学校へのクレーム・抗議の電話!! どう対応すればいい?
学校には、様々な電話があります。おほめの言葉、お叱りの言葉、生の情報などなど…。プラスの内容であればよいのですが、生徒指導や様々な教育活動に対し、苦情や要望、クレームの電話がかかってくることも珍しくありません。中には理不尽なものまであります。どのように対応するのがいいでしょうか?
【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~
目次
1 お叱りの3つのタイプ
学校現場での深刻なクレーム問題に取り組まれている、大阪大学名誉教授の小野田正利氏。
わたしは氏からご指導をいただいたことがあり、氏の教えは、わたしの行動の指針となっています。
氏の分類によると、保護者から学校への要求は次の3種類に分かれるそうです。
●要望:学校がやるべきことに対するまっとうな要求
例)「学級通信の言葉がわかりにくいから簡単にしてほしい」
●苦情:学校がある程度は対応すべき要求
例)「運動会の練習の音がうるさい。どうにかしてほしい」
●イチャモン(無理難題要求):学校にもどうにもできない要求
例)「Aさんとうちの子どもの仲が悪い。別のクラスにしてほしい」
担任が対応すべきことは、「要望」と「苦情」です。
「要望」は学校経営、学級経営における課題や不備の指摘です。改善していくための貴重な情報源になります。
次に、「苦情」です。例えば、実際に学校外での騒音量を測ったら70dB(電話の着信音レベル)くらい出ていた、という場合はすぐ対応すべきでしょうが、40dB(図書館の中レベル)で苦情を申立ててくるような場合もあります。つまり学校として対応するかどうかはグレーゾーン、ケースバイケースです。何が問題なのか、相手がどう考えているのかなどを分析し、できるだけ解決の方向性を見いだしたり、あるいは落とし所を探したりしていかねばなりません。
最後のイチャモンに関しては、管理職にお任せしてください。
そして、「学校としてできること・できないこと」をきっぱり伝えてもらうようにします。それが管理職の責務です。
参考:ベネッセ教育情報「保護者から学校への要求3種類 イチャモンと思われないひけつは?」
(https://benesse.jp/kyouiku/201404/20140414-3.html)
2 保護者対応でこじれないようにするには
最近は若手教員だろうがベテランだろうが、保護者対応でこじれることが多くなってきました。
申し立ての内容に「苦情」が多くなり、対応に苦慮することが増えてきたためです。
中でも、保護者さんとのファーストコンタクトで失敗し、問題を深刻化させてしまうケースが多いようです。
ファーストコンタクトは電話によることが多いのですが、ここで誤った対応をしたために、後々問題がこじれてしまうわけです。
電話応対で注意するポイントは、以下のようなものです。
①NGワードを避ける
ふだんの会話では、かなり使いがちですが、苦情に応対するときに使ってしまうと、相手から「何だこの人!」と悪い印象を持たれてしまう言葉があります。
次のような言葉は、封印してください。
ア 「D」ワード
「D」で始まる言葉です。相手を否定しているように思われてしまいます。
また、反論する感じにもなってしまうので、控えるべきです。
NG例:「ですが」「でも」「どうせ」「ですから」「だから」「どうしても」「どうしたら…」
イ 曖昧表現
表現が曖昧だと、責任転嫁だと思われてしまいます。事実関係を整理したり、対応を考えたりといった思考している最中に使いがちなので、注意してください。
NG例:「たぶんですが…」「とりあえず○○します」「おそらくですが…」「~と思います」
ウ 否定のフレーズ
相手を否定するフレーズは絶対やめるべきです。一気に関係が悪化します。反論したくなる気持ちがあっても、その場ではぐっと抑えてください。そして、相手の言い分をメモするなど、後の材料とするために残しておきましょう。
NG例:「それは違います」「お母さんの思い違いです」「間違いです」「絶対ないです」「それはそうですが…」
エ 言い訳のフレーズ
以下のような、対応者の人間性が見えてこない形式通りの返答は、言い訳として聞こえます。型どおりのことしかやらない、責任逃れだと思われがちです。ぐっと印象が悪くなります。
NG例:「うちのクラスにも事情があるのです」「学校の方針です!」「そういうきまりなのです」「わたしの担当ではないので…」
オ 不安喚起のフレーズ
オドオドした頼りない感じを出してしまうと、相手の信頼感を損ない、イライラさせてしまう要因にもなります。学校全体の信用にも関わってきますので、避けてください。
NG例:「ちょっとわからないです」「そんなことをおっしゃられても…」「では、どうすればいいんですか?」「ええ、ああ…」「学校としても困るんです」
②NG対応を避ける
ア 30秒以上保留してしまう
ほぼほぼストレスを感じないで待てるのが30秒と言われています。
それ以上かかるようでしたら、一旦電話を切ってかけ直すようにしたいです。
OK例:「調べますので、一旦電話を切らせていただき折り返しますので、よろしくお願いいたします」「少々お時間をいただきますので、コールバックはお母さんの携帯でよろしいでしょうか」
イ お詫びの言葉が軽い
つい焦って、お詫びの言葉を言いたくなるのは分かります。しかし、例えば「すみません」「すみません」などと会話の端々で連呼したりすると、相手からは早く電話を終わらせたいんだ、解決する気がないんだ、と思われてしまいます。落ち着いて相手の話を聞き、謝罪の言葉はしっかりと。
OK例:「心よりお詫びいたします」「教えていただきありがとうございます」
ウ 疑いの気持ちを匂わせてしまう
