「授業参観を成功させよう」保護者を味方にする学級経営術 #2
学級担任なら、一度は保護者対応に悩んだ経験があるのではないでしょうか。しかし、保護者が味方になってくれたら、こんなに心強いことはありません。この連載では、保護者が担任と学級を応援したくなるような学級経営について、その月の学校状況に合わせたアイデアを紹介します。第2回は、授業参観を取り上げます。
執筆/千葉県公立小学校校長・瀧澤真
目次
保護者は2つの視点で担任を見る
コロナウイルス感染症のため、授業参観があまり行われてこなかった学校も多いのではないでしょうか。
私の勤務校では、今年の1月に3年ぶりに授業参観を実施しました(オンラインでの授業参観は何度もやりましたが、リアルでは3年ぶり)。児童数1000人を超す大規模校のため、どうしても密になってしまうという事情からですが、小規模校にしても、コロナ前と同様の授業参観を実施していた学校はさほど多くないと思います。
そのため、若い先生方には、授業参観の経験が不足しています。勤務校ではその3年ぶりの参観に際し、「これが初めてリアルに保護者を教室に入れての授業参観だ、という先生はいますか?」と聞いたら、6人の手が挙がりました。それ以外の先生方にとっても、3年ぶりということで、少し緊張している方が多いようでした。
いささか前置きが長くなりましたが、今年度はおそらく以前のように授業参観を定期的に行えるようになるでしょう。そして、その対応をしっかりと考えないと、保護者からの信頼は得られないと言いたいのです。
特に重要なのは、1回目の授業参観です。前回の連載第1回で、子供たちとの出会いに全力をということを書きました。
授業参観は、保護者との出会いの場です。この出会いにも全力を尽くしましょう。
まず大切なのは第一印象です。
1回目の授業参観というのは、我が子のことはもちろんですが、多くの保護者は、「今年はどんな先生なのだろうか」と担任のことも見に来るのです。
ところで、「どんな先生なのだろうか」には2つの視点があります。
①どんな人柄の先生なのか
②どんなふうに我が子の教育をしてくれる先生なのか
それぞれについて考えていきましょう。
どんな人柄の先生?
第一印象で、なんだか今年の担任は冷たそうだな、暗そうだななんてマイナスイメージをもたれると、その後にあまりよくない影響が出ます。
校長という立場上、担任に不満がある保護者から相談を受けることがあるのですが、「はじめから、なんか暗い先生だと思っていたんです」「冷たそうな先生だと思ってましたけど、やっぱり」と話す方が実に多いのです。最初の出会いからつまずいていたのだろうなあと想像できます。
出会いだけよければそれでよいわけではありませんが、悪いよりはずっとましです。
ということで、第一印象をプラスに!
そんなことを言われても、自分はそんなに明るく元気なタイプではないから無理だという人はいませんか。でも考えてみてください。
千葉県にある某テーマパークに行ったとします。そこで出迎えてくれるキャストが、小さな声で、暗く挨拶してきたらどう思いますか。なんだか気分が盛り上がらないなあ、という気持ちになりませんか。
明るく元気に挨拶してくれるから、今日は楽しむぞ! と気分が盛り上がるのではないですか。
では、某テーマパークのキャストは、みんなもともと明るく元気な人なのでしょうか。そんなことはありません(私、そこで3年間アルバイトしていましたので、断言できます)。
仕事だからできるのです。仕事だからやらなければならないのです。
人と接する仕事を選んだ以上、自分の本来の性格とは関係なく、そこで求められるキャラクターを演じられなければプロとは言えません。
そして小学校教員は、明るく、優しく、元気である必要があります(過度に明るい必要はないですよ。適度に)。
そのために一番大切なのが笑顔です。笑顔が苦手ならば、普段の顔、素の顔が笑顔になるくらい、鏡の前で練習をしましょう。
もちろん、保護者の前だけでなく、子供の前でも、明るく、優しく、元気であるキャラクターを演じてください。そんなふうに機嫌よく接してくれる人の影響は大きいのです。
逆に、暗く冷たい人に毎日接したらどうなるでしょうか。教師は最大の環境だとも言われるように、そういう部分が大きいのです。もちろん、面白いギャグを言ったり、芸人のようなリアクションをしたりする必要はありません。ただ、明るく、優しく、元気でいるように常に心がける。教室に一歩入ったら、いつも機嫌よく笑顔でいる。
最初は演技でも、続けていると、いつのまにか職業スイッチが入り、自然にできるようになるのです。
どんな教育をしてくれる先生?
どんな教育といっても、研究授業のような視点ではありません。一番のポイントは、「我が子がどのように扱われているか」を見に来るということです。
我が子が手を挙げて意見を言ったけれど、それが明らかに間違いだった。そのときに、スルーして「ほかに」と言ったら、保護者はどう思うでしょうか。我が子が大事にされていないと感じますよね。
「少し違っているようだけど、勇気を出して発表してくれてありがとう」と言ってくれたらどうでしょうか。
掲示物や教室環境も同じです。誤字だらけの掲示物が貼られていたら、「先生は我が子のことを見てくれていない」と思いませんか。逆に、真っ赤に添削した掲示物だったらどう思いますか。うちの子ができないということを公開している、恥をかかせていると思うのではないでしょうか。
作品のコメントもそうです。どうでもいいようなスタンプが押してあるだけだったら、どう思いますか。コメントを書くならば、温かいメッセージ、その子なりのよさを認めるメッセージを書きましょう(子供の作品には朱書きしないという考えもあります)。
授業自体については、特別なネタなどをやる必要はありません。
ただし、保護者の気持ちを考えるならば、国語か算数をおすすめします。保護者は我が子がしっかり勉強しているかどうかが気になるところですので、1時間ずっと絵を描いているような授業は、1回目としてはふさわしくないでしょう。
内容はオーソドックスなものでよいのですが、1回は全員が発表できるような場を用意しましょう。
国語ならば、一文交代読みで、全員が1回は音読発表できるようにするとよいでしょう(音読が苦手な子には、ここを読んでもらうよと教え、練習させておきましょう)。
算数ならば、フラッシュカードで九九やたし算などを順番に言わせていくというのも一案です。
保護者の印象を大きく決定づける1回目の授業参観、事前準備と最高の笑顔で成功させましょう。
瀧澤真(たきざわ・まこと)●千葉県公立小学校校長。1967年埼玉県生まれ。千葉県公立小学校教諭、教頭、袖ヶ浦市教育委員会学校教育課長などを経て現職。木更津技法研主宰。著書に『WHYでわかる!HOWでできる!国語の授業Q&A』(明治図書出版)、『道徳読み活用法』(さくら社)、『職員室がつらくなったら読む本。』(学陽書房)など、多数。
イラスト/イラストAC
【瀧澤真先生執筆 連載】
学級担任の時短術(全12回)
【瀧澤真先生ご著書】
まわりの先生から「むむっ! 授業の腕、プロ級になったね」と言われる本。
まわりの先生から「おっ! クラスまとまったね」と言われる本。