小5 国語科「作家で広げるわたしたちの読書」板書例&全時間の指導アイデア

特集
1人1台端末時代の「教科指導のヒントとアイデア」

文部科学省教科調査官の監修のもと、小5国語科「作家で広げるわたしたちの読書」(光村図書)の板書例、教師の発問、想定される子供の発言、1人1台端末活用のポイント等を示した全時間の授業実践例を紹介します。

小五 国語科 教材名:作家で広げるわたしたちの読書(光村図書・国語 五)

監修/文部科学省教科調査官・大塚健太郎
編集委員/神奈川県横浜市立東汲沢小学校校長・丹羽正昇
執筆/神奈川県横浜市立川上小学校・佐藤勇介

1. 単元で身に付けたい資質・能力

本単元は、子供が読書に親しみ、読書が自分の考えを広げることに役立つことに気付くことをねらいとしている単元です。
今回は特に、作家に着目して本を読み広げる方法を提案し、これからの読書の楽しみ方の幅を広げ、子供が日常生活において主体的・継続的に読書に親しむ態度を育てることを目指しています。

子供たちが自分で読み広げたい作家を選び、その作家や作品の魅力について、文章を読んで考えたことや理解したことをもとにまとめながら、改めて読書の楽しさを実感し、これからの読書につなげられるようにしていきます。

2. 単元の評価規準

単元の評価規準

3. 言語活動とその特徴

本単元では、作家に着目して本を読み広げ、自分が選んだ作家やその作品の特徴や魅力について考えをまとめるという言語活動を設定しました。

子供の中には、好きな作家やシリーズがあるという子もいれば、まだ作家を意識して読んだことがないという子も多くいるはずです。ここでは、自分のこれまでの読書経験を振り返った上で、自分が読み広げたい作家を選び、作品を読み比べながら内容や特長を整理し、その作家や作品の魅力について自分なりに考えを「お気に入り作家カード」にまとめていきます。

作成したカードをお互いに紹介し合い、タブレット端末上でデータ共有するなど、作家を意識して読み広げるという方法が子供たち一人一人の読書生活をデザインしていく一つの選択肢になることを願って、この言語活動を設定しています。

4. 指導のアイデア

〈主体的な学び〉1)自分のこれまでの読書活動を振り返り、単元につなげる

本単元においては、自分の読書生活をより充実したものにしていくことが大きな目的意識になります。
そのためには、これまでの自分の読書がどのようなものだったのかを具体的に振り返り、自覚することが大切です。

既習の単元「図書館を使いこなそう」で日本十進分類法を活用する方法を学んでいますので、その分類を意識して記入した「読書記録カード」や、それらを整理したものをもとに、自分のこれまでの読書活動を振り返ることができるようにしておきます。

「自分は作者を意識して本を選んだことはなかった」「好きな作者はいたけど、理由までは考えたことがなかった」など、これまでの自分の読書について自覚することは、これからの読書活動を充実させるという主体的な学びにつながるはずです。

〇「読書記録カード」の例
紙ベースのものは、ファイルなどに書きためていきます。

「読書記録カード」の例

「読書記録カード」は、タブレット端末の機能を活用し、データとして蓄積していくことも有効です。その際、分類ごとに色分けしたり、表に整理したりすることも考えられます。
※下の「1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント」で後述します。

〈主体的な学び〉2)読み広げたい作家、作品を自分で選ぶ

「教科書に載っているから読もう」とするのではなく、読み広げたい作家や作品を自分で選ぶことは、子供の主体的な学びにつながります。

すでにお気に入りの作家がいるという子はもちろんですが、作家を意識していなかったとしても、お気に入りの本があるという子はいるはずです。これまでの読書記録を振り返り、心に残った本やお気に入りの本の作者を選ぶよう促してみましょう。

