“遊び” から入る理科授業(4年「空気と水の性質」より) 【理科の壺】
理科は、子ども自身が自然の事物・現象としっかり関わることから始まる、とよく言われます。これは、先生や友達から “不思議” を与えられるのではなく、自分自身で見つけ出して、その問題を自分事として解決することを求める、ということです。子どもたち自身が遊んでいる中から「やってみたい!」と思って始まる授業と、先生が「やってみたいでしょ?」とレールを敷くような授業とでは、どちらがよりよいでしょうか? 今回は、子どもたち自身が遊びの中から自然事象と関わり、理科の授業に入り込んでいく1つの事例をご紹介します。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・酒井優里亜
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
1.4年生「空気と水の性質」のスタートは水鉄砲大会!
みなさん、想像してみてください。先生が「今日から、空気と水の性質について学びましょう!」と言って授業が始まったときの子どもたちの反応。「はーい!」「どんなことをするのかな?」などでしょうか。
では、先生が「今日は、みんなで水鉄砲で遊びましょう!」と言って授業が始まったときの子どもたちの反応はどうでしょう。「いいの!?」「やりたい!!」と目を輝かせ、とびきりの笑顔でこちらを見つめてくる子どもたちの様子が浮かびませんか?
子どもたちはこの水鉄砲大会が“学習”のスタートだとは思わないでしょう。でも、これから始まる水鉄砲大会が、実はしっかり「空気と水の性質」の学習へと繋がっていくわけです。“遊び”から、いつの間にか理科の授業が始まっている。ワクワクドキドキ、理科の時間が楽しみになるような授業を始めましょう!
2.市販の空気圧式(加圧式)水鉄砲はどんなしくみ?
市販されている水鉄砲には、引き金を引く運動によって水を発射させるタイプのものや注射器のように水を押し出すタイプのものなど、様々な種類のものがあります。今回水鉄砲大会で使用するものは、シャカシャカっと空気をタンクの中にため込み、空気の圧力を加えてから勢いよく水を発射させる空気圧式(加圧式)タイプの水鉄砲です。
とは言え、これはかなり高価で、子どもたち用に学校で購入するのは厳しそう…。
大丈夫、安心してください。身近にあるもので、子どもたちと一緒に作ることができますよ! 完成形がこちらです。
作り方もお伝えしますが、その前にこの水鉄砲の仕組みを説明しましょう。
この手作り水鉄砲は、空気圧式(加圧式)水鉄砲と同じ仕組みです。ペットボトルの中に半分ほど水を入れ、キャップを突き抜けて飛び出しているストローを指で押さえたら、横に飛び出しているストローから息を吹き込む。そうすると、ペットボトルの中に空気がたまっていき、空気圧が高まり、水を圧し出そうとします。出口をふさいでいる指を離せば、ギュウギュウと空気圧で圧迫された水が勢いよく飛び出していきます。
3.水鉄砲のしくみを調べることで「空気と水の性質」を追究する
水鉄砲でたっぷり遊んだ後、気付いたことや疑問をみんなで共有しましょう。すると、「なんで息を入れただけで水が出るのだろう?」「ペットボトルを手でベコっておしたわけじゃないよ!」「息を入れたストローは水についていなかったよ!」というような声があがってくるはずです。
「この水鉄砲の仕組みはどうなっているのだろう?」「空気が入って来て、そのまま水をおしたんじゃない?」「いや、空気がたくさんたまって、ペットボトルの中がパンパンになって、水がおされたんじゃない?」という話になったら、ここから空気と水の性質にせまっていくことができますね。
ここから先は、筒や押し棒がセットになった実験教材を活用すると学習を進めやすくなります。
<空気の特徴>
・閉じ込めた空気は、ギュウッと圧し縮めることができる
・圧せば圧すほど体積は小さくなるが、圧し返す力は大きくなる
・目には見えないが、いつでも周りにある
<水の特徴>
・閉じ込めた水は、空気のようにギュウッと圧し縮めることができず、かたい
・体積は小さくならず、圧し返す力もない
・目に見える
このように、空気の性質と水の性質が明らかになったら、この水鉄砲の仕組みについて説明することができます。仕組みを理解した上で、もう一度みんなで遊んでみるのもいいですね!
●参考 空気圧式(加圧式)水鉄砲の作り方
最後に、水鉄砲のつくり方を紹介します。
用意するものはこちら。
・500mLペットボトル(固めのものがよいです)
・少し細めのストロー
・一般的な太さのストロー
・ビニールテープ
・キリ(ペットボトルやキャップに穴をあける用)
「あれ? 先生、これって理科の授業じゃない??」
そんなふうに始まっていく学習もいいですよね。先生も一緒に、楽しく授業を始めましょう!
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
理科の壺は毎週水曜日更新です!
〈執筆者プロフィール〉
酒井優里亜●さかい・ゆりあ 神奈川県公立小学校教諭。理科を中心に日々実践研究を行う。知らなかったことを知ることのたのしさに気付き、小学校の教員になって初めて理科が好きになる。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。