小3特別活動 学級活動編「学級活動(1) 学級あそびをしよう」指導アイデア
文部科学省視学官監修による、小3特別活動の指導アイデアです。6月は、「学級あそびをしよう」学級活動(1)の実践です。
子供たち同士の関係が少しずつできてくる6月。仲よしになった子供同士が集まり、グループができるのもこの頃です。子供たちから「いろいろな人と遊ぶと楽しい」「もっと他の遊びもしたい」「もっと楽しいものにしたい」など声が上がった時、みんなの意見を聞いて遊びを決める方法へと発想を広げるチャンスです。みんなで話し合ってみんなで決めたことをみんなで実践し「みんなで遊ぶのは楽しい」と実感できる活動にする実践例を紹介します。
執筆/北海道公立小学校教諭・横山健太郎
監修/文部科学省視学官・安部恭子
北海道公立小学校校長・山下尊子
目次
年間執筆計画
4月 学級活動(1) なかよし集会をしよう ※学級会オリエンテーションをかねて
5月 学級活動(1) 学級を楽しくする係をつくろう
6月 学級活動(1) 学級あそびをしよう
7月 学級活動(1) 学級のマークをつくろう
9月 学級活動(1) 前期がんばったね集会をしよう
10月 学級活動(3) ウ 進んで取り組む家庭学習
11月 学級活動(2) エ バランスのよい食事
12月 学級活動(1) スポーツ集会をしよう
1月 学級活動(1) 学級カルタをつくろう ※学級の取組を振り返って
2月 学級活動(3) もうすぐ4年生 ※クラブ活動のオリエンテーションも含めて
3月 学級活動(1) 成長を伝える会をしよう ※6年生を送る会、学期末参観、学年集会などの場面で
本時のねらい
新しい出会いから2か月。係活動や班での活動、休み時間の遊び、運動会の取組などを通して互いのよさを知り、子供たち同士の関係が少しずつできてきた頃。仲よしになった子供同士が集まり、仲よしグループができるのもこの頃です。学級目標の実現に向かってみんなで協力しながら楽しい学級にするために、先生や係が中心となって学級みんなで遊ぶ機会をつくっている学級もあるでしょう。
何にでも興味をもち「やってみたい」と好奇心旺盛な学年で、どの遊びをしても「楽しかった」と思っている子がいる一方で、「ルールを守ってほしいな」「もっと違う遊びもしたい」と感じている子もいるかもしれません。そんな時は、みんなが楽しめるよう、係が決めた遊びをして楽しむ方法から、みんなの意見も聞いて遊びを決める方法へと発想を広げるチャンスです。みんなで話し合ってみんなで決めたことをみんなで実践し「みんなで遊ぶのは楽しいな」と実感できる活動にすることが大切です。
初期の学級会では、子供の思いを広げ、「やってみたい」「楽しそう」という期待感を膨らむようにしたいものです。その中で、「なんのために」という目的を学級全体で共有します。よりよい生活づくりへの一人一人の子供の願いを高めていきましょう。
事前の活動
願いや思いを議題の提案につなげる
休み時間の遊びを終えて教室に戻る間に、「いろいろな人と遊ぶと楽しい」や「もっと他の遊びもしたい」「もっと楽しいものにしたい」などの子供の声が上がったときがチャンスです。子供たちに、議題提案カードで提案することで、みんなに思いを伝えられることを知らせましょう。学級遊びを係が毎回考えている学級もあると思います。「次はどんな遊びをしよう」と係の子供が悩んでいるときに助言することで、係の子供の悩みを議題の提案につなげることもできます。
他にも、子供たちが学級生活に目を向け、よりよいものにするために、議題として提案する場合、次のような視点(※1)が考えられます。
<自分たちの生活から問題を見付ける視点>※1
①みんなでしてみたいこと
②みんなで作ってみたいもの
③学級生活がもっとよくなること
④以前の学級活動で課題になったこと
⑤みんなにお願いしたいことや、みんなで解決したいこと
学級遊びの場合、学級遊びを考える係が遊びを決めている場合は、係の子供たちの悩みを教師がまず受け止めてアドバイスすることも考えられます。教師が「〇〇さんは、□□をしたいと言っていたよ。みんなに聞いてみる方法もあるね」と学級遊びを考える係に助言し、「みんなでやりたい学級遊び調べ」アンケート(※2)を行うなどが考えられます。子供の実態に合わせて、アンケートを最初は教師がいっしょに作成し、次からは子供たちだけでできるようにしてもよいでしょう。1人1台端末を使うと、集計が簡単に行えます。
<みんなでやりたい学級遊び調べアンケート>(例)※2
○みんなでやりたい学級あそびを入力してください。
【 】
○その理由を入力してください。
【 】
計画委員会で議題を整理し、学級全員で決定
計画委員会には教師も参加し、計画委員といっしょに議題案を整理します。提案者の思いや願いを踏まえて、議題選定の視点(※3)に基づき、学級みんなで話し合う必要感のあるものなどを子供たちが選定できるようにしましょう。整理した議題案は、帰りの会などで、学級全体に提示し、全員の了承を得た上で、学級会で話し合う議題を決定します。
提案された議題が、どのように扱われるのか(※4)を提案者に知らせることも大切です。議題として取り上げられなかった児童にも納得のいくように、その理由や処理のしかたを朝の会や帰りの会などで発表したり、提案カードの下に枠をつくって伝えたりします。そうすることで、どのような思いや願いが議題になるのかなどを全員で確認することができます。
