運動会ダンス指導のナイスな役割分担 ! ~担当者任せにしない!~
運動会ダンスの華やかなパフォーマンスの裏には、練習を重ねた子どもたちの努力はもちろん、指導担当になった先生の苦労も隠れていますよね。今回は、ダンス指導担当の先生が周りの先生と協力しながら、効率的に指導するポイントを紹介します。松下先生が運動会ダンスの指導にあたったときの資料も大公開!
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
具体的に言葉で伝えることが大事
先生A「運動会のダンス、誰が指導します?」
先生B「A先生がやってみたら? 学年を指導するのは、とても勉強になるよ! もちろん私もフォローするから!」
運動会の数か月前、学年団ではこんな会話がよく聞かれるかと思います。
でも、いざ運動会ダンス指導が始まったら…!!
次のような経験は、「ダンス指導者あるある」ではないかと思います。
- 相方の先生は、ダンスの振り付けを覚えていない(えっ!?)。
- 相方の先生は、自分が指導中、子どもと一緒に踊って振り付けを覚えているだけ(子どもかい!)。
- 自分は真っ先に練習場所の講堂や運動場に出て、機材の準備などをしているのに、相方の先生は何もしないで、子どもと一緒に来る。さらに、運動会ダンスの練習が終わったら、片付けをしないで、子どもと一緒に教室に戻る(子どもかい!)。
- 運動会ダンスの練習中、叱り言葉がほとんどで、褒め言葉が少ない。振り付けを覚えていない子どもにとても厳しくて、一糸乱れぬ動きを求めすぎる(軍隊的……)。
- 他の教科の授業を削ってまで、必要以上に練習時間を増やそうとする(その分、運動会が終わったら、しばらく体育の授業はしない……)。
- 運動会の開会式や閉会式、入場行進、応援合戦などの全学年の全体練習がある日も、2時間の練習を入れようとする(1日に3時間も、運動会の練習をすることになる)。
ちょっぴり辛口になってすみません!
私は全部、経験したことがあります。
「言われなくても察して動いてほしい」と思っていた私が間違いです。コミュニケーションが足りていませんでした。「運動会練習で大切にしたいこと」「どんなことをフォローしてほしいか」を、きちんとした言葉で具体的に伝えていませんでした。
また運動会での成功は、子どもたちにも保護者にも輝かしい思い出になると思いますが、保護者への意識が強すぎたり見栄えを重視したりするあまり、過度な練習を強いてしまうと、子どもたちの学力を保障できなくなりますし、子どもたちの健康面にも悪い影響を及ぼしかねません。
最小の練習時間で最大の効果を上げたいものです。そのためには、自分一人が頑張るのではなく、学年団全員の役割分担と協力が必須です。
今、私は運動会練習が始まる前に、「運動会指導の役割分担」を学年団で共有するようにしています。
実際の資料公開!
次に紹介するのは、私が運動会ダンスの指導にあたったときの学年内の資料です(運動会は10月です。1学期末の7月に打ち合わせをします)。
そして、具体的な指導計画をつくって学年団で共有します。
運動会ダンスの指導者として、①「大切にしたいこと」、②「学年団として協力してほしいこと(やめてほしいこと)」を具体的に言語化して共有します。口で言うだけだと忘れてしまうので、紙の資料にするのがおすすめです。
私は1日1時間以上の練習はしないようにしています。高学年でもです。できたら、週3時間の体育の時間内だけでできるようにしています。このダンスは何時間かけて練習したものですよ…ということも、保護者に知ってもらいたいと思っています。
若手の頃は、行事指導が大好きでした。時間はかかりますが、行事で子どもを成長させられる、学級や学年をまとめられるという思いが強かったからです。でも、今は、日々の授業の充実こそが大切だという思いがとても強くなりました。「行事よりも楽しい授業を!」「授業で学級経営、学年経営を!」という思いが強くなっています。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