旅行に施設に…いろいろ役立つ「マネジメント」の資格に挑戦!~せんせいだってどんどん勉強#2

連載
マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~

元山形県公立学校教頭

山田隆弘

新しい年を迎え、今年は何か新しいことにチャレンジしようと考えている方も多いのではないかと思います。そこで、新春特別企画として、せんせいのスキルアップをテーマに3本、短期連載記事をおとどけします。今回は、第2回目。マネジメント関連の資格へのチャレンジについてご紹介します。
マネジメントに関する資格は、旅行管理、施設管理、衛生管理など多岐にわたります。教科指導とは直接関係ありませんが、資格取得のための学習をしていくと、管理とはこういうことなのかと実感としてとらえることができてきます。もしかすると、退職後のセカンドライフ時に役立つかもしれませんよ。

【連載】マスターヨーダの喫茶室~楽しい教職サポートルーム~


前回の記事はこちら!
英検に漢字に…「語学」の資格にチャレンジしてみよう!~せんせいだってどんどん勉強#1

<難易度を私見で★5段階にわけましたので参考までに…>

国内旅行業務取扱管理者試験(全国旅行業協会)

旅行関係業の方のための資格試験です。取得のためには、「旅行業法及びこれに基づく命令(法令)」「旅行業約款、運送約款及び宿泊 約款(約款)」「 国内旅行実務(国内実務)」の3科目を学びます。最初の(法令)はほぼ学校と関係がありません。しかし、教育旅行を企画するとき、旅行社が出してくる旅行プランについて深く理解することができるようになります。
広く言えば社会科に関連する資格と言えるでしょう。このほかにも、

「旅行地理検定」(旅行地理検定協会)
「地図地理検定」(日本地図センター・国土地理協会)
「歴史能力検定」(歴史能力検定協会)
「世界遺産検定」(NPO法人世界遺産アカデミー)

などがあります。
このほか、各自治体などが主催している、ご当地検定というのも多くあります。郷土愛や歴史愛をはかる目的などで、楽しく挑戦するのも良いですね。
国家資格として一般的に通用するのは、国内旅行業務取扱管理者試験でしょう。これに海外旅行、海外の観光の知識を加味した「総合旅行業務管理者」という資格もあります。年1回だけの試験開催ですので、計画的な準備が必要です。

こんなことをやってみました。

○対策1 テレビの旅番組視聴
旅番組は情報の宝庫です。視聴しながらメモをしていきます。各地の旅に関する知識が入ります。各県の食べ物などを紹介する番組も貴重です。実際に出題されますので、メモは必須です。そのほか、図書館などににもある各県の旅情報誌などをながめるのも勉強になります。

○対策2 教本と問題集
試験では、出題されるものがほぼ決まっているので、いかに時間をかけて学習し、解法パターンを身につけるかです。試験会場には、独学した内容をまとめた素晴らしいサブノートを見返す人、重要事項をA3のペーパー1枚に図解化してそれを眺めている人、恐ろしいほどの付箋が貼りついた書籍を何度も何度も見直している人などが見受けられました。
人それぞれの勉強法、まとめ方があります。わたしは、オーソドックスに教本と問題集に取り組みました。これに直接書き込むようにして繰り返し学びました。


「約款」については、修学旅行や社会見学旅行などを計画していく時、旅行社より見積書や計画書をわたされ、なぜこの予算になるのか、なぜこの旅程になるのか示された素案についてよく理解できるようになります。また、キャンセルする場合の条件、旅程でのバス会社、鉄道会社の立場などの理解が深まります。
そして、試験の一領域【国内実務】ですが、これが社会科の授業での地理や歴史、産業、文化の学びと直結します。習得した知識が役に立ちます。知識と知識が繋がり合っていくさまを体験するのは実におもしろいですし、あらためて体系的な学び直しができます。
ところで、旅行は、人生を深めるためにやりたいことの一つではないかと思います。この資格をもっていることが自分自身の豊かな旅行プランづくりにつながり、最近重きが置かれている「体験型マイ旅プラン」を設計するための旅行教養術ともなっていきます。


国内旅行業務取扱管理者試験は10年前から何年かおきに受検しています。「地理」はだいじょうぶなのですが、「旅行実務」がなかなか難しかったです。どうにか今年度合格できました。きちんとした対策をしていけば合格できると思います。旅が好きな人はぜひチャレンジしてほしいです。
ところで、各地で実施されているご当地検定は初級レベルだと参考書一冊熟読で合格できます。これもおもしろいです。
 ご当地検定 (取得40代前半) 
 国内旅行業務取扱管理者 ★★★(今年度取得完了)  
 総合旅行業務取扱管理者 ★★★★ 

