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【小一算数】対話を取り入れた「繰り上がり・繰り下がり」

2019/10/1

一年生算数の最難関とされる「繰り上がり&繰り下がり」。ここで子どもたちを算数嫌いにしてしまうわけにはいきません。子どもたちが対話的に、そして楽しみながら学ぶための仕掛けやアイディアを紹介します。

執筆/富山県公立小学校教諭・前田正秀

対話を取り入れた繰り上がりと繰り下がり

対話し考えを深め合う&楽しさをつくる5の仕掛け

関わり合うことで、考えを深める

「対話を取り入れた授業アイディア」を紹介する前に、まず、確認しておきたいことがあります。それは、「対話的な学び」とは、ペア学習やグループ学習など、学習の形をいうのではないということです。ただのおしゃべりのし合いは、対話とはいえません。

それでは「対話的な学び」とは、どのような学びなのでしょうか。私は「友達の考えの中に自分にはない良さを見いだし、新たな視点から自分の考えを見つめ直すこと」だと捉ています。友達と関わること自体が目的なのではなく、関わりを通して、考えが深まることが大切だと思うのです。

関わることが目的ではなく手段である

冒頭から、小難しい話をしてしまいました。低学年なら、もう少し簡単に、対話を「友達と考えることが楽しいと思えること」だと捉えてもよいでしょう。自分とは違った発想と出会い、友達と考えることが楽しいと思える授業。本稿では、そんな授業をつくるためのアイディアを紹介していきます。

1.考えた理由を尋ね、その子らしさを引き出す

繰り上がりのあるたし算の導入で、いくつかのたし算カードを黒板に貼ります。そして、「この中で、答えが10より大きくなると分かるものは、どれですか」と尋ねます。

黒板に貼ったたし算カード
黒板に貼ったたし算カード

子どもたちは、答えが10までの計算を既に学習しています。10を超えるのは「8+6です」「7+5です」と、すぐに分かるはずです。

ここでは、答えを聞いて終わりにするのではなく、「どうして、すぐに分かったの」と理由を尋ねるのがポイントです。答えは、みんな同じですが、そう考えた理由に、その子らしさが出るからです。

例えば「だって、8+6の8は、あと2で10になります。6は2より大きいから、8+6は10より大きくなります」と説明する子がいたとします。それを聞いて、10より大きくなるかを指を折りながら数えていた子は、「なるほど」と感心することでしょう。

実は、「8は、あと2で10になるから・・・」という見方は、これから学習する「繰り上がりのあるたし算」への伏線となっているのです。

8+2は、10である考え方

先ほどの説明に「6は2より4大きいから、答えは10より4大きくなるよ」と付け加える子がいたなら、素敵です。そこまでいけば、既に「8+6」の計算のやり方が分かったも同然なのです。

2.ブロックや図で説明し合って理解を深める

計算のやり方を学習する際にも、答えを求めるだけでなく、どうやって計算したのか、ブロックや図で説明し合うことが大切です。算数が苦手な子は、友達にブロックや図で説明してもらうことで、理解しやすくなります。また、算数が得意な子にとっても、友達に説明することで理解が深まるのです。

一般に、理解のレベルには「分かる」「できる」「説明できる」の段階があります。「分かった」からと言って「できる」とは限りませんし、「できた」からと言って「説明できる」とは限りません。子どもたちにも、そうした段階があることを伝えておき、「説明の名人になろう」と呼びかけると、やる気を出します。

「分かる」

「できる」

「説明できる」

3.先生がわざと間違えて「違うよ。だって・・・」を引き出す

先生方の中には、説明する力を付けようとするあまり、

「9は、あと1で10です」
「4を1と3に分けます」
「9に1を足して10です」
「10と3で13です」

といった話形を示し、説明の仕方を訓練する方がいます。しかし、無理矢理させられる説明は、子どもにとって楽しくありません。もっと子どもの力を信じて自由に語らせてもよいのではないでしょうか。

とはいえ、単に「やり方を説明しましょう」と投げかけただけでは、子どもは、分かっていることを、いちいち説明したがりません。そこで、お勧めなのが、「先生がわざと間違える」という方法です。先生が間違えてみせると、子どもは「違うよ。だって・・・」と、むきになって説明を始めます。
例えば、

たろうさんは、どんぐりを9こひろいました。
はなこさんは、どんぐりを4こひろいました。
あわせて、なんこひろいましたか。

たろうさんとはなこさんのどんぐりを挿絵にする

という問題なら、どんぐりの挿絵を黒板に提示します。そして、先生が、わざとでたらめに「1、2、3・・・」と数え、「12個」と数え間違えてみせるのです。子どもからは「違うよ。13個だよ」と言う声が上がることでしょう。それでもしつこく数え間違えてみせます。すると、「だって、太郎さんに1個あげたら10でしょ・・・」と、説明を始める子が出てきます。そうした声が大きくなったところで、「本当に13個なの?」と問いかけ、「答えが13個になることを、分かりやすく説明しましょう」という学習課題を提示します

不思議なもので、子どもたちは、間違っている理由を説明する際には、教師が「ブロックや図を使って説明しましょう」と言わなくても、自らブロックや図を使います。

もし、「自分のクラスの子どもたちは、あまり図を使わないな」と感じることがあったら、それは、「子どもの図を描く力」が不足しているのではなく、「子どもが本気で説明したくなるための、教師の投げかけ」が不足しているのかもしれません。

4.「説明したい」という切実感を持たせる

「ひき算」の学習においても、大切なことは、「たし算」の学習と同じです。単元のはじめでは、やり方をブロックや図で説明し合うことが大切です。そのためには、「説明したい」という切実感を持たせなければなりません。

例えば、次のような図を板書しながら問題を提示すると、子どもはどうなるでしょうか。

どんぐりが13こあり、9こつかった図

図を見れば答えが4個だと、あからさまに分かるので、説明しようという気持ちが湧きません。そこで、ちょっとした演出をします。おはじき13個を黒板に貼った後に、「箱に入れますね」と言いながら、画用紙で隠してしまうのです。そうして、「残りは5個かな。6個かな」と間違ってみせると、子どもは「違うよ、4個だよ。だって・・・」と説明を始めるわけです。

13このどんぐりがいくつか画用紙で隠れた図

5.「ひきひき方式」「ひきたし方式」などと名前を付ける

ひき算の計算に慣れてきたら、「12-3」のようなひき算について学習します。ここでも、大切なことは、たし算の時と同じです。それぞれのやり方に「ひきひき方式」「ひきたし方式」などと名前を付けながら、特徴を明確にしていきます。

計算練習でもたし算同様、9を含む計算ばかり集めたプリントを使えば、「9のひき算は、1の位に1たすと答えになる」という発見が生まれます。また、たし算と同様に、下のような「□ひく□は、8」といったオープンエンドの問題を出題すれば、子どもたちが、面白いきまりを発見します。

オープンエンドの問題

こうした工夫をしながら授業し、一年生では、友達と考える楽しさを十分に味わわせたいものです。

イラスト/浅羽ピピ

『教育技術 小一小二』2019年10月号より

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