また、なかなか自分では探せないという子供がいることも考え、子供たちの読書経験や発達段階に応じた作品をあらかじめ用意しておく必要があります。
学校図書館司書とも相談し、ある程度テーマが限られる作者の作品や、一定時間を確保することで多読ができる長さの短編作品など、作家で読み広げるという活動につながりやすいものを用意しましょう。その際、児童の実態に応じて、低学年や中学年向けの本を用意しておくことも有効でしょう。

〈対話的な学び〉 読書を通じて行われる対話・作者と読者による双方向の営みを価値付ける

この単元では、自分が選んだ作家はどんな作家と言えるのか、作品の特長や魅力はどこにあるのか、一人一人が考えを整理していきます。

選んだ作家が同じ友達がいれば、その友達との対話の必然性が生まれます。しかし、必ずしもクラスに自分と同じ作家を選ぶ子がいるとは限りません。その際大切にしたいのが、読書を通じての作者との対話であり、自分との対話です。

子供たちは小説など、物語を読むことで、登場人物と自分自身を重ねたり、印象的な場面を反芻しつつ自分の経験を重ねたりします。
また、物語の主題について考えを巡らせることもあるでしょう。そこで行われるのが、読書における自己内対話であり、作者との対話です。物語を通して作者は何を語っているのか、主題に迫ろうとする姿も対話と言えるでしょう。作者と読者の双方向の対話として、物語に没頭して考えを整理しようとしている姿を価値付けてあげましょう。

〈深い学び〉 単元での学びや変容を自覚し、今後の読書活動につなげる

深い学びを実現するためには、一人一人がその時間誰と、どのような言葉のやりとりをしたことで、どのような学びがあったのか、自分の考えがどのように変容していったのかを自覚することが大切です。

自分が選んだ作家の作品について整理する過程で、作家や自分自身、友達と対話を重ねる中で、何を考えたか、どのような発見があったかなど、「読書生活シート」に毎時間の学びを具体的に書くように促しましょう。

また、単元の最後には、「作家で読み広げる読書」の仕方について自分の言葉で考えを書いたり述べたりすることも大切にしたいものです。
国語科としての学びの自覚が、今後の読書活動に結び付くようにしていきます。今後読んでみたい作家や友達におすすめしたい作家などについて考え、夏休みに向けて具体的な読書計画を立てるのもいいでしょう。

5. 1人1台端末活用の位置付けと指導のポイント

(1)読書記録を含む自分の読書活動に関わるものをデータで蓄積していく

読書活動の充実は、一つの単元だけで望めるものではありません。どのような本と出会い、どのような感動を得たか、どのような知識を得たかなど、年間を通して積み重ねていくことを大切にしたいです。

日々の読書記録を紙ベースで蓄積していくこともできますが、タブレット端末の機能を使って、一つのシートに自分の読書に関わる情報や思い、学びを蓄積していく方法が考えられます。

ここでは、このシートを「読書生活シート」と名付けています。

「読書生活シート」には主な項目として、

① 年間のめあて(※どのように本と関わりたいか)
② 振り返り
③ 読書記録
(※分類整理)
④ 読書計画

などを設け、これらは子供がタブレット端末上でデータとして随時更新できるようになっています。

従来の読書記録を一人一人の年間のめあてや、日々の読書計画と連動させることが大きなポイントです。

②の「振り返り」には、国語科の授業を通して、読書に関する学びを得られたときに、各自それを言葉で残しておくように促します。「○○に注目すると、作者の思いに迫ることができることが分かった」「登場人物同士の関係の変化を意識することで、物語の魅力をより感じられた」など、国語科での学びが、日常の読書活動の充実に結び付くことを理想にしています。

また、学んだからこそ、次に読みたい本が決まったり、変わったりする場合もあるはずです。
「常に読みたい本がある」ことは、読書活動の充実につながります。今後読みたいと思っている本も④の「読書計画」として残しておけるようにしています。

