就学援助 【わかる!教育ニュース#20】
先生だったら知っておきたい、さまざまな教育ニュースについて解説します。連載第20回のテーマは「就学援助」です。
目次
「就学援助」の支給対象になる小中学生は10年連続減少
上履きや体操着、ノート、筆記用具…。物入りの新入学の時期が近付いてきました。学校に通っている間も給食費や修学旅行費など、何かとお金がかさみます。家計がとりわけ苦しい家庭には、負担を軽くする制度もありますが、利用されているのでしょうか。
経済的に厳しい家庭の子のために、市町村が給食費や学用品などの費用を補助する「就学援助」の支給対象になる小中学生が、2021年度は129万8315人で、前年度より2万6706人減ったことが、文部科学省の調査で分かりました(データ参照)。全体に占める割合「就学援助率」も、前年度を0.21ポイント下回る、14.22%。対象者数は10年連続、就学援助率は9年連続の減少です。「子供の数が減った」「経済状況の変化」が要因に挙がりました。
ただ受給するには、希望者自身が申請しなければなりません。つまり、制度が知られ、理解されていることが前提です。周知方法を複数回答で尋ねると、82.3%が、毎年度の進級時に加え、入学時や入学説明会、就学時健康診断など新入学のタイミングにも案内書類を配っていました。「100%」ではありません。教育委員会のホームページや自治体の広報誌に載せているケースもあるものの、心もとなさが残ります。
必要な時に使えるようになっているのかも、疑問です。新入学時の学用品費などを想定した入学前支給に応じているのは、小学校だと84.9%。検討中の5.3%を併せれば90.2%に上るとはいえ、入学前こそ、お金がかかる時。十分な対応と言えるでしょうか。
「子供や家庭が自分から動かなくても、必要な支援が届くようにする」
「経済的理由によって、就学困難と認められる学齢児童又は学齢生徒の保護者に対しては、市町村は、必要な援助を与えなければならない」。学校教育法19条で、そう定めています。就学援助は、この規定に基づき、どんな環境にあっても子供の学びを支えるためにあります。
対象になるのは、生活保護を受給する「要保護」世帯と、自治体が生活保護に近い状態と認定した「準要保護」世帯。ただ受給したくても、申請時に周囲に漏れ伝わるのを警戒する家庭もあるでしょう。調査で申請方法を尋ねたところ、希望する場合に、学校や教育委員会に申請書を出す形がほとんど。全員に申請書を提出してもらい、希望するかどうかを確認する市町村は、ごくわずかでした。
2023年4月、こども家庭庁が始動します。虐待、いじめ、不登校、ヤングケアラー、ひとり親支援など、子供自身や子供を巡る環境の問題を幅広く扱います。「子供の貧困」もその一つです。
どれほど手厚い支援を用意しても、必要な時にためらわずに使えなければ、意義は薄れます。同庁は子供政策で大事にすることに「子供や家庭が自分から動かなくても、必要な支援が届くようにする」を掲げています。口先だけで終わらせてはいけない言葉だと思います。
参照データ
▽文部科学省
https://www.mext.go.jp/content/20221222-mxt_shuugaku-000018788_001.pdf
いじめ 【わかる!教育ニュース#21】はこちらです。
執筆/東京新聞記者・中澤佳子