多くの失敗をし、課題を指摘されてきたことが、授業改善の大きな契機【授業づくり&学級づくり「若いころに学んだこと・得たこと」第9回】
前回、佐藤昌寿教頭が30代の頃、授業を通して学級づくりを行うという考え方をもつようになった経験などを紹介しました。今回はその後、新潟市のマイスターに認定されるようになる過程などで学んだことや若手の先生方へのアドバイスを紹介していきます。
目次
マイスター養成塾で、徹底的に授業公開をして指導を受けた
前回、お話ししたような経験をした後、さらに授業づくりをブラッシュアップする契機になったのは、新潟市のマイスターに認定されるためのマイスター養成塾に参加したことです。その当時は(認定を受けるために)1年間に8回(うち専門教科は5回)指導案を書き、授業公開を行うことになっていました。それまでに、先にお話ししたような授業改善の方法をとってはいましたが、やはり変わりきれていなかったところもあり、実際にマイスター養成塾の指導者である先生に、以前指摘されていたことを改めて指摘されたこともありました。その際に具体的に、「もっとこうしたほうがいい」と指導していただいたこともあり、少しずつできなかったこともできるようになっていったと思います。
ただ、1年間に決められた8回の授業公開をするだけでは認定を受けられないのではないかと思い、自ら授業公開の回数を増やして10回以上の授業公開と指導案作成を行い、指導者の先生にも来ていただいて指導を受けました。そのようにして、毎月指導案を書き、授業公開をして、ふり返りのレポートも提出してと、たたみかけるようにやっていったことで、ずいぶんと授業が変わっていったと思います。
ちなみに、これらの授業についてもすべて文字起こしをやっていました。ただ、最初は全部を起こしていたのですが、次第に「今回は導入部分を」「次はまとめとふり返りを」というように、自分が課題意識をもっているところに絞り込んで文字起こししながら省察し、改善を図っていくようにしていきました。とても大変でしたが、この1年が自分自身の授業のいろいろなものをすべて変えてくれたと思っています。それまでも、自分で変えようとがんばってはいましたが、それだけでは限界がありました。自分一人では甘えが出てしまう部分もありますから、そういう意味では、意を決してマイスター養成塾に飛び込み、徹底的に授業公開をして指導を受けたことがよかったと思っています。
いろんな人に授業を見てもらうことで成長できる
こうした私自身の学びの過程をふり返って若い先生に伝えたいと思うのは、一人よがりにならないように、いろんな人に授業を見てもらうことで成長できるということです。授業は人と人とがつくり上げるものなので、人から見てもらうことが大事だと思います。
今、指導案を書いて授業公開することを嫌がる若手もいます。しかし、指導案を書いて授業をしっかりつくることが普段の授業づくりをすることに必ず生きてきますし、それを他者に見てもらって指導を受ける機会を増やすことで、自身の授業のレベルが必ず上がっていくものです。ですから、若い先生にはどんどん授業公開をしてほしいと思います。「やらされるからやる」のではなく、「自分の力を向上させるために」、そして何より「子供のために」やろう、と考えてほしいですね。
そして、そこで気付いた課題は、1回では絶対に変わらないので、日頃の授業で意識しながら繰り返し取り組むことが成長するために大事だと思います。さらに、それを定期的にいろんな方から見てもらうことが大事です。特に日常の取組であれば、管理職に声をかけて見てもらうなどしていけばよいし、研究会や勉強サークルに属していれば、そういう場で授業動画を見てもらって、意見をもらえばよいでしょう。そうすることで、一人よがりになって成長が止まることもないし、一人で思い詰めて息苦しくなってしまうことも避けられます。そのように、人から見てもらうことがとても大事だと思います。
また、若い先生を見ていると、新しいことにチャレンジし、失敗したりすることに対する不安があるのだろうと感じることがあります。ですから、指導案を見てみても、提案性はないけれど、失敗もしないだろうなと思うようなものをよく見かけます。しかし、どんどんチャレンジして失敗もしてみてほしいものです。そのほうが必ず学びがあるはずです。
私自身、若手の頃から多くの失敗をし、課題を指摘されてきましたが、それこそが授業改善の大きな契機になりました。例えば前回、「何で、あの子供の言葉を取り上げなかったの?」と指摘されたことを、すぐには受け入れられなかったお話をしました。その時には、その言葉を受け入れることのできない自分があったわけです。しかし、「それは何なのか」とずっと心に引っかかっていたこともあって、後に自分の授業の文字起こしをしてハッと気付きました。その契機となったのは、やはり不十分な授業を見てもらって指摘を受けたことで、失敗があったからこそ、学びがあったわけです。
もちろんチャレンジするにしても、自分の中の引き出しが限られていると、できることも限られてしまいます。ですから、どんどんいろんな授業公開に出向いて、いろんな授業を見てほしいものです。そうすると、きっと「こんな授業がしてみたい」と思えるような授業に出合うはずです。それを実際にやってみるとよいでしょう。きっとうまくいかないこともあると思いますし、そこで終わりにしたらそれまでですが、どこがうまくいかない原因かを考え、改善を図りつつ日常に還元していけば必ず力になります。何も新しいことをしなかったら、何も変わらないし、失敗もしない代わりに、何も成長がないのです。ですから、どんどんチャレンジしていってください。
それから最後に、今も私が大事にしていることであり、若手の頃をふり返って自戒を込めつつ若い先生に伝えたいのは、「子供は今、何を考えているのかな」「子供の学びって何なんだろうな」と常に考えてほしいということです。そういう思いをもって、日々の小さなことも学びになっている子供の視点に立ち、「子供とともに授業をつくり上げていくことが楽しい」と思うことができれば、とてもよいと思います。人は楽しいと思うことを突き詰めようとするものですから。
そういう思いをもてれば、「大変だけれども、教材研究がんばってみようかな」とか「ちょっと失敗するかもしれないけれど、子供が楽しいと思いそうだから思いきってやってみようかな」と思えるのではないでしょうか。私は、若い先生方にはそのように、どんどんチャレンジしていく機会をもってほしいと思っています。それは必ず先生方の大きな学びにつながるはずですから。
【授業づくり&学級づくり「若いころに学んだこと・得たこと」】次回は、5月18日公開予定です。
執筆/教育ジャーナリスト・矢ノ浦勝之