「振り返りリレー」自治的な学級をつくる12か月のアイデア#1

連載
自治的な学級をつくる12か月のアイデア

宮城県公立小学校教諭

鈴木優太
連載「自治的な学級をつくる12か月のアイデア」執筆/鈴木優太

子供たちが主体的に学び合い、話合い活動を通して自分たちの力で問題を解決していく、そんな学級をめざしたいもの。この連載(月1回公開)では、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)などの著書をもつ鈴木優太先生が、自治的な学級をつくるための授業や特別活動のアイデアを紹介します。第1回は、帰りの会で行う「振り返りリレー」です。

執筆/宮城県公立小学校教諭・鈴木優太

帰りの会に「振り返りリレー」を取り入れよう

「振り返りリレー」とは、子供たちが出席番号順(席順でも可)に呼名し合い、リレーのように振り返りを全員が発表し、それを全員で聴き合う活動です。毎日の帰りの会で行います。

【手順】
①出席番号順に、子供たちがリレーのように呼名していきます。
②「はいっ!」と返事をし、その日のベストエピソードを2文程度で発表します。
③発表する級友に正対して聴きます。

帰りの会で「振り返りリレー」をする子供たち

「聴く」ことが重要です。座席に座っている間も体の向きをくるくると変えて、発表する級友に正対します。

次のようなイメージで、子供たちはテンポよく発表していきます。

日直「振り返りリレー!」
全員「振り返りリレー!」
日直「Aさんっ!」
「(起立)はいっ!2時間目の算数です。Bさんの説明を聞いて、計算の仕方を私も5人に説明できました。Bさんっ!」
「(起立)はいっ! 5時間目の社会です。調べ学習中に動画が止まるトラブルがあったけれど、その間に教科書をすみずみまで読んで、大事なことをまとめることができたからです。Cさんっ!」
「(起立)はいっ!…パスします。Dさんっ!」

「パスします」もOKです。出席番号末尾の子の後にリトライできます。友達の振り返りをひと通り聴いた後なので、真似をして言えるようになっていきます。最後の1人まで回ったら、全員で拍手を贈り合って締めくくります。慣れてくると、30人学級でも3分間程度で全員の振り返りを聴き合うことができます。

「3つの習慣」を身に付けよう

「振り返りリレー」を毎日継続することで、「3つの習慣」が学級の子供たちに育まれていきます。

①級友の名前を呼び合う習慣
②級友の話を聴き合う習慣
③振り返りの習慣

この「3つの習慣」が、本連載のテーマとして掲げた「自治的な学級」には欠かせないのです。

①の「名前を呼び合う」ことと②の「話を聴き合う」ことの2つについては、朝の5分間が5時間につながる活動を【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】①に詳しくまとめましたので、そちらをご覧ください。

ここでは、③の「振り返りの習慣」について説明します。
振り返りは、「リフレクション」とも表現する行為です。

リフレクションとは、自分の内面を客観的・批判的に振り返る行為です。
リフレクションの目的は、あらゆる経験から学び、未来にいかすことです。
経験を客観視することで新たな学びを得て、未来の意思決定と行動に生かしていく。これがリフレクションです。

引用:熊平美香『リフレクション 自分とチームの成長を加速させる内省の技術』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)

つまり、振り返りの目的は「次をよりよくするため」だと私は考えます。

「自分たちの日々を自分たちでよりよくしていこう!」

という「ムード」(雰囲気)が、学級いっぱいに充満することがまずはとても大切です。振り返りをすることが1日の中にシステム化されていることで、前向きな思考のくせが学級に浸透していくのです。

導入のポイント

朝の会では、「健康観察リレー」を行います。(朝の5分間が5時間につながる活動を【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】①参照)

授業では、「出席番号リレー」に取り組みます。(「願いごと」と「合言葉」でインパクト大の3D学級目標【子供同士をつなぐ1年生の特別活動】②参照)

また、席順で一言ずつ意見や振り返りを全員が発表する「席順リレー」にもチャレンジしましょう。スタート地点や縦・横の進み方を変えると、発表順が変化します。様々な級友の名前を呼び合う機会にもなります。

帰りの会は、「振り返りリレー」です。

どれも、子供たちが順番に呼名し合いながら、リレーのように発表していく学習活動です。

子供たちが順番に呼名し合いながらリレーのように発表していく学習活動の概念図。朝の会「健康観察リレー」、授業「出席番号&席順リレー」、帰りの会「振り返りリレー
」

上の図のように、1日の始まりと終わりとで挟み込みながら、授業中の「出席番号(席順)リレー」、つまり全員発表を積み重ねていきます。

「全員発表があたりまえ」という学級のムードが文化になっていくと、日々の授業も教師主体から子供たち主体に変わっていくことでしょう。一人一人の発言の質の高まりも手応えとして感じられるはずです。

導入期は、「〇〇リレー」の直前に「ペアトーク」で聴き合う時間を設けましょう。一度、友達に聴いてもらうことで、全体で話す敷居がぐっと低くなります。「ペアトーク」と「〇〇リレー」をセットにして積み重ねることで、振り返りの質も充実していきます。

以下は、学級開き直後の朝の会、帰りの会のプログラムの一例です。

【朝の会】
①朝のあいさつ
②ペアトーク
③健康観察リレー

【帰りの会】
①ペアトーク
②振り返りリレー
③帰りのあいさつ

このような5分間程度で完結する「シンプルなプログラム」だと、日直を担当する子供も迷うことがありません。

「振り返りリレー」を継続していくと、内容をレベルアップしたくなるタイミングが必ずやってきます。「今日見付けたパートナー(隣の席の友達)のいいところ」や「日直さんのキラリ場面」などのテーマを設けるのもよいでしょう。

また、4文以上のエピソードまで詳しく話せるようになると、質が充実していきます。しかし、どうしても帰りの会の時間が長くなってしまう点も否めません。

そこで、日替わりで班の代表が発表する「振り返りセブン」(学級に7班ある場合のネーミング)などにアレンジして取り組みます。挙手をした一部の子供による発表ではなく、日替わりでも「全員が発表する」ことがポイントです。

「振り返りリレー」のような、子供たちが順番に呼名し合いながらリレーのように聴き合う学習活動を継続することが、「自治的な学級」として歩んでいくために効果的です。


鈴木優太(すずき・ゆうた)●宮城県公立小学校教諭。1985年宮城県生まれ。「縁太(えんた)会」を主宰する。『教室ギア55』(東洋館出版社)、『日常アレンジ大全』(明治図書出版)など、著書多数。

参照/鈴木優太『教室ギア55』(東洋館出版社)、鈴木優太『日常アレンジ大全』(明治図書出版)

イラスト/佐藤雅枝

【鈴木優太先生 連載】
子供同士をつなぐ1年生の特別活動(全12回)
どの子も安心して学べる1年生の教室環境(全12回)

【鈴木優太先生 ご著書】
教室ギア55
「日常アレンジ」大全
学級づくり&授業づくりスキル レク&アイスブレイク

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