小学校卒業式のための「卒業証書の受け取り方」指導のポイント
卒業証書授与は、卒業式で子ども1人ひとりにスポットライトがあたる大切な場面の1つです。だからこそ、子どもには卒業証書を堂々と受け取ってほしいもの。そこで今回は、卒業式における作法の指導の前にやっておくべき大切なことについてお話しします。
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子どもも指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらうコーナーです。
指導/大阪府公立小学校教諭・松下隼司
子どもに負担をかけないために必要な「根回し」
卒業証書を受け取るときに、迷いがちなことがあります。
- 「卒業証書をもらうとき、1歩前に出るのは、右足から? それとも左足から出るの?」
- 「卒業証書をもらうとき、右手でもらってから左手を添えるの? それとも左手でもらってから右手?」
- 「卒業証書をもらって、1歩下がるのは右足から? それとも左足から?」
公的な場合、卒業証書を受け取るのは、「右手から」が良いとされています。公的というのは、例えば、警察や自衛隊、公立の学校などです。
ご参考までに。この動画は、警察学校の卒業式の様子です。右手から受け取り、次に左手を添えています。
ただ、指導したら絶対にうまくいくかと言ったら、そうとは限らないのが学校現場です。学校ごとの伝統、やり方があります。運動会や学習発表会、そして卒業式もです。
「以前、勤めた学校は、このやり方でした」
「いろいろ調べたら、このやり方が多かったです」
これが通らないこともあります。
だから、まず、卒業式の練習を始める前に、前年度の卒業式の映像を見直すことが、とても大切です。
でも、前年度の卒業式とそのまま今年度も同じように指導すれば大丈夫とは限らない場合があります。
それは、管理職(校長先生・教頭先生)が今年度、赴任されたときです。管理職にも、卒業証書の受け取り方について事前に確認しておくことも大切です。
私は、これを怠ってしまって、卒業証書授与の練習のときに、管理職に、
「いや! 私は違うと思う。卒業証書の受け取りの時の動きは、……と思う」
などと言われてしまった経験があります。
指導者である学年団と管理職の考えが違うことを子どもに知られてしまい、不安にさせてしまいました。
そのときの管理職は優しかったので、「このままでいいよ」と言ってくれましたが、もし修正したら、子どもに余計な負担をかけてしまうことになります。
さらに、管理職だけでなく、教職員全体で事前に卒業証書の受け取り方について共通理解すると安心です。
新しく赴任された先生が卒業式の練習での子どもの動きを見て、
「え!? 違うと思う。前の学校は……だった」
などと食い違ってしまうと、子どもに負担をかけてしまうことになります。
6年の学年団としても、気持ちよく進められません。
職員会議や職朝などで、卒業証書の受け取り方について、具体的に共通理解を早めにしておくことも大切です。
前年度までの卒業式の流れを少しでも変える場合は、特に早め早めの対策をおすすめします。
書籍などで作法を調べるのも、これまでの自分の教師としての経験を活かすのも大切です。それと同じくらい(場合によっては1番)、その学校の卒業証書の受け取り方を知ることも大切なのです。
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。
イラスト/したらみ