<議題選定の視点>※3
①今すぐ解決しなければならない問題か
②学級の全員に関係のあることか
③自分たちの力で解決できるか
④工夫できそうか
⑤学級や学校の生活がよくなるためのものか
<提案された議題の扱い方>(例)※4
○短い時間で合意形成できそうなもの
→朝の会や帰りの会で話し合う
○係に任せるとよいもの
→係へ連絡
○自分たちだけで解決できないもの
→先生に相談
【帰りの会などで】
(計画委員)議題を提案してくれたみなさんありがとうございました。その中で遊び係さんから「みんなが楽しめる学級遊びをして、もっと仲よくなりたい」という提案がありました。みんなに関わることなので、次の学級会の議題にしていいですか。
みんなに関わることを議題に選び、学級会で話し合うんだね。みんなで決めた遊びをみんなで楽しんで、もっと仲がよくて楽しい学級になりそうですね。
学級会に向けた準備
議題が決定したら、計画委員の子供たちは司会や記録などの役割分担をします。教師は計画委員と共に、提案理由や話し合うことを明確化したり、決まっていることを確認したりします。特に提案理由は、提案者の思いを大切にしながら、なぜこの活動を行うのかをはっきりさせます。内容(※5)を参考に明確になるように作成し、合意形成のよりどころとなるようにしましょう。
<提案理由に入れる内容>※5
①現状の問題点(今、学級生活がこうなっている)
②考えられる解決の方法(今回の活動で、こうすることで)
③解決後のイメージ(こういう学級生活にしたい、こうなりたい)
【休み時間など短時間を活用した計画委員会の例】
提案者の遊び係さんは、どんな思いで提案してくれたのかな。
(提案者)「学級遊びで、いつも外でおにごっこをしてみんな楽しく遊んでいます。でもこの前、もっといろいろな遊びがしたいと言っていた人がいたので、遊び係でもっとやりたい学級遊びのアンケートをしました。そうしたら、みんながたくさんの遊びを出してくれました。でも、どの遊びも楽しそうなので、どれをするか悩んでしまったので、みんなで話し合って、もっと仲よく楽しめる遊びを決めたいです。
もっと仲よく楽しめる遊びってどういうことかな。
(計画委員)いろいろな人と仲よくなる。
だれとでも助け合う。
計画委員会での話を聞いていると、提案理由は「学級遊びで、今は外でおにごっこをして楽しんでいるけれど、鬼ごっこばかりじゃなくて、もっといろいろな人と仲よくなったり、だれとでも助け合ったりできる楽しい遊びをして、さらにみんなで仲よくなりたい」ということかな。
提案理由や話し合うことは、議題とともに学級活動コーナーに掲示し、学級会の前に学級全体に伝えます。事前にみんなで共有し、学級会ノートに自分の考えを記入して学級会に臨むことで、みんなで話し合って問題を解決しようという気持ちを高めることにつながります。
<話合いを深めるポイント>
もし、みんなでやったことがない遊びがあった場合は、休み時間を使って、短い時間で体験できるようにするとよいでしょう。試しにみんなでやってみることで、体験したことをもとに学級会で具体的に話し合うことにつながります。
学級活動コーナーに掲示(背面黒板など)
本時の活動
<議題>みんなが楽しめる学級あそびをしよう
<提案理由>学級遊びはいつもおにごっこをして楽しんでいるけれども、もっといろいろな遊びをしたり、誰とでも助け合ったりできて、みんなが楽しめる遊びをして、さらに仲よくなりたい。
本時の板書
<出し合う>
事前に学級会ノートに書いてある意見をもとに出し合います。理由と合わせて発表することで、意見のよさを理解しやすくなり、分かり合うことにつながります。
私は「もうじゅうがり」がいいと思います。どうしてかというと、前にやった時、誰とグループを作るかドキドキして楽しかったからです。
ぼくは「ドッジボール」がいいと思います。わけは、投げて楽しいし、この前やって、ボールがキャッチできなくても逃げてみんなで楽しめたからです。
<くらべ合う>
出された意見に対する賛成意見や反対意見を重ねていきます。より提案理由に合ったもの、より学級みんなのためになるものや学級生活が楽しくなるのを考えて発言ができるようにすることが大切です。反対意見の場合、反対だけ言って終わりにせずに、賛成意見か代案を必ず出すようにします。
「リレー」に賛成です。競走して楽しいし、運動会のときみたいに、応援して盛り上がるといろいろな人と仲よくなれるからです。
私も「リレー」に賛成です。チームで盛り上がるし、運動会とは違うチームにすればいろいろな人と話して、もっと仲よくなれると思うからです。
賛成意見が出ておらず、今回はその遊びに決まらないことがはっきりした場合、その遊びの案を出した子供にどう考えるか発言の機会を与えるようにします。
話合いが進んでも。賛成意見も反対意見も出されていない遊びがあることがあります。その場合「○○の遊びについて意見を言ってください」と言ってしまうと、たくさんの意見が出て、それに決まってしまうことがあるので、問いかけ方に気を付けるようにします。「みんなから何も意見が出ていない遊びがある」ことを全体に伝え、何か意見があるかを全体に問いかけます。
(司会)賛成も反対も出ていない意見がありますが、何か意見はありますか?
