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ギフテッドのサポートに有効なTPD理論とは?

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TPD理論の日本語訳は、「肯定的分離(積極的分離)理論」が一般的です。(Theory of Positive Disintegrationの略です)

最近、「ギフテッドの特性」として認知度が高まってきた過度激動(OE)のベースとなる概念で、学校での不適応などを「人格を発達させる肯定的な兆候」と捉えます。

「肯定的分離理論という言葉を知り、ギフテッドのサポートにつなげてほしい」と言うのは、佐賀大学の日高茂暢先生です。詳しく話を伺いました。

本記事は日本LD学会第31回大会の日高先生の発表をもとに、追加取材しました。

不適応は、「人格を発達させている肯定的な兆候」

TPD理論を提唱したのは、ポーランドの精神科医カジミェシェ・ドンブロフスキ先生です。TPD理論は、「フロイトの精神分析」「サリバンの対人関係論」に並ぶパーソナリティ理論のグランドセオリーの1つとされ、近年、ギフテッド研究の中で、再評価の気運が高まっています。

TPD理論では、不適応、神経症などを、人間が「理想的パーソナリティ」(自分自身の最もよく、最も利他的で、価値のある状態)に向かって人格を発達させている肯定的な兆候とみなします。(日高先生)

「5段階の階層」で理解するTPD理論

TPD理論によれば、不適応や神経症といった「ネガティブな状態」を乗り越え、理想的パーソナリティに至るプロセスは、5段階の階層があります。

各階層ごとに、内容を見ていきましょう。図では、説明する階層イメージを赤枠で囲ってあります。

レベル1 一次統合

レベル1 一次統合

端的にいえば、「ふつう」の枠内にいる状態です。

このレベルにいる人の価値観は、「社会的集団の一員であること」に基づいています。ドンブロフスキ先生は、レベル1を、こう表現します。

社会集団への所属欲求に基づいて行動する状態です。

レベル2 単層分離

レベル2 単層分離

一時的に内的葛藤(心の葛藤)を経験する階層です。

内的葛藤がおこり、これまでの価値観が揺らぎます

けれども、最終的には、これまでの価値観に基づいて行動する階層です。そのため、価値観を大きく変えることは少ないです。ドンブロフスキ先生は、レベル2を、こう表現します。

社会的価値規範に、一時的に葛藤を生じる段階です。

レベル3 自発的多層分離

レベル3 自発的多層分離

この階層の人は、次の二つの価値観を行ったり来たりしながら行動します。

  1.  「レベル1」「レベル2」の価値観
  2.  自分で作った価値観

また、これまで自分が持っていた「ふつう」の価値観が揺らぎ、内的葛藤が大きくなってきます。やがて、内的葛藤は、TPD理論の中核に繋がります。それは…。

価値観の崩壊は、個人の人生における肯定的な発展の兆候=Positive Disintegration(ポジティブな崩壊)である。

言うなれば、この階層にいる人は、自分で選んだ、「より大きな善」にむけて、従来、自分が持っていた価値観が大きく揺らいでいるのです。

ドンブロフスキ先生は、レベル3を、こう表現します。

社会的価値規範と自分の価値観が共存する段階です。

レベル4 組織的多層分離

レベル4 組織的多層分離

ほとんどの場面において、「自分の価値観」に従って、自身の行動を決定できる階層です

この段階は、レベル3の人が、「心理的安全の確保」、「受容的なカウンセリング」といった支援を受けることで到達する階層です。

この階層に到達した人は、内的葛藤を残しながらも自分自身の価値観で行動できるようになります。ドンブロフスキ先生は、レベル4を、こう表現します。

葛藤が少なく、自分の価値観に従って行動する状態です。

レベル5 二次統合

レベル5 二次統合

どんな状況でも、「自分の価値観」に従って行動できる

ブロックの形だけみると、一見、「一次統合」と同じように見えます。

けれども、一次統合と異なるのは、二次統合の段階は、「利他的な目標を持つ」「より大きな善や正義のために行動する」という価値観で行動する点です。つまり…。

自らの価値観や信念に基づく、最も利他的な状態です。

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