「パーフェクトチャレンジ&熟語チャレンジ」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#5

連載
自治的な学級をつくる12か月のアイデア

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
連載「自治的な学級をつくる12か月のアイデア」執筆/鈴木優太

子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第5回は、テストでのひと工夫「パーフェクトチャレンジ&熟語チャレンジ」です。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

栄光のトロフィーに名を刻む「パーフェクトチャレンジ」

テスト時間は、黒板に黄色のチョークで、「栄光のトロフィー」(簡単なトロフィーの形)を書きます。そして、「満点だと歴史に名を刻めます」と宣言します。「パーフェクトチャレンジ」のスタートです。

「パーフェクトチャレンジ」で満点だった者だけが、この「栄光のトロフィー」に名前を書ける(名前マグネットを貼れる)。
「パーフェクトチャレンジ」で満点だった者だけが、この「栄光のトロフィー」に名前を書ける(名前マグネットを貼れる)。

【「パーフェクトチャレンジ」の進め方】
①早く解き終えたら、見直し→解き直し→指で隠して「書き直し」をする。
②満点の自信がある場合のみ、一足早い採点に挑む。
③表裏満点だと、黒板に描いた「栄光のトロフィー」に名を刻める。
 ※「名前マグネット」を貼るのがおすすめ。

標準実施時間が記載されている業者のテストを採用している場合は、悩まずこの時間で行います。概ね30分前後です。この時間よりも早く終わった子が、「パーフェクトチャレンジ」の対象者です。つまり、理解力と速記力のある子たちです。

一方で、せっかちなためにうっかりミスが多いという特徴もあります。このような子たちのうっかりミスは、目で見るだけの見直し、頭で考えるだけの解き直しでは、なかなか改善されません。そのため、書いた答えを指で隠し、解答欄の横にもう一度「書き直し」する学び方を推奨していきます。惜しまず手を動かす超アナログな学び方ですが、ペーパーテストにおける学力向上に大変効果的です。

中学校からは問題数が多くなります。そのため、「書き直し」を全問行うことは、中学校以降のテストにおける学び方につながらないのではと考える方もいるでしょう。しかし、それは違います。小学校の単元テストで「書き直し」まで行う「パーフェクトチャレンジ」を継続することで、粘り強く学ぶ学習体力が養われます。長時間高い集中力を維持しながらスピーディに解答を書くことができる力は、一朝一夕では身に付きません。小学校段階で継続することで、目で見る見直し、頭で考える解き直しの精度も上がり、短時間でよりよい判断ができるようになるのです。

45分間の授業時間内に採点と直しまで行うため、教師の採点の仕方も工夫が必要です。教室の後方で教師と子供が真横に並ぶ「横並び型」で行いましょう。答案用紙を見つめる子供と一緒に、間違い箇所だけを素早くチェックします。丸は後から付けます。

満点だった子と教師は、固い握手(またはグータッチ)を交わします。これがとってもうれしいようです。そして、「栄光のトロフィー」に名前マグネットを貼ります。早く終わった子たちのうっかりミスが減るようにと始めた手立てですが、テストを楽しみにする子供たちがみるみる増えていきました。

列に並ぶ子供たちはテスト時間の静けさを保つように心がけ、息を潜めるようにしゃがんで待ちます。タイマーが鳴ったら全員分のテストを回収し、教師は間違い箇所のチェックを早急に行います。この間、子供たちは自席で静かに自学に取り組みます。採点を終えたら、全員分のテストを一旦返却し、間違いがあった子は、赤鉛筆で直します。テスト中は「無言」、テスト返却後は「学力が伸びる対話はどんどん行う」ことにしています。

直したテストは再び全員分回収します。丸はこのときに付けます。極力その日のうちに得点の記録をして返却までできるように、1校時か2校時にテストの時間を設定しましょう。

