「イエナプラン」とは?【知っておきたい教育用語】

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ドイツで始まり、オランダから広がった教育モデルの1つ、イエナプラン。日本でもイエナプランの学校が開校されるなど注目を集めています。

執筆/創価大学大学院教職研究科教授・宮崎猛

イエナプラン」とは

イエナプランはドイツの教育学者ペーター・ペーターセン(Peter Petersen,1884〜1952)によって創始されました。オランダには1950年代に教育学者スース・フロイデンタール(S.J.C.Freudenthal 1908〜1986)によって取り入れられました。1960年にオランダで初めてのイエナプラン校が設立され、以降イエナプラン教育の考え方は公教育制度にも影響を与えながら広まることになります。現在、オランダには公立校・私立校をあわせ、200校以上のイエナプラン小学校があります。

イエナプラン教育では、知識を伝達する教育方法ではなく、子どもの個性や子ども自身の意欲を重視した教育が行われています。2000年代になって、日本でも教育関係者を中心に知られるようになりました。個性重視や個別最適な学びが求められようになったことなどから注目されています。

イエナプランの特徴

オランダではイエナプランスクールの数が増えたことから、1992年に「イエナプラン20の原則」がつくられました。原則1から原則10までは子どもの健全な発達のための人や社会のあり方について述べられ、原則11から原則20では学校教育のあり方について述べられています。いくつか特徴的な原則のポイントをあげてみます。

原則1:すべての子どもとすべての大人はそれぞれかけがえのない価値をもっている。

原則2:その人の環境や背景に関係なく(人種・国籍・性別・社会的環境等に左右されず)、発達する権利をもっている。

原則5:各人は文化の担い手・革新者として認められる。

原則7:人は個性を発達させるための場と、刺激が与えられる共同社会をつくっていかなければならない。

原則11:学校は、自立的で協働的な組織であり、社会からの影響を受けると同時に社会に対して影響を与える独立組織である。

原則15:対話・遊び・仕事(学習)・イベントという基本活動が循環する教育形態で行われる。

原則16:お互いに学び合い助け合うという目的のもと、年齢や発達程度の違いがある子どもたちのグループが慎重につくられる。

原則19:行動や成績について評価する際は、子どもとの話し合いを通じて行う。

こうした原則のもと、イエナプランスクールではユニークな教育が展開されています。例えば教室はリビングのような場所とされていて、「学びと生活の場」としてクラスの子どもと担任教員によってデザインされます。子どもたちは自分のペースで学ぶことが奨励され、先生から学ぶだけではなく1人で学んだり、異年齢での子ども同士で学んだりすることが重視されます。また、ワールドオリエンテーションという、子どもが好奇心をもとに探究していく時間が設定されています。

ペーターセン自身は、イエナ大学実験校での実践を「人間の学校」と呼んでいました。近代化によって合理化や物質至上主義が進むことで、人間が疎外されるのではないかと懸念していたようです。有機的で温かい人間関係の構築を、教育を通して実現しようと考えていたのです。今日求められているアクティブ・ラーニングを、その本質から教育の根幹に据えている教育方法ということもいえるでしょう。

日本とイエナプラン

今日、イエナプランが日本に広く知られるようになったのは、リヒテルズ直子氏が、2004年に『オランダの教育ー多様性が一人ひとりの子どもを育てるー』、2006年に『オランダの個別教育はなぜ成功したのか―イエナプラン教育に学ぶー』を発表し、イエナプランを日本に紹介したことがきっかけです。リヒテルズ直子氏は1990年代よりオランダに在住し、オランダの教育や社会情勢について研究を続け、その成果を著書などを通して発信してきました。

2010年にはイエナプラン教育の発展・普及のための組織として日本イエナプラン教育協会が結成されました。こうした流れを受けて2019年に長野県佐久穂町に「イエナプランスクール大日向小学校」が開校し、2022年には同中学校が開校しました。さらに2022年には、広島県福山市立「常石ともに学園」が、公立小として初めてイエナプランに基づいた学校教育を始めました。

▼参考資料
リヒテルズ直子 著『オランダの個別教育はなぜ成功したのか ―イエナプラン教育に学ぶー 』平凡社、2006年
日本イエナプラン教育協会(ウェブサイト)「イエナプラン教育とは
イエナプランスクール大日向小学校・中学校(ウェブサイト)「学校法人 茂来学園 大日向小学校・大日向中学校
常石ともに学園(ウェブサイト)「ともに学び ともに生きる 常石ともに学園

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