福祉住環境コーディネーターほか

福祉住環境コーディネーター3級は、商工会議所が運営する福祉関係の入門資格試験です。介護を要する方のための住居内のさまざまな介護に関わる施設、道具などの知識や活用方法などが問われます。特別支援とも関連があり、基礎的な知識で取得できる資格ですので、教員としてはこれで十分かと思います。
ほかにも周囲の教員の中には、リタイア後に大学に再入学し、社会福祉士、精神保健福祉士などを取得している方がいます。また、心理系大学院に進学し、カウンセラーの資格を取得している方もいます。
最近では児童発達支援士など発達障がい児に関するもの、認知症介助士など介護に関わるものなど、福祉関係の民間資格もたくさん出てきています。特別支援教育に携わる方は、関連分野も多いので挑戦してみてはいかがでしょうか。

こんなことをやってみました。

○対策 教本問題集一体型書籍で
3級レベルだと実務経験がなくても、挑戦できる資格です。教本問題集一体型の書籍を丁寧に読みこんでいけばどうにかマスターできます。福祉系への就職を目指す高校生もがんばって受検しています。


授業では、総合的な学習で福祉を扱う場合や道徳での福祉体験学習、あるいは保健学習などで役に立ちます。さらに、学校の設備がとても気になってきます。施設の利用者の視点で物事を見ることができるようになります。
例えば、ロッカーや下駄箱の位置は適切か、児童の上着をかけておくフックはぶつかってケガをしないようになっているか、など安全面でさらに気を配ることができるようになります。実際にこういったことに起因する事故が起きていますので、児童を守るための視野を広げていきたいものだと思います。


この知識は両親の介護関連にかなり役に立ちました。学校では、肢体不自由児関連の特別支援教育などにも生かすことができます。
 福祉住環境コーディネーター3級 ★★(取得40代前半)
 福祉住環境コーディネーター2級 ★★★
 福祉住環境コーディネーター1級 ★★★★

 社会福祉士、精神保健福祉士 ★★★★★
 臨床心理士 ★★★★★
 (大学や大学院再入学という事も含めて高難易度)

危険物取扱者乙四種

これは、管理職向けの資格かもしれませんが、理科の得意な先生は腕試しで受検するのもいいでしょう。業務で危険物を取り扱う際に必要となる資格です。
主な出題範囲は、「危険物に関する法令」「基礎的な物理学及び基礎的な化学」「危険物の性質並びにその火災予防及び消火の方法」などです。火災の予防など避難訓練時の指導などには役に立つと思いますが、物理化学の知識は中学校以上のレベルなので、小学校の教育には直接的にはつながってこないかもしれません。
この資格を取得していると、ガソリンスタンドのスタッフやタンクローリーの運転手などとしても働くことができるようです。試験会場には工業高校の生徒やガソリンスタンドの制服を着ている受検者も多くいました。
人気のある資格ですが、合格率もそんなに高くはないので、時間をかけて計画的にしかも体系的な学習が必要です。「乙四種」はほかの関連の危険物取扱者の各種の資格試験にもつながります。
なお、大量の灯油などを扱う地下タンクなどがある学校では有資格者が必要です。

こんな取り組みをしました。

○対策 計画的に教本で学習
ある程度の見通しをもち、少しずつ学習していく必要があります。一度過去問をやってみて、得意だなあと思う分野から取り組み、マスターし、苦手な分野を丁寧にやっていくのがいいと思います。知り合いの理科のせんせいは、法規関係だけをやり、理科的な問題は特に事前に学習していなくてもだいじょうぶだったと言っていました。わたしは、サブノートまではいきませんでしたが、ポイントを整理したノートをつくり繰り返し学習しました。


学校環境整備や施設設備への気配りができるようになります。これは本来は教頭せんせいのお仕事でしょうが、担任のせんせい方も施設管理の視点をもつことで、授業の準備段階での危機の予想ができるようになってきます。要は危機管理の基礎感覚を養うことにつながるということです。
余談ですが、以前の勤務校保護者で民間企業の管理業務系の総務人事担当部長さんとお話した時、こういった資格を取得している人は、直接会社の業務とは関係なくとも、意識が高い人としてみるそうです。採用する場合、優遇するということでした。セカンドキャリアを意識する人にはとてもいい資格になるかもしれないです。


危険物取扱者の試験は、扱うもの(薬品等)によって多くの区分がありますので、興味のある方は調べてみてください。以前小学生でこの危険物取扱資格を全部取得した事例がニュースで紹介されていました。驚きです。
危険物取扱者乙4種 ★★★(取得50代前半)
理科の専科や、化学の得意な方はちょっと法規を覚えるだけでしょうから、人によってはだと思います。
なお、すべての学校管理職の必須ライセンスに「防火管理者」というのがありますが、これは講習(一日)だけで取得できます。
防火管理者 (取得40代後半)

衛生管理者

50人以上の事業所では1人以上の衛生管理者を選任する必要があります。一般企業からは継続的に高いニーズがあるようです。学校では管理職にある方や養護教諭が取得していれば、労務管理あるいは職員の健康増進のためにたいへん役に立つと思います。
第一種と第二種があり、第一種は「有害業務(化学薬品の取り扱いなど)を含む業種でも業務を行える」わけですが、学校ではそこまで必要がないでしょう。第二種でじゅうぶんだと