小6特別活動 学級活動編「SNSとの付き合い方」指導アイデア

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【文部科学省視学官監修】特別活動 指導アイデア
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帝京大学教育学部教授(前文部科学省視学官)

安部恭子

文部科学省視学官監修による、小6特別活動の指導アイデアです。6月は、<「SNSとの付き合い方」学級活動⑵>を扱います。

6年生の子供たちにも今や身近なものとなりつつあるSNS。気軽にメッセージを送ることのできる利便性の裏に、言葉や表現のしかたによって、相手が意図しない受け取り方をしてしまう危険性も潜んでいます。「どんなことに気を付けてSNSを活用したらよいか」などについて話し合い、目標を決めて、取り組む具体的な実践のアイデアを紹介します。

執筆/埼玉県公立小学校教諭・稲垣伸孝
監修/文部科学省視学官・安部恭子
 埼玉県公立小学校校長・大澤 崇

年間執筆計画

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4月 学級活動⑶ ア 6年生になって
5月 学級活動⑴ 6年〇組スタート集会の計画を立てよう
6月 学級活動⑵ ウ(イ) SNSとの付き合い方
7月 学級活動⑴ 1学期がんばったね会をしよう
9月 学級活動⑴ 夏休み発表会をしよう
10月 学級活動⑶ ウ 自主学習の工夫
11月 学級活動⑴ 学級読書祭りをしよう
12月 学級活動⑵ ウ 病気の予防
1月 学級活動⑴ オリジナルカルタをつくろう
2月 学級活動⑶ ア もうすぐ中学生
3月 学級活動⑴ 学級お別れ会をしよう

学級活動⑵ ウ(イ)SNSとの付き合い方

本時のねらい

連絡や意思疎通、情報発信の手段として6年生にも身近なものとなりつつあるSNS。気軽にメッセージを送ることのできる利便性の裏に、言葉や表現の仕方によって、相手が意図しない受け取り方をしてしまう危険性も潜んでいます。 子供たちが何気なく発している言葉や情報についての責任や、相手を気遣う意識を高められるようにするとともに、「どんなことに気を付けてSNSを活用したらよいか」などについて話し合い、具体的な目標を決めて、取り組むことができるようにします。

事前の活動

①子供のSNSやインターネットの利用状況を把握する

SNSやインターネットの利用状況は、家族構成や保護者の教育方針、パソコンやタブレット端末の台数などの家庭環境による個人差があります。

SNSやインターネットの利用状況を把握することで、子供の経験について発表を求めたり、意思決定の方向性を考えたりすることに役立ちます。

②言葉や携帯電話、SNSに関わるアンケート調査をする

子供たちの言葉や携帯電話、SNSについての経験や考え方に関するアンケート調査を行います。SNSとの関わりについては個人差があるため、アンケートを採る際には、具体的な例や、子供の経験を共有するとよいでしょう。このアンケートは本時の導入時に活用し、学級全員の課題意識を高められるようにします。

【アンケート質問例】
Q 自分の言葉で相手を傷付けてしまったことがありますか。
Q 相手の言葉で傷付いたことがありますか。
Q SNSでトラブルに合ったことがありますか。
Q SNSは便利だと思いますか。                 
Q SNSの利用について不安がありますか。など
SNSを実際に使っている人が答えます。

本時の展開

①課題を実感できるようにする(つかむ)

授業の導入では、本時の題材を自分事として捉えることができるようにします。

事前のアンケート結果をもとにしながら、言葉の伝え方によるトラブルの経験や、携帯電話・SNSに関する意識などについて、具体的な場面を共有しながら発表し合います。

学級活動⑵ では、生活上の問題について、原因や解決方法を考え、他者と協働して解決に向けて粘り強く取り組んだり、他者を尊重してよりよい人間関係を形成しようとしたりする態度を育てていくことが大切です。そのため、導入段階で、自己の生活上の課題の原因や改善の必要性についてよく考え、子供たちが課題解決のために努力する必要性を感じ、解決に向けて意欲をもてるようにします。

アンケートでは、SNSでトラブルになった経験のある人がいるようですが、どのようなことですか。

SNSで漢字の読み方を聞いたら、「分からないの。」と返事が返ってきて、そんなことも分からないんだねと言われたみたいで悲しかったな。

僕が描いた絵を誰かがSNSに載せて、みんながSNSで「すごい!ヤバいね。」と言っていて、複雑な気持ちになったんだ。

言葉の受け取り方や感じ方は人によって違うようですね。言い方や声の調子で相手の気持ちが伝わることもありますが、文字だけでやり取りをするSNSではどうなるでしょうか。

②課題の原因について考える(さぐる)

「つかむ」の段階で共有した経験を踏まえ、課題の原因について深く考えていきます。
SNSでメッセージのやり取りや会話をしている場面について考え、人によって受け取り方が異なることが実感できるようにします。具体例をもとに実生活と結びつけながら、よりよい伝え方があることや、自分にできそうなことに気付くことができるようにします。

このSNSでのやり取りを見て、どのように感じるか考えていきましょう。

「どうして行くの」って言っているようで、行きたくない感じがするね。

電車とかバスとか、乗り物が何かを聞いているのかな。

「どうして」という意味にも「どうやって」という意味にも、どちらにも受け取れるので、Aさんは困ってしまいそうだね。
このようなトラブルになる場面は、SNSでのやり取りの他にもありそうですね。

何気ない一言で相手を怒らせてしまったことがあったな。

相手の言っていることの意味が分からなくて困ったことがあったよ。

言葉の伝え方について考える活動の後に、実際にSNSの利用によって起きたトラブルの発生件数などの統計や、新聞記事などの資料を提示することも考えられます。子供たちが実際に直面している問題であることや、解決の必要性があることを強く感じられるようにすることで、課題を解決しようとする意欲を高めることが期待できます。

