働き方改革【わかる!教育ニュース#26】
先生だったら知っておきたい、様々な教育ニュースについて解説します。連載第26回のテーマは「働き方改革」です。
目次
財政審分科会より「強制的にでも教員業務の適正化を進めるべき」との提案
多くの「仕事」を背負わされてきた学校の負担を軽くするには、もう強硬手段しかないのでしょうか。
「文部科学省・教育委員会が、強制的にでも教員の業務としない整理をするなど、踏み込んだ業務の適正化を進めるべきだ」。教員の勤務を巡って、4月下旬の財政制度等審議会(財政審)の分科会でそのような提案がありました(参照データ)。2022年度の文科省の調査結果を基に、「授業以外の時間が多くを占めている」「事務・会議や外部対応などの業務は相対的に負担感が高く、やりがいや重要度が低い」と問題視し、担わなくてよい「仕事」に追われる教員が多いと畳み込んだのです。
教員の業務を巡っては、19年の中央教育審議会の答申で「基本的に学校以外が担う」「必ずしも教員が担う必要がない」「負担軽減が可能」に分類し、役割分担や対応の見直しを促しました。
けれど文科省の調査で、本来の業務以外のことに追われる教員はいまだに少なくありません。財政審では過度の要求や学校事故にはスクールロイヤーを活用し、勤務時間外の対応は原則しないなどを、地域や保護者に伝えるといった工夫を紹介。「教員に過度の負担を負わせない取組を導入・展開することで、教員を保護する環境をつくるべきだ」と訴えました。
学校以外の主体の協力を得る必要のある取組には課題
現場に任せず、「上」から強制的に進めるという提案に、永岡桂子文科相は5月9日の閣議後会見で「一定の改善は見られている」と抗弁しつつも、「学校以外の主体の協力を得る必要のある取組には課題がある」と、歯切れ悪く答えています。結局、これからについても「働き方改革の推進を含め、中教審の検討に速やかに着手する。教育の質の向上に向け、働き方改革、処遇の改善、学校の指導運営体制の充実を一体的に進めたい」と語るにとどめました。
残業手当で報いては、という意見もあるでしょう。ただ教員の給与には、残業手当がないかわりに月額給与の4%相当を上乗せ支給する定めがあります。仕事の内容上、勤務時間の切り分けがしにくいためとされています。財政審はこの制度に加え、服務監督権限のある市町村が教員の給与を負担していないため、「働き方改革を進めるインセンティブがわきにくい構造だ」と分析。残業手当を払う仕組みにしても、むしろ長時間労働を招くとも見ています。
そもそも、いつまで経っても人手が足りず、やむをえず長時間労働になる教員が絶えないのは、本来、する必要のない「仕事」をさせられているからです。しなくてよいことでもしないと貫けない何かが、どの学校にもあるのでしょうか。
「強制的に」という言葉は乱暴ですが、人やお金を存分につぎ込めない中、打開策の一つは、しなくてよいはずの「仕事」を、本来担うべきところに渡すことです。本腰を入れて臨まなければ、学校が疲弊していき、教育そのものが立ちいかなくなります。
参照データ
▽財務省
https://www.mext.go.jp/content/20230419-mxt_kyoiku02_000029047_02.pdf
【わかる! 教育ニュース】次回は、6月15日公開予定です。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子