タブレット端末の検索機能を活用することで、自分がこれまで読んだ本やその表紙を検索したり、作者についての情報を集めたりすることもできます。

2月に学習する単元「この本、おすすめします」で推薦する本を選ぶ際にも活用できます。

<読書生活シート例>

読書生活シート例

(2)多様なシンキングツールから選び、考えを整理する。

子供は自分が選んだ作家やその作品の魅力や特長を「お気に入り作家カード」にまとめるという目的意識のもと、主に2時間目から4時間目に、選んだ作家の作品について、自分なりに共通点や特長を整理し、魅力について考えをもつことを目指します。

ここで注意したいのが、教師が「共通点を整理しよう」と言っても、どのようにまとめたらよいか分からない子がいるということです。そのために複数のシンキングツールやその使い方を提示し、子供が自分にあったものを選べるようにしていきます。

マトリックス図、ベン図、イメージマップなどは、それぞれ便利なものではありますが、シンキングツールを使うことが目的にならないように気を付けます。ここでは、自分が選んだ作家やその作品を読み、「お気に入り作家カード」を書くという目的が共有されているのがポイントです。

また、1人1台端末の共有機能を活用することで、子供同士、誰がどのような方法で整理しているのかを確認したり、何を魅力や特長と捉えているのかを意識しながら学習を進めたりすることもできます。必要に応じて子供同士の自然な対話が生まれることも期待できます。

(3)「お気に入り作家カード」の作成と共有

子供は自分が選んだ作家やその作品の特長や魅力を整理できてきたら、それを「紹介したい」と思うはずです。そこで、「お気に入り作家カード」を作成し、それをもとに友達同士で紹介し合えるようにします。

作ったカードは、タブレット端末の共有機能を使い、「お気に入りの作家一覧」のフォルダの中でいつでも更新したり、互いのおすすめの作家をチェックしたりできるようにしておきます。
ここで作成した「お気に入り作家カード」が、今後本を選ぶ際の一つの選択肢になることが期待できます。

※「お気に入り作家カード」の詳細は4時間目に記載。

6. 単元の展開(5時間扱い)

 単元名: 読書の世界を広げよう ~作家編~

【主な学習活動】
・第一次(1時
① これまでの自分の本の選び方や読んできた本の傾向などを振り返る。作家に着目して本を読み広げるという方法に関心をもち、学習計画を立てる。〈主体的な学び〉〈 端末活用(1)〉

・第二次(2時3時4時
②③ 自分が読み広げたい作家を選ぶ。選んだ作家の複数の作品を読み比べ、共通点や特長、魅力について考えたり整理したりする。〈対話的な学び〉〈 端末活用(2)〉
④ 整理してきたことをもとに、「お気に入り作家カード」を記入する。〈 端末活用(3)〉

・第三次(5時
⑤ 単元での学びを整理したり、作家で読み広げることについての自分の考えをまとめたりする。今後の自分の読書計画を立てる。〈深い学び〉

板書例と全時間の指導アイデア

【1時間目の板書例 】

1時間目の板書例
「主体的な学び」のために

単元の導入として、これまでの自分の読書経験を振り返ったり、そこで気付いたことを友達と話したりします。どのような分類の本を多く読んできたか、好きなジャンルや作家の有無なども含め、自分なりに読書の傾向を自覚できるようにしていきます。

そのためにも、日々の読書記録を活用して(端末機器の活用も視野に入れ)データで管理できるようにしておくと便利です。(教科書には「この本、おすすめします」という本の推薦を意識した単元もありますので、この単元をきっかけに読書記録などに取り組んでみてもよいかもしれません。)

本を選ぶときに意識していることについても含め、自分自身の読書を振り返りながら、読書の幅を広げる一つの選択肢として「作家で読み広げる」とはどのようなことなのか、この時間でイメージを共有していきます。

<端末における読書記録の活用例>

〜 Aさんの場合 〜

ぼくは4類の「自然・科学」を多く読んでいます。9類は国語以外では読んでいません。好きな作家も考えたことがありませんでした。

端末における読書記録の活用例 〜 Aさんの場合 〜

イラスト/横井智美

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