「生徒指導提要」とは?【知っておきたい教育用語】
2022(令和4)年、12年ぶりに改訂された「生徒指導提要」は、小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方から実際の指導方法等まで、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として作成されたものです。その内容や、改訂のポイントを解説します。
執筆/文京学院大学外国語学部教授・小泉博明
目次
「生徒指導提要」とは?
文部科学省は、「生徒指導提要」について次のように説明しています。
「生徒指導提要」は、小学校段階から高等学校段階までの生徒指導の理論・考え方や実際の指導方法等について、時代の変化に即して網羅的にまとめ、生徒指導の実践に際し教職員間や学校間で共通理解を図り、組織的・体系的な取組を進めることができるよう、生徒指導に関する学校・教職員向けの基本書として、平成22年に作成されました。
文部科学省「生徒指導提要」
2010(平成22)年に初めて「生徒指導提要」が作成されましたが、それ以降に「いじめ防止対策推進法」などの関係法規の成立など学校、生徒指導を取り巻く環境が大きく変化し、生徒指導の課題がより一層深刻化している状況にあります。そのことを踏まえ、生徒指導の基本的な考え方や取組の方向性などを再整理し、今日的な課題に対応していくために、2022年12月に12年ぶりの改訂が行われ、デジタルテキストとなっています。
個別の課題に対する生徒指導
「生徒指導提要(改訂版)」の第Ⅰ部は「生徒指導の基本的な進め方」として「第1章 生徒指導の基礎」「第2章 生徒指導と教育課程」「第3章 チーム学校による生徒指導体制」について整理しています。第Ⅱ部は「個別の課題に対する生徒指導」として「第4章 いじめ」「第5章 暴力行為」「第6章 少年非行」「第7章 児童虐待」「第8章 自殺」「第9章 中途退学」「第10章 不登校」「第11 章インターネット・携帯電話に関わる問題」「第12章 性に関する課題」「第13章 多様な背景を持つ児童生徒への生徒指導」という内容で構成されています。
各個別課題について、関連法規や対応の基本方針に照らしながら、未然防止や早期発見、対応といった観点から、指導にあたっての基本的な考え方や留意すべき事項などについて示しています。
改訂のポイントは?
「生徒指導提要(改訂版)」の「まえがき」では、求められる教育について次のように述べられています。
子供たちの多様化が進み、様々な困難や課題を抱える児童生徒が増える中、学校教育には、子供の発達や教育的ニーズを踏まえつつ、一人一人の可能性を最大限伸ばしていく教育が求められています。
文部科学省「生徒指導提要」
こうした中で、生徒指導の重要な役割について、次のように論じています。
生徒指導は、一人一人が抱える個別の困難や課題に向き合い、「個性の発見とよさや可能性の伸長、社会的資質・能力の発達」に資する重要な役割を有しています。
文部科学省「生徒指導提要」
また、2022年6月に「こども基本法」が成立したことについて次のように述べています。
子供の権利擁護や意見を表明する機会の確保等が法律上位置づけられました。子供たちの健全な成長や自立を促すためには、子供たちが意見を述べたり、他者との対話や議論を通じて考える機会を持つことは重要なことであり、(以下略)
文部科学省「生徒指導提要」
なお、具体的な指導方法としては、校則の見直しを検討する際に児童生徒の意見を聴取する機会を設けることや、児童会・生徒会等の場で校則について確認したり議論したりする機会を設けることなど、実態に合っていない校則の見直しへの第一歩といえる内容が明記されました。
このほか、「生徒指導提要(改訂版)」では、性的マイノリティとされる児童生徒への対応や、インターネット・携帯電話に関わる指導、外国人児童生徒への指導など、今日的な課題についても述べられています。
▼参考資料
文部科学省(PDF)「生徒指導提要」令和4年12月
内閣官房こども家庭庁設立準備室(PDF)「こども基本法説明資料」
文部科学省(ウェブサイト)「校則の見直し等に関する取組事例」令和3年6月8日