教室内に持ち込んで遊んでいることもあります。おしゃべりも多く、大声で「先生〜、俺昨日ね〜」と話しかけてくることもあります。

さらに、嘘が多く、テストのバツがついているところを勝手に直して「ここ当たってるのにバツです」と持ってきて、「○○って書いてあったでしょ」と指摘すると「どこにそんな証拠があるんですか!? 先生は子供を疑うんですか!?」と怒ったり、他の子にちょっかいをかけては「やってません」と言ったり……。

その子につられて、普段は真面目なはずの児童がふざけたり、離席したり、周りが気になりやすい児童が「○○さんおかしい!ずるいずるい!」と騒いでさらにうるさくなったりと、その児童を中心にクラスが荒れてしまっています。

現状、「座ることに疲れて離席したい時は『疲れたので立ってもいいですか』と確認してから立つ」という約束をしていますが、それも守れず、好き勝手やっています。 彼も苦しんでるのだという思いと、ニヤニヤ笑って教室を乱しまくることに腹が立つ思いとで、毎日悩んでいます。 どうしていけばいいのでしょうか。

(サランラップ先生・20代女性 4年・全教科)

A.問題をシンプルに分類して、具体的な方法を試してみることです

困難な状況に直面したときのセオリーは、次の3つです。

  1. シンプルに考える
  2. 具体的な方法を考える
  3. うまくいっていることは継続し、うまくいっていないことは変える

先生のご質問を読んで、まず困られている内容をいくつかに分けて考えてみます。

1つめは、多動傾向があるということ。
2つめは、嘘をよくつくということ。
3つめは、授業中に勝手に立ち歩いたり、寝転んだりするということ。
4つめは、おしゃべりが多く、先生に大声で話しかけてくるということ。
5つめは、周りの子がつられて教室が荒れているということ。

こうして並べて見てみると、大きく3つに分類されると考えます。

① 本人が動きたがる
② 自分を認めてもらいたい、自信がない(嘘をついたり先生に話しかける)
③ まわりの子がつられる

① 「本人が動きたがる」対応策

まず1つめについての具体策の提案としては、授業でもっと動く時間をつくってみるということです。動きたがる子もさすがに24時間ずっと動き続けることはありません。ある程度動いたら、その後は落ち着くようになります。体育の授業の後の時間などで、落ち着いて授業を受けることができることが多いなら、普通の授業でも「合法的に動ける」時間を作ると良いでしょう。

例えば、「○○について3分間近くの人と話し合って」とか、「立ちましょう。超特急で音読1回。できた人から座る」とか、立ち座りを含めた「動き」を取り入れるようにします。私の場合は、「ちょっと動いた方が集中できるな」と判断すると、「よし、立って10回ジャンプ。先生より素早く」のように、一見、子どもたちにとって無意味に感じられるようなことを行ったりします。動く、声を発する活動を多く取り入れることで、落ち着いて授業を受けられるようになるケースは多くあります。

② 「自分を認めてもらいたい、自信がない」対応策

2つめとして、その子に関わる時間を今よりも増やしてみましょう。声をかける。目を合わせる。にっこり笑う。たくさん話を聞く。何もしていないときこそ、チャンスです。注意されるようなことをしているときだけ多く関わると、「注目は報酬」になることがあるため、その子のマイナスの行動は増えていきます。案外、困った子、苦手な子に対しては自分が思っている以上に関わっていない場合があるので、先生の場合は当てはまらないかもしれませんが、今以上に「何もしていない状態」により多く関わってみると良いかもしれません。さらに、「○○くんに頼みたいことがある」「○○くんは、これが得意だよね」と、褒めたり、認めたりするなどして、その子が「僕はできる」と感じられる小さな成功体験を積み重ねていくことも大切だと思います。

③「まわりの子がつられる」対応策

3つめの、周りの子がつられるということ。正直、ここが一番難しいと思います。

だからこそ、「みんなはどうしたい?」「どんなクラスにしたい?」と投げかけた上で、じゃあどうする? と具体的に話し合います。決してA君をつるし上げるのではなく、苦手なことはそれぞれあって、それをお互いに助け合う、支え合うためにはという観点からみんなで考えるのです。

また、先生がその子につられないことも大事です。反応があるから、行動が増えるということがあります。マイナスの行動に対しては、聞こえなかった、見えなかったふり(教育的無視)をして、子どもたちの良い行動に注目しながら、授業を楽しくどんどん進めていくことで、不適切な行動が消えていく場合があります。


以上、あれこれ書きましたが、私は実際に先生とその子の様子を見ている訳ではないので、もう少し多くの情報が隠れているかもしれませんし、逆にもっとシンプルなのかもしれません。だからこそ、上記にあげたようにまずシンプルに分類して、具体的な方法を試してみることをお勧めします。

「試してみる」と書いたのは、うまくいかなかったらやり直しをすればいいからです。

3つめの方法のところで書いた「教育的無視」は、その子が「これでいいんだ」と考えてしまい、行動がエスカレートする可能性もあります。この場合は逆効果になるので、別の方法を考えると良いと思います。(ただ、文面から判断すると、すでに注意は何度もしており、注目が報酬になっている可能性は高いと思います)

頭に留めておいていただきたいのは、このような方法の結果が出るまでには時間差があるということです。何日か試してみる。1週間試してみる。行動が変わってくるには、時間が必要です。見通しを持ちながら、あれこれ試してみてください。

意図のある試行錯誤の中でうまくいかないことがあっても、それそのものが、まだ20代の若い先生方にとっては、かけがえのない宝となります。シンプルに考え、具体的な方法を試してみましょう。

少しずつでも、その子が、そして先生の教室が良い方向に進むことを願っています。


みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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