学校を変えるには?【伸びる教師 伸びない教師 第32回】

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学校を変えるには?【伸びる教師 伸びない教師 第32回】

豊富な経験によって培った視点で捉えた、伸びる教師と伸びない教師の違いを具体的な場面を通してお届けする人気連載。今回のテーマは、「学校を変えるには?」です。学校を変えるには教師集団の力が大きく作用し、その教師集団には教師集団に影響を与える教師が存在します。その教師の共通点は「情熱」「謙虚さ」「人間力」などをもち、何よりも自分のやるべきことをきちんとこなすことです。

執筆
平塚昭仁(ひらつか・あきひと)

栃木県公立小学校校長。
2008年に体育科教科担任として宇都宮大学教育学部附属小学校に赴任。体育方法研究会会長。運動が苦手な子も体育が好きになる授業づくりに取り組む。2018年度から2年間、同校副校長を務める。2020年度から現職。主著『新任教師のしごと 体育科授業の基礎基本』(小学館)。

伸びる教師は自分の役割をきちんとこなすことで学校を変え、伸びない教師ははじめから学校全体を変えようとする

教師集団の力が学校を変える

「校長が学校を変える」といった言葉をよく耳にします。

確かに、学校を変えるには校長の力が大きいことは間違いありませんが、その学校の教師が自ら学校を変えている状況を何度も目にしてきました。

私はむしろ、校長より教師集団の力のほうが学校を変える力は強いと思います。教師集団の中には、他の教師に影響力があるリーダー的存在がいます。私の経験からすると影響力がある教師に年齢は関係ないと思っています。

影響力がある教師にはいくつかの特徴があります。

ひとつは、情熱をもっていることです。

ある学校の教師集団は、年齢層が高く、それぞれの教師が力をもっていたので大きな問題がなく穏やかな学校でした。しかし、新しいことにチャレンジする雰囲気はありませんでした。そこに、若手の教師が異動してきました。

その教師は、年配の教師が雑用や力仕事をしていると、「それは私がやります」とその教師の代わりに仕事をしていました。また、日々の教材研究で分からないことはすぐに周りの教師に聞き、アドバイスを受けたことを素直に実践していました。

研究授業を誰が実践するかを決める場面では、「私にやらせてください。勉強します」とすぐに立候補し、積極的に引き受けていました。この若手の教師は、「6年生の子供たちがこんなことを考えたのですが、学校全体でこんなことをしてもよいですか」と新しい提案も多くしました。

こうした若手教師のまっすぐな情熱が周りの教師の心にも火をつけ、学校全体が活気づいていきました。

学校に影響力がある教師の共通点は「謙虚さ」「人間力」

もうひとつは、謙虚さがあるということです。

あるベテランの教師の授業は、対話を大切にしていて、子供たちが真剣に話し合い、結論を出していくスタイルでした。授業中の子供たちはとても生き生きと自分の意見を述べていて、誰もが憧れる授業でした。そうした授業の背景には、毎日遅くまで教材研究をしているベテラン教師の姿がありました。しかし、自分がしていることを誰かに押し付けたり自慢したりすることはなく、後ろ姿でみんなを引っ張っていく謙虚さがありました。

そんな姿に感化され、若手からベテランまでその学校の教師全員が子供たちのためによい授業をしようという雰囲気に包まれていました。

さらにもうひとつは人間力があるということです。

ある学校では、研究主任がいくらよい提案をしても、研究に後ろ向きな教師からできない理由を並べ立てられ、実行することが難しい状況にありました。しかし、ある中堅の教師が研究主任となりその状況は一変しました。その教師が提案すると、難しいと思われるようなことでもすんなり通ってしまいました。

その教師は、先輩の言葉は否定することなく受け入れ、実践した上で難しかった点を伝えたり、後輩に対しては自分のことは後回しにして相談に乗ったりするなど、どの教師ともよい関係を保っていました。また、その教師から同僚の悪口を聞いたことはありませんでした。

むしろ、うまくいっていない教師に対しては「なんとかしてあげたい」とフォローの言葉を発していました。

「あの人が言うならついて行こう」という雰囲気が学校全体に流れ、研究に向かう教師たちの姿勢が変わっていきました。

学校を変えるには自分のやるべきことから

 学校を変える影響力がある教師には、他の教師をやる気にさせる「何か」があります。もちろん、この「何か」は、さきに挙げた三つだけではなく、その教師の「もち味」によって無数にあると考えます。

また、そうした教師には共通する点もあります。

それは、自分の役割をきちんと果たしているということです。学級担任であれば自分の学級を安定させている、校務分掌の担当であれば計画から実践まで抜けがないなど、自分のやるべきことをきっちりこなしています。

以前、自分の学級が落ち着いていないのに、学校全体のあいさつの声が小さいと、毎朝昇降口に立ち子供たちに大きな声であいさつをしている教師がいました。「学校全体のあいさつをよくしたいのであれば、まずは、自分の学級のあいさつを学校一番にし、そこから学校全体に広めていけばもっと効果的なのに」と思ったことがありました。まずは、自分の学級を変える。そうすることで周りの信頼も高まります。

学校を変える影響力のある教師は、はじめから「学校を変えてやろう」という思いの人は少ないと感じます。

「目の前の子供をなんとかできるようにさせたい」

そんな気持ちでがむしゃらにがんばっている姿が子供を変え、保護者を変え、周りの教師を変え、結果として学校が変わっていくのだと思います。

構成/浅原孝子 イラスト/いさやまようこ

※第16回以前は、『教育技術小五小六』に掲載されていました。

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