→そのうえで、何も意見が出なかったら
(司会)では、今回は下げることにします。この意見を出してくれた○○さん、どうですか?
はい、今回は別の遊びでいいです。
※休み時間にリレーを行う場合、リレーのコースを使うわけにはいきませんから、折り返しリレーなど工夫することが大切です。
<まとめる>
学級のみんなにとってよりよいものに合意形成していくことが大切です。
(司会)他の遊びも、学級遊びの時に遊ぶと楽しそうです。遊び係さん、どうですか?
(遊び係)はい。今回みんなが出してくれた遊びを参考にして、また係で学級遊びを計画します。
話し合うこと②は、「チームはどうするか」「どのようなルールでするか」といった内容が考えられます。子供の実態や話合いの経験によって変わってきます。子供たちにとって必要感のある内容にし、簡単に決められることはアンケートなどを活用して学級会以外で時間をかけずに決めるなど、重点化を図るようにしましょう。
終末の教師からの話では、前回の学級会と比べて話合いでよかったことを価値付け、計画委員については、学級の子供たちが気付かないこれまでのがんばりを労いましょう。課題がある場合は、そのことについても伝え、次の話合いや活動で改善を意識できるようにします。最後に実践への意欲を高める声かけをしましょう。
今日の話合いは、みんながより楽しめるものを大切に考えられたところが立派でした。友達の意見をしっかり聞いていましたね。今回決まらなかった遊びも別の機会にしようと考えられたのもすてきだね。計画委員は、これまで話合いを進めるためによく準備してきたね。司会の2人はなん度も練習してしっかり進めてくれてすばらしかったですよ。学級遊びをするのが楽しみですね。
事後の活動
実践活動までの準備
「みんなで話し合って決めた遊びで、みんなで遊ぶから楽しい」と思えるようにしたいと思って学級会を行いました。けれどなかには、話し合ったことを実践までに忘れてしまう子供もいます。みんなで決めたことを意識できるように、掲示しておくとよいでしょう。学級遊びをする日の朝の会で、ルールをみんなで確認することも大切な関わりです。
自分の意見に決まらなかったことで「やりたくない」という思いをもつ子供もいます。その場合、事後の準備や実践活動の様子をよく見て、声をかけたり、がんばりを褒めたりすることで、「自分の意見には決まらなかったけど、みんなで話し合って決めたことに取り組んで楽しかった。よかった」という思いをもてるようしましょう。
実践
教師も子供といっしょに学級遊びを楽しむことで、「みんなで話し合って決めたことにみんなで取り組むと楽しい」ということを説得力をもって伝えられます。話し合って決めたことに協力し合って楽しそうに取り組んでいる子供を見取り、「いろいろな人と仲よくなれて、楽しそうな表情しているね」と声をかけていきましょう。「みんなで決めたことをみんなで行うから楽しい」と実感できるようにしていく関わりが大切です。
実践の振り返り
グラウンドでの学級遊びに満足し、話し合って決めたことを実践するよさを実感した子供たちがたくさんいるでしょう。しかし、「体育館やグラウンドで体をいっぱい動かして遊ぶのも楽しいけど、体を動かすことが苦手な子もいるよ」「教室での学級遊びもしたいね」といった子供もいるかもしれません。その声を拾い、次の願いをもち、その願いを実現する力へつなげます。
この「問題の発見・確認」「解決方法等の話合い」「解決方法の決定」「決めたことの実践」「振り返り」の一連の学習過程を通して継続的に取り組むことで、子供たちが活動や生活をつくる力を育て、人間関係を深められるようにしていけるのです。
学級遊びを休み時間だけでなく、学級集会活動で行う学級も多いと思います。「みんなで遊ぶってこんなに楽しいんだ」「今まであまり話したことがない友達もいたけれど、いっしょに遊んだら仲よくなれた」などの思いを積み重ねていくことは、年度末に向かって、子供たち自身で学級をよりよいものにしていく上でとても大切です。
構成/浅原孝子 イラスト/小野理奈
監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。
特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!
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著/安部恭子 著/平野 修 著/清水弘美
ISBN9784098402106