授業力を向上するには?【伸びる教師 伸びない教師 第34回】

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栃木県公立小学校校長

平塚昭仁

豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「授業力を向上するには?」です。日々の授業で授業力をアップするには、「授業を考える力」「授業をする力」「授業を振り返る力」が必要です。なかでも、振り返って次の授業につなげることが大事というお話です。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は課題をもって授業に臨み、伸びない教師はただ闇雲に授業に臨む

授業力は三つの力の総合力

授業力は、いわば教師の本丸の部分です。

私は、この授業力を「授業を考える力」「授業をする力」「授業を振り返る力」の三つの力の総合力だと考えています。

授業力は研究授業をすると高まると言われていますが、それは、自分で指導案をつくり、授業をし、参観者に見てもらい、検討してもらうことによって、これら三つの力が高まるからだと思います。また、自主的に研究会や講座に参加したり、書籍を多く読んだりすることでも授業力は高まります。

しかし、研究授業が度々あるわけではなく、かといって自主研究授業をするにもハードルが高い、いろいろな研究会や講座に参加するにもなかなか時間がとれない、そんな教師も多いかと思います。

そうなると、日々の授業を通し、自分自身で授業力を高めていくことが必要になってきます。私は、この日々の授業への向き合い方を変えるだけでも授業力は高まっていくものと考えます。

日々の授業での振り返りが重要

日々の授業では、先ほど挙げた「授業を考える力」「授業をする力」「授業を振り返る力」の三つの力がバランスよく高まっていくことが望ましいのですが、実際にはそのようにいかないのが現状です。

なぜなら、「授業について考える」「授業をする」機会は毎日のようにあるのに比べ、「授業を振り返る」機会は圧倒的に少ないからです。

終わってしまった授業については、「うまくいかなかった」「子供が乗ってこなかった」など、漠然とした感想をもつ程度で終わっていることが多いと感じます。振り返りは、特にやらなくても困ることではないので、なおさらです。

しかし、私は、この自分の授業を振り返ることが次の授業につながるものだと考えています。

自分の授業の課題を明らかにすることで「次はこうしよう」という思考が生まれ、教師の学びが始まります。そして、次からは、ただ闇雲に授業をするのではなく、きちんとした課題をもって授業に臨むようになります。その結果「授業を考える力」「授業をする力」も次第に向上していきます。

この繰り返しで、授業力が高まっていきます。

1日1授業10分の具体的な振り返り

しかし、毎日、すべての授業を振り返ることは時間的に大変難しいので、1日1授業、時間にしたら10分程度、今日の授業について振り返ることをお勧めします。

振り返りでは、「うまくいかなかった」「子供が乗ってこなかった」などの漠然とした感想を「うまくいかなかった理由は、教材にあるのか、授業の構成にあるのか、もっと違う理由なのか」と、より具体的に考えていくことが重要となります。そして、次の授業ではどうしていけばよいのかを自問自答します。

私は、日々の授業の振り返りで気を付けていることが三つあります。

ひとつは、授業を振り返る視点を変えてみることです。

例えば、「自分が研究授業の参観者としてこの授業を見たとしたら、授業検討会でなんと発言するだろう」と参観者の視点で考えることがあります。

また、「自分の尊敬する先生がこの授業を見たらなんと言うだろう」と想像しながら授業を振り返ることもあります。

このように、視点を変えて振り返ると客観的に自分の授業を分析することができます。

もうひとつは、子供にとってこの授業はどうだったかを考えることです。

「楽しかったか」「分かったか」「できるようになったか」「一生懸命考えられたか」など、自分が子供になったつもりで振り返ります。

授業者は、自分で考えた授業がスムーズに流れたかについて振り返ることが多いのですが、「この時間を通して子供たちにどんな学びがあったのか」が一番大切なところです。

さらにもうひとつは、振り返りをして課題が出たら、その課題の解決方法を見付け、明日からの授業で試してみることです。

今は、インターネットで検索すれば課題に対して様々な解決方法が見付かります。すぐに解決できないような課題だったら書籍を取り寄せることもできます。また、周りの教師に聞くこともできます。

そうして見付けた解決方法を明日からの授業で試してみます。

しかし、せっかく見付けた解決方法がうまくいかず新たな課題が見付かることもあります。この繰り返しで授業力が向上していきます。

小学校の授業日数は年間約200日、1日1授業を振り返るとしても1年間で200の授業を振り返ることができます。それは200の課題を見付け、その解決に向けて授業と向き合ったことにもなります。また、こうして見付けた課題は「授業の観点」となって、今後、授業をするとき、見るときに大いに役立ってきます。

課題意識をもって授業に臨む教師とそうでない教師との授業力の差は歴然であることは言うまでもありません。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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