【相談募集中】同僚に軽視され生徒との関係もいまいち、少しでも前を向く方法は?
教員生活も終盤を迎え、自分の限界を感じる方も多い50代。今回の相談者は「同僚から軽視され生徒からはダメ出しされ、かなりへこんでいる」という50代の中学校の先生です。「助けを求める力があればハッピーエンドが待っている」と励ましながら答えていただくのは、兵庫県公立小学校教頭で公認心理師・特別支援教育士スーパーバイザーの関田聖和先生。教師の基盤となる子どもとの関わり方を中心に、自身の実践も交えながら、前を向いて働くための具体的アドバイスをいただきました。
目次
Q.同僚から軽視され生徒からはダメ出しされ、それでも前を向いて働くには?
教師歴30年ですが、歳ばかりとって、大きい校務分掌や学年主任の経験もなく、年下の教員から見下げられ、同年代の教員からは煙たがられる50代の女教員です。教員の仕事は好きですが、教員が向いていると思ったことはありません。
最近、支援学級で担任をしている生徒から「先生は俺好みの指導じゃないから俺はどんどんダメになっていった」と言われ、引きずっています。これまでも生徒との関係が築けずに悩んだことはありましたが、今回はこたえました。どうぞ、自分を回復する助言をいただけないでしょうか。
(曇天先生・50代女性 中学校)
A.好きこそ最大の能力! 何とかしたいと行動したとき才能の芽は急速に伸びる
曇天先生が悩んだ上、誰かに相談しようとすることは素晴らしい力だと考えています。困ったときに頼る力があるということです。この時点で「もうゴールはハッピーエンドしかないのかな」と感じています。
「好きか嫌いかは、自分で決める」と言われます。さらに私は「好きこそ、最大の能力」だと考えています。そして教師歴30年という経験値は、揺るがない事実です。何とかしたい、伸びたいと感じ行動したとき、才能の芽は急速に伸びると考えています。だからここへ投稿され、行動されたときは、伸びていくスタートだと捉えることができます。
ただしひとつだけ……。
多賀一郎先生は「教員に、向き不向きは、無い」とおっしゃられています。向き不向きは、感じるものであって、それは人間の感覚に寄るところが大きいです。だから私も「向き不向きは、有るようで無く、無いようで有る」と曖昧に考えています。
子どもの発言を字義通りに解釈しない
さて、児童・生徒の対応での最大のポイントは、児童・生徒の発言を字義通り解釈しないことです。私は「子どもの発言は、そのまま受け止めないこと」を教師のスキルの一つとして必要だと考えています。もちろん、背景を理解した上で、その通りだと捉えることもあります。子どもの背景理解と言動の理由を考えることが大切です。
「先生は俺好みの指導じゃないから俺はどんどんダメになっていった」ということは、「俺好みの指導をしてくれれば、俺はどんどんよくなっていく」の裏返しです。もっと俺を見て!俺のことを知って!ということではないでしょうか。
子どもの得意・好きなことを見つける
次に、子どもの得意・好きなことを見つけましょう。
私もつい教師根性が過ぎてしまい「この子の『できない』を無くしてやろう!」と教え込んだり、練習させすぎたりしたことがありました。その結果「できない」の連続が続き、次第にそのこと自体を嫌いにさせてしまいました。そしてやっと達成した瞬間に「もうこれで、しなくてよくなる」との一言を聞いてしまうこともありました。達成したのに残念なことです。
人間の脳の特性上、人は「不備不足」に目がいきます。特に教師は、言わずもがなです。これはある意味、仕方の無いことです。子どもの「できない」を見つけてしまうと「できるようにしなければならない!」といった負荷のようなものがかかりませんか。これは、教師独特のバイアスなのかもしれませんね。
だからこそ、子どもの得意なことや好きなことを見つけることが大事だと考えています。人間は嫌いなことは避けますが、好きなことはやりたくなりますもんね。学校の中でできる得意なこと、好きなことをベースに、取組を見直してみてはいかがでしょうか。
例えば、ゲームが好きならば、学習をゲーム化してしまうこともありでしょう。
- 1問解けたら10 ポイント!
