「デジタル紙ペンゲーム」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#4
子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第4回は、梅雨の時期におすすめな「デジタル紙ペンゲーム」を取り上げます。
執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太
目次
雨の日の休み時間は「紙ペンゲーム」を楽しもう
紙とペンがあればできるゲームを総称して「紙ペンゲーム」と呼びます。
①必勝法がないから夢中になる!
勝つための定石や攻略法はあっても必勝法はありません。自分たちでルールをアレンジすることも簡単にできるため、思考力の向上に効果的です。
②仲良くなる!
複数人で楽しむことができます。協働や競争を通して、共に取り組んだ仲間との絆が深まります。
③1分間で決着がつく!
手軽に自分たちでできます。リトライのハードルが低いこともポイントです。
以上のような理由から、世界中の老若男女に親しまれてきたのが「紙ペンゲーム」です。「紙ペンゲーム」を子供たちに紹介しましょう。
梅雨の時期、校舎の中で過ごさなくてはいけない休み時間も多いものです。「紙ペンゲーム」には、雨の日の休み時間が楽しみになる、奥深い魅力があります。
1人1台端末を活用すると紙とペンの必要もなく、離れた相手とオンライン対戦することだってできます。「デジタル紙ペンゲーム」と私は呼んでいます。教室で絶大な人気を誇る『デジタルドット&ボックス』と『デジタルコネクトフォー』を紹介します。
劇的な決着が爽快『デジタル ドット&ボックス』
『ドット&ボックス』は、いわゆる陣取りゲームです。醍醐味は、「連続ポイント」(通称:連鎖)によるドラマティックな決着です。
今回は、Google Jamboardを活用した『デジタル ドット&ボックス』を紹介します。
※「Google Jamboard」とは、Googleが無料で提供するデジタルホワイトボード機能です。
※Google Jamboardは2024年12月31日にサービス終了します。
①4×4の点(ドット)を正方形の格子状に書きます。ペアで交互に点と点を結ぶ線を1本ずつ引いていきます(斜めは引けません)。ペンの色は1色でも問題ありません。
②正方形(ボックス)ができた人は、連続で線を引けます。正方形は全てが自分の引いた線である必要はありません。正方形の中に自分の名前の1文字を書き込みましょう。
正方形ができたときは連続で線が引けるため、「1連鎖! 2連鎖! 3連鎖!」とパズルゲームのように「連続ポイント」できる爽快感がやみつきになります。連鎖による大量失点を避けるために、あえて相手にポイントを取らせる、肉を切らせて骨を断つ作戦が有効な場合もあります。
③正方形を多く作れたほうの勝ちです。
私は、赤坂真二 編著『クラスを最高の雰囲気にする!目的別 学級&授業アイスブレイク50』(明治図書出版)の杉浦遼平先生の実践「ドット&ボックスゲーム」を参照し、教室で取り組んできました。
ミニホワイトボードを活用したり、アレンジルールを子供たちと開発したりしながら楽しんできました。
また、Google Jamboardによる『デジタル ドット&ボックス』は、オンラインによる全校集会で紹介したこともあります。校庭が使えない日の教室での過ごし方を啓発する話の中で、私と代表児童の対決を生配信しました。同僚の先生方からも好評です。
読み合いがクセになる『デジタル コネクトフォー』
『コネクトフォー』は、いわゆる四目並べです。醍醐味は、「読み合い」による予想外の決着です。
今回は、Google スプレッドシートを活用した『デジタル コネクトフォー』を紹介します。
※「Google スプレッドシート」とは、Google社が無料で提供する表計算ツールです。
①縦6×横7の方眼を準備します。行・列の幅を一括指定するだけです。
②方眼の一番下の段から、ペアで交互に1マスずつ色を塗ります。セルの塗りつぶし機能を使います。
方眼の一番下はどこでも自由に塗ることができますが、2段目より上は下のマスが塗られている場合のみ塗ることができます(元々は、垂直な箱にボールを落として積み上げていくゲームだからです)。
③縦・横・斜めのいずれかの4マスをそろえたほうの勝ちです。
私は、多賀一郎 監修/鈴木優太 編/チーム・ロケットスタート 著『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(ロケットスタートシリーズ)』(明治図書出版)の塚野駿平先生の実践「積み上げ四目並べ」を参照し、教室で取り組んできました。
手軽に体験してみたい場合は、第一学習社のウェブサイトから「お楽しみツール」の「四目並べ」を開いてみてください。仲間と対戦もできますし、CPU相手に1人で腕を磨くこともできます。
アレンジアイデアを考えよう!
『ドット&ボックス』と『コネクトフォー』に共通するアレンジアイデアを紹介します。子供たちと開発した選りすぐりの3つです。
①範囲を変える
『ドット&ボックス』は、3×3以上であれば、5×5や6×6などでもできます。
『コネクトフォー』は、方眼の許す限り範囲を広げたり、逆に狭めたりして行うことができます。凹凸を付けてみるのもおもしろいです。
②人数を変える
1対1だけではありません。2対2のダブルスや、3対3の6人タッグマッチも盛り上がります。
また、3人(1対1対1)での3つ巴戦や4者入り乱れてのバトルも白熱します。
③獲得ポイントを変える
『ドット&ボックス』は正方形の中に「+10」「×2」「-5」などの得点を書きます。この正方形を獲得したら得点がもらえて、得点の多かった人がチャンピオンです。正方形の数は少なかったのに、獲得したポイントが多くて逆転勝ちという展開が妙です。
『コネクトフォー』は、4マスをそろえた人が「+100」、その時点で色を塗っていたマスの1段目1マスに付き「+10」、2段目「-10」、3段目「+20」、4段目「-20」…などの得点を設定します。4マスをそろえたはずなのに、総得点で負けてしまうというドンデン返しも起こります。知的な駆け引きで盛り上がります。
元のルールがシンプルだからこそ、子供たちがこのようにアレンジすることが簡単にできるのです。世界中の老若男女に愛されてきた「紙ペンゲーム」の最大の魅力は、この「アレンジできる」という点に凝縮しているように私は感じています。「必勝法がない!」と断言できるのもこのためです。
『デジタル ドット&ボックス』と『デジタル コネクトフォー』にぜひ取り組んでみてください。Google JamboardやGoogle スプレッドシートの操作に慣れる点でもとても有用です。
ショートカットキーの「Ctrl+Z」(元に戻す)と「Ctrl+Y」(やり直し)を使うと、「感想戦」(開始から終了までを再現しながら、最善手などを検討する)を手軽に楽しむこともできます。勝負の決め手を仲間とワイワイと振り返るおもしろみも欠かせません。
自治的な学級の休み時間は、「デジタル紙ペンゲーム」で決まりです!
鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)など、著書多数。
参照/鈴木優太著『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太著『「日常アレンジ」大全』(明治図書出版)、鈴木優太編『学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク(ロケットスタートシリーズ) 』(明治図書出版)
イラスト/イラストAC
【鈴木優太先生 連載】
・子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
・どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)
【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク