修学旅行や宿泊的行事でのひと工夫! 時刻とやるべきことを視覚化しよう
高学年では、修学旅行や臨海学校、林間学校などの宿泊的行事があります。当然、時程通りに活動するのが難しい子どももいます。先を見通して何をするのかを考えて行動することが、子どもにとって負担が大きいこともあります。そこで今回は、子どもが安心して活動できるための工夫を紹介します。
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
1.置き時計を各部屋に1つ用意する
一般的な宿舎やホテルは、客室に目立つ時計を置いていない場合が多いです。地域や宿泊先によって違うかと思いますが、私は21年間の教師経験の中で、部屋に時計があったことがありません。
だから、宿泊先では、生活班の時計係の管理する“腕時計”だけが頼りです。
腕時計は小さいので、時計係の当人以外は近寄って見ないと、時刻を確認できません。時刻を確認するために子ども同士が近寄ることで、騒がしくなったり、トラブルにつながったりします。
そこで、下見で宿泊先の部屋に時計がないと分かれば、置き時計を各部屋分、持って行くことをおすすめします。100均の置き時計で十分です。
置時計なら、わざわざ近寄って見なくても、すぐに時刻を確認できます。なお、アラーム機能は使わないことを言っておきます。
2.時程表を3つ用意する
宿泊的行事は、普段の学校生活と違う時程で、次々と活動があります。当日までに、時程を何度も確認します。1か月ほど前から、教室前の廊下にも、時程表を拡大印刷して掲示します。大まかな活動の内容と時刻は覚えさせてしまうぐらいの意識で臨むと、子どもたちは安心感をもって過ごせます。
しかし、それでも不安な子どももいます。そんな子どもたちからよく出る言葉は、
「先生、次、何するの?」
「ごはんは、何時から?」
「お風呂は、何時から?」
「何時に寝るの?」
「何時に起きるの?」
などです。
そんな子どもたちの質問に対して、若手教師だった頃は、
「先生に、聞くな!」
「しおりを見たら分かる!」
「しおりを見る!」
と叱ってばかりいました。
でも、そのしおりをリュックから取り出して、しおりのページをめくって時程表を確認するのが面倒くさいと感じる子どももいます。
そこで、時程表における3つの工夫を紹介します。
①しおりの表紙に時程表を印刷する
しおりの時程表のページを開くのを面倒くさがる子どももいます。表紙はイラストよりも、時程表にするのが実用的です。
味気なく感じるようでしたら、裏表紙や、表紙をめくった裏に時程表を印刷するのもいいかと思います。
②時程表の紙をポケットに入れておく
時程を確認するために、いちいちリュックからしおりを取り出すのは、大人でも面倒くさいものです。
そこで、しおりとは別に、時程表だけ印刷した紙を子ども一人一人に渡して、持たせるようにします。子どもが紛失した場合を考慮して、予備も少し持っていきましょう。
A4かB5サイズが、小さくて携帯しやすくなります。ディズニーランドやUSJなどのテーマパークのガイド用紙も、ポケットサイズですよね。
③宿舎の各部屋のドアに時程表を貼る
部屋では、友達同士で楽しい時間を1秒でも長く過ごしたいと思うのが、子どもの心理です。
きっと、しおりの冊子や携帯用の時程表の紙を取り出す時間すら、もったいないと思うことでしょう。
そこで、拡大印刷した時程表を、各部屋のドアなど、子どもに見やすいところに掲示するようにします。A3サイズが大きくて見やすいでしょう。店舗や公共施設のWi-Fi情報は、分かりやすいところに貼っておいてほしいですよね。それと同じですね。
3.「部屋でやること表」を掲示する
入浴や夕食などの前後の時間に、部屋で自由に過ごす時間があります。
学校では事前に、
「部屋では、まず、次の活動の時刻や服装などの用意を確認します」
「荷物の片付けをしておきます」
など指導します。
それでもつい、忘れて遊んでしまう子どももいます。そんな子どもたちに対して、若手教師だった頃は、各部屋をまわって、
「やる事やってない!」
「学校で先生、何て言ってた!?」
「まず、次の活動の準備!! 遊ぶのは後!!!」
などと叱ってばかりでした。部屋ごとに同じように叱ってまわって、疲れ果ててしまいました。
そこで今では、『部屋に戻ったらすること』を部屋の内側のドアなどに掲示するようにしています。A3サイズが大きくて見やすいのでおすすめです。
4.おまけ
部屋でしたい遊び
部屋でどう過ごせばいいか分からずに暴れたり、大声で叫んだりする子どももいます。他のお客さんがいたらとても迷惑です。
そこで、部屋でしたい遊びをいくつか学校で考えておきます。学校で、生活班(部屋ごとの友達同士)で遊ぶ体験を練習しておくのもおすすめです。
荷物に名前を
教師が子どもの部屋を見回ったとき、荷物の整理整頓ができていない場合があります。
「このカバン、誰の!?」
といちいち確認するのは、教師にとっても子どもにとっても、気持ちのよいものではありません。
そこで、カバンやナップザックの外に、学校と自分の名前を書いた布リボンを結びつけるようにしておきます。一目で誰の物か分かりやすくなります。
拙著『むずかしい学級の空気をかえる楽級経営』(東洋館出版社)も、ぜひ参考にしてみてくださいね。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