SNSサイトから情報モラルに関する情報を集め、資料の用意に役立てることも考えられます。

<1人1台端末の活用例>

メッセージのやり取りについての感想は1人1台端末を活用し、意見を共有できるツールに打ち込み、自由に見られるようにすることも考えられます。友達の多様な考え方や感じ方を知ることで、自分の意見と対比しながら考えを深めることができます。

③解決方法について話し合う(見付ける)

「さぐる」の段階で見えてきた原因を踏まえ、SNSにおける言葉の伝え方やSNSを使うときに気を付けるとよいことなどについて話し合います。相手に自分の気持ちを正確に伝えるために、どのようなことを心がけるとよいか、話し合うことが大切です。

SNSトラブルや携帯電話の利用などの経験の有無について、事前のアンケートを踏まえた意図的なグループを編成する工夫も考えられます。「会って話している時」「SNSでやり取りする時」などの場面を示し、送る(話す)側、受け取る(聞く)側双方の立場について、自分に合った状況について考えるようにします。実際の場面や言葉の内容など、できるだけ具体的に考えられるようにするために、出された意見を全体で共有するようにしましょう。

《会って話している時》

相手の反応や表情をよく見ながら、どんな風に伝わっているか考えたほうがいいな。

相手の言いたいことがよく分からないときは「○○さんの言いたいことはこういうこと?」などと、聞いてみるといいな。

《SNSでやり取りをしている時》

SNSでメッセージを送るときには、一度読み直してから送信しようかな。

「どうしてかな」「おかしいな」と思ったときは、相手に直接確かめたほうがよさそうだね。

④個人目標を意思決定する(決める)

「見付ける」の段階で、学級で話し合ったことを生かして、一人一人が自分の課題に合った具体的なめあてや解決方法を意思決定できるようにします。意思決定して終わりではなく、何人かが発表したり、ペアやグループで発表したりして、自分の立てた目標や方法を見直す機会を設けるようにします。

自己評価カード(記入例)

事後の指導

①決めたことを実践する

意思決定したことを実践し、記録をしていきます。自己評価カードをいつでも見える場所に掲示したり、朝の会で実践を紹介し合う時間を設けたりしながら、子供たちが意欲を継続できるように支援していきましょう。「実践できたか、できなかったか」といった結果だけでなく、進んで取り組もうとしたり、粘り強く努力しようとしたりする態度や、進歩の状況などを教師は温かく見守り、認め、励ますなど、成果を上げることができるように指導します。

②定期的に自分の立てた目標を振り返る

学級活動⑵ では、目標の達成状況を毎日確かめたり、1~2週間程度の比較的短い期間で振り返ったりします。努力の様子を確かめる自己評価については、帰りの会や給食を食べ終えた後の時間など、全員が記録できる時間を設けるようにしましょう。達成状況を踏まえ、必要に応じて新たな目標を設定したり、目標を修正したりします。

《振り返り》

1週間の取組を振り返ってみましょう。

SNSでメッセージを送るときは、3回以上読み返してから送るという目標はしっかりできているな。

「おかしいな」と思ったことを確かめる場面がなかったな。受け取る(聞く)側の目標だけだと、取り組まずに終わることもありそうね。

「すごい」とか「やばい」のような言葉でなく、「すごく上手だね」や「とても大変だよ」など、伝わりやすい言葉を選ぶようにできたな。

相手の立場に立って、どんな言葉を伝えたらよいか、考えることが大切だと感じたよ。

《目標の修正》

SNSについてはだいぶ気を付けられるようになったから、日頃の言葉づかいとか、友達との接し方に気を付けよう。

送るメッセージを読み返す回数を1回に減らす代わりに、「じっくり読んで考える」に目標を修正しよう。

聞く(受け取る)側でなく、話す(送る)側で、「(今の話)伝わったかな?」と相手に確かめてみることを目標にしてみよう。

振り返りや修正した目標に向けての取組を通して、SNSを正しく使い、友達と気持ちよく接することができるように、これからも心がけていきましょう。

③取組や子供の努力について、家庭へ情報を発信したり、協力を求めたりする

意思決定した目標を実践する場が、家庭である場合も多くあります。保護者に本題材の授業の様子や取組、子供の様子を伝えたり、協力を求めたりすることで、より一層、子供の意欲の向上や成長につながることが期待できます。具体的には、学級通信や保護者会で子供の決定した目標や努力している様子を伝えることや、振り返りカードに「家庭から」の欄を設け、保護者から子供の取組や努力を認め、励ましてもらうことなどが考えられます(※家庭環境において配慮が必要な児童が在籍している場合は、「先生から」だけにしたり、「家の人などから」としたりするとよいでしょう)。

構成/浅原孝子 イラスト/高橋正輝


監修
安部 恭子
文部科学省視学官
埼玉県さいたま市の小学校に勤務後、さいたま市教育委員会、さいたま市立小学校教頭勤務を経て、2015年より文部科学省初等中等教育局教育課程課教科調査官・国立教育研究所教育課程研究センター研究開発部教育課程調査官、2022年より文部科学省初等中等教育局視学官を務める。


楽しい学校をつくる特別活動
すべての教師に伝えたいこと

特別活動の魅力をすべての教師に伝える本!

楽しい学校をつくるには、具体的にどのようにすればよいか。コロナ禍の新しい学校生活様式を踏まえた小学校での特別活動の基本がよく分かります。特別活動を愛する3人による、子供たちとの学校生活を充実させるための「本質」が語られています。

著/安部恭子  著/平野 修  著/清水弘美
ISBN9784098402106


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