- なんとこの問題は、今までの獲得したポイントが倍になります! など
小学校での実践ですが、ゲーム好きな子どもが複数いたクラスでは、算数の学習で「アドベンチャー学習」を行なったことがあります。
昨年度は2学期からほぼ担任をしていたので、2つほど作成しました。子どもたちは、どんどん課題を求めて取り組みました。主体的で、かつ自分のペースで学ぶので、個別最適な学びにもなっていました。
集中が続かないのであれば、集中できる半分~3分の2ぐらいの内容量を設定したものを用意します。「こんなん、簡単すぎるわ!」と言われるぐらいに、難易度は、今、できることにします。
取り組まないときは「やっぱり難しかったかあ……」と、課題をぼうっと見つめているだけでいいです。もちろん取り組もうとしたときには、「さすが、〇〇くんやね!」と短い言葉がけをします。
取り組み始めたら「すごいわぁ……」と感嘆し、「あっ、先生がしゃべってたら、うるさくてできへんね。だまっとこ!」と、そっと黙って見ておきます。
そして丸付けのできるような課題であれば、正解のものには、やっている途中であっても黙ってそっと丸をします。間違っているものには、何も言わず、そして何の印もしないで見ておきます。にこにこ無言で、答え直しを促すイメージです。
でも訂正せずにそのまま持ってきたときは、やり直しさせずに、刺激の強い赤ペンではなく、刺激のやさしい赤鉛筆やグレーペンでそっと正しい答えを書いて返却しましょう。 そっとがポイントです。中学生でもあるので、適度な距離感も大事です。
子どもの背景を理解する
次に子どもの「得意」を見つけるための背景理解に努めましょう。ここからは少し、専門的な話になります。
物事を処理するとき、人は「順番で取り組むタイプ」と「全体を把握してから取り組むタイプ」に分かれます。前者を継次処理といい、後者を同時処理といいます。
継次処理が得意(優位)とすること
- 文章で学習のゴールまでの順と見本が示されているもの
- 1つずつ行うこと
- 説明書を読むこと
- 「最初に〜して、次は〜、最後は〜した」と、経験したことが記憶に残りやすい など
同時処理が得意(優位)とすること
- 最初に学習の目的を教える
- 地図を見て把握すること
- マルチタスクすること
- 規則性を見出して覚える など
上記に加えて、下記のような学びの型があります。これは傾向をみる程度になります。なぜなら成長で変化したり、混合型があったりするからです。
- 視覚情報の処理に優れている(視覚優位型)
- 聴く事を通して理解することに優れている(聴覚優位型)
- 実際に触ったり動いたりすることを通して学ぶことに優れている(体得優位型)
これらを少しずつ意識して取り組んでみると、子どもの得意も客観的に見えてくるかも知れませんね。
下記も参照してみてください。
参照:基礎的・基本的な知識・技能を確実に習得させる指導の工夫(2年次)(東京都教職員研修センター)
上記の処理タイプや学びの型については、それぞれの入口ともいえる部分を記載しています。深く学んでいくとおもしろいですよ。すると教師の専門性もきっと高まると考えています。そうすれば、他の児童・生徒にも生かすことができるのではないでしょうか。
「比較をしない・批判をしない・期待をしない」で働いてみる
同僚との関係については、あまりにもストレスがひどい場合、異動も視野に入れる必要があるかもしれません。でもまずは「比較をしない・批判をしない・期待をしない」の3つを心に決めて、働いてみてはいかがでしょうか。
そしてうまくいったときはもちろん、何かチャレンジしたとき(失敗であったとしても)には、小さなご褒美をご自身にあげるなどして、自分を労いましょう。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。