業務改善、長時間勤務の解消、給特法見直し… これまでの成果と今後に向けての課題【連続企画「学校の働き方改革」その現在地と未来 #00】

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「学校の働き方改革」その現在地と未来
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近年、国と自治体、そして全国の学校現場で進められてきた「学校の働き方改革」の取組。ICT導入による業務の効率化や「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法(給特法)」改正などの前進はあったものの、教員の過酷な勤務実態は依然として改善されていないのが実態である。「学校の働き方改革」の成果と課題を、識者インタビューと事例レポートにより解説していく。

「学校の働き方改革」議論の始まりと経緯

「学校の働き方改革」の議論が本格化したのは2017年のこと。同年4月に公表された、文部科学省の「教員勤務実態調査(2016年度)」の結果(速報値)において、月に80時間以上という「過労死ライン」を越える時間外労働を行っている教員が小学校で約3割、中学校で約6割におよぶなど、教員の過酷な勤務実態が明らかにされたことがきっかけだった。

こうした状況を受けて、文部科学省では同年7月に中央教育審議会「学校における働き方改革特別部会」を設置し、教員の労働環境改善に向けての議論を開始。2019年1月には「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」が出され、「勤務時間管理と健康管理の徹底」「学校及び教師が担う業務の明確化・適正化」「学校組織の効率的な運営」などの方策を提言。同年12月には、1年単位での「変形労働時間制」の導入や「業務量の適切な管理等に関する指針の策定」を定めた「改正給特法」が成立した。

この間、各教育委員会や学校現場でも、様々な形での「働き方改革」の取組が行われてきた。会議の精選や事務作業の効率化、部活指導の見直し、外部人材の活用…。さらには2020年からのコロナ禍で前倒し整備となった「GIGAスクール構想」による「1人1台端末」環境の実現で、校務や授業のICT化が一気に進むこととなった。

改革はまだ道半ば。「給特法」の動向にも注目

では、こうした改善の取組はどのような成果を上げてきたのか。2022年に6年ぶりに行われた「教員勤務実態調査」では、小・中学校ともに1日の在校等時間などには一定の改善が見られたものの、持ち帰り業務の時間が増加するなど、劇的な状況改善に至ってはいない実態が見てとれる。現場の実感としても「一部は改善しているが、現実はまだまだ厳しい」というあたりが本音ではないだろうか。

教員の勤務実態の過酷さが広く世間に知られることで、教員志望の若者が減少するという影響も出ている。教員のなり手不足は、現職教員の負担をさらに重くするばかりか、将来の教育の質確保という点でも大きな課題である。教員という仕事に対するポジティブなイメージをどのように醸成していくかも、「学校の働き方改革」の重要なテーマといえる。

そして今後は、「給特法」の見直しについての議論が本格化する。5月には、現在4%の教職調整額を「少なくとも10%以上に引き上げる」という自民党案が出されたが、これでは現状の「定額働かせ放題」の実態は変わらないとの批判もある。教員の働き方の「根源」である給特法をどれだけ抜本的に見直すことができるのか。今後の議論を注視したい。

構成・文/葛原武史(カラビナ)

参考資料
中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」
文部科学省「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法の一部を改正する法律」

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