相手を疑うような表現は避けたいです。「それって本当ですか?」「○○くんがそう言ったのですか?」などですね。次のように言い換えましょう。
OK例:「そうなんですね」「わかります」「なるほど」
エ その場で反論、無理に説得しようとする
相手の申立てに「そこまでの責任はない」「そんな要求は無理だ」と思うことは、しばしばあります。往々にして、相手はヒートアップしています。そのため、その場で反論したり、無理に説得しようとしても、相手からは拒絶されたとか、責任逃れをしている、などと思われることも多いです。
まずはクールダウンの時間を設けることも効果的です。
OK例:「あらためて管理職と相談してからご連絡いたします」「校内で検討いたしますので、ちょっと預からせていただけますか」
オ 専門用語・カタカタを使う
教育業界での専門用語や英語、およびカタカナ英語などを使うと、相手は馬鹿にされたと不快に感じます。必ず、日常でよく使われる言葉だけを使い、易しく説明しましょう。
3 お叱りの電話応対・5つのステップ
お叱りの電話を受けると、緊張のあまり慌てたりして、不躾な対応になったりします。
冷静であること、丁寧で落ち着いていることが必須です。次の5つのステップで、うまく切り抜けたいです。
ステップ① 限定的な謝罪の言葉
相手は不快感を持って電話してきています。まずは、その不快感に対するお見舞いの気持ちで、限定的な謝罪をすると話がうまく進みます。
「ご心配をおかけして、たいへん申し訳ございません」
「ご不快な思いをさせてしまいまして、お詫び申し上げます」
「お電話をいただきまして、恐縮です」
ステップ② 傾聴する
まずは相手の主張を一通り聞きます。後で細かく確認するためにも、まずはメモを取りながら相手の話を遮らずに聞きましょう。そうすることで、相手の心を早く開かせることができます。
「はい、そうなんですね」
「ごもっともです」
ステップ③ 事実関係を細かく確認
相手の話がひととおり終わったら、整理をしていきます。
最初にとったメモをもとにしながら、申立ての事実関係を5W1Hで整理します。
When(いつ)
Where(どこで)
Who(だれが)
What(なにを)
Why(なぜ)
How(どのように)
さらに! もし金銭問題がからんでいる場合
How much(いくら)
How many(どのくらいの量)
も加えましょう。
「お母さん、恐れ入りますが、お話を整理させていただきますね」
と言いながら、メモをもとに丁寧に一つ一つ確認していきます。 相手を否定しないで、相手の申立て通りに確認していただきます。
ステップ④ 説明や提案をする
申立ての内容から、自分が対応できることを明言したり、説明したりします。調査や確認などが必要な場合は、その提案を行います。
「わたしがよく見ていなかったようです。すぐに二人からしっかり話を聞いて指導していきたいです。また電話させていただきます」
などですね。
また、相手に対して「~していただけますでしょうか?」
と言い、対応について了解をとるようにしていきます。
ステップ⑤ マジカルフレーズで電話を切る
心を込めて、電話をいただいたことにお礼をします。
最後は相手の心を和らげるマジカルフレーズで締めくくりましょう。学校に責任がなかったり、学校として対応ができない場合であってもです。
○「本日は、貴重なご意見をお聞かせいただき、本当にありがとうございました」
○「たいへん不安なお気持ちにさせてしまい、申し訳ありませんでした」
○「この度は、わたしが把握していないことについて、教えていただきありがとうございました」
○「至らなかった点について心よりお詫び申し上げます。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
ステップ⑥ 必ず報告しよう
そして最後にもうひと仕事です。
クレームの電話を受けたら、例え些細だと思われるようなことでも、学年主任、生徒指導主任、管理職に報告しましょう。一見沈静化したトラブルが、後で思わぬ再燃をすることは、ままあるからです。
もちろん、電話後に何らかの対応をする必要があった場合は、その内容についても、上司と確認・検討してください。
ネガティブなことこそ、教員みんなで共有しましょう。みんなで対応できる環境づくりが、安心な職場を作ります。
◆
「モンスターペアレント」という言葉が一人歩きしてしまいましたが、保護者は敵対者では決して有りません。教職員と力を合わせて児童を育てていく、チームメイトのはずです。それが、ボタンの掛け違いでおかしな関係性になってしまうことが多いのです。ちょっとした心構えがわたしたち教職員にあれば、さらに強い絆で結ばれたチームメイトになっていくことでしょう。それぞれのポイントを押さえながら進めていきたいです。
>>こちらもご覧ください!
・できてますか? 大人の電話応対~小学校教員のための、恥をかかない電話術~
・その敬語、正しいですか? 小学校教員のための、大人の言葉遣い&仕草
イラスト/したらみ
【参考図書】
直井みずほ監修『電話応対これができればOKです』(ナツメ社)
松本昌子監修『電話応対はこわくない!』(池田書店)
大部美知子『ゼロから教えて電話応対』(かんき出版)
尾形圭子監修『電話応対&敬語・話し方のビジネスマナー』(西東社)
『さすがと言われるビジネスマナー完全版』(高橋書店)
こんな問題を抱えているよ、こんな悩みがあるよ、と言う方のメッセージをお待ちしています!
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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、様々な分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、様々な資格にも挑戦しているところです。