テストの解答欄外に熟語を書く「熟語チャレンジ」

漢字小テストに取り組む子供

漢字テストは、「熟語チャレンジ」に取り組みます。「読める」→「書ける」→「使いこなせる」ことが、漢字の習得では重要です。

漢字テストを早く終えたら、「書ける」と「使いこなせる」のどちらを強化するか自己選択します。テストの残り時間いっぱいまで、漢字テストの解答欄外に漢字を書き続けます。

●「書ける」を強化……「パーフェクトチャレンジ」と同じように、見直し→解き直し→指で隠して「書き直し」をする。

●「使いこなせる」を強化……「熟語チャレンジ」をする。

【「熟語チャレンジ」の進め方】
①テストの漢字を使った熟語を解答欄外に書く。
②満点を取れた場合のみ、書けた熟語の数+1点となる。
(テストにある漢字を書き直したものは+1点にはならない)
 例:満点で8個の熟語を書けたら、「100点+8点」となる。
 例:10問の小テストで1問間違いがあったら、8個の熟語を書けていても90点となる。

※「熟語チャレンジ」は、土居正博先生の著書『クラス全員が熱心に取り組む!漢字指導法ー学習活動アイデア&指導技術ー(明治図書出版)の「テスト熟語だらけ」を参照し、アレンジした実践です。

熟語チャレンジで+10点を獲得した漢字小テスト

10問の小テストは5分間、50問テストは15分間などと時間を限定して行います。この時間よりも早く終わった子が、「熟語チャレンジ」の対象者です。

子供たちは、タイマーが鳴るギリギリまで漢字を書くようになります。テスト時間なのに、漢字練習の様相です。普段から熟語に関心をもち、日常の漢字学習の取組が変わります。また、様々な言葉を練習するので、語彙が豊かになります。熟語でいっぱいのテストやノートの実物は、本人の許可を得て「マグネットクリップ」「自治的な学級をつくる12か月のアイデア」#2参照)で貼り出すことで、学び合いや感化が促されて学級に広がります。

「満点が取れた場合のみ+〇点」というルールについては補足があります。満点でなくても書いた熟語の分だけ加点するという取り組み方もあるでしょう。現在は、私はそうはしていません。「まずは、テスト(の漢字を書けること)が大切!」という考え方を子供たちと共有するためです。

また、教師の採点量が増える実践です。「満点が取れた場合のみ」と割り切ることで、教師側の取組のハードルが低くなります。継続したことしか子供たちの本物の力にはなりません。子供たちがたくさんの熟語を書けるようになることは嬉しいものですが、教師も無理なく継続できることが大切なので、さらにもうひと工夫をお伝えします。

それは、教師だけが採点するのではなく、「自己採点」やABCペア(Aペア…隣の座席、Bペア…前後の座席、Cペア…斜めの座席)による「友達採点」を行うことです。書いてすぐに自分たちで採点するほうが、子供たちの意欲や漢字を書く力の向上につながります。二重チェックする形で教師が採点すると盤石です。

「パーフェクトチャレンジ」も「熟語チャレンジ」も、はじめは2割程度の早く終わった子たちが対象でした。しかし、継続していくと、3割・4割・5割…とチャレンジする子が増えていきます。チャレンジしなくても、時間いっぱいまでテストと向き合う子が増えていきます。理解力と速記力のある子たちの「学び方」が教室に広がると、日々の授業の熱量も高まっていく手応えを感じられるはずです。

テストに臨む意気込みや、凛とした緊張感は大切です。テストで点数が取れるようになると、子供たちが学ぶことに自信をもつからです。一方で、満点だけをよしとする完璧主義に陥ってしまうと子供も教師も苦しくなってしまいます。ほどほどの「遊び心」も大切に、テストをイベント化するひと工夫を子供たちと楽しみながら取り組んでいくのが秘訣です。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)

イラスト/高橋正輝、木村旨邦 写真/写真AC

【鈴木優太先生 連載】
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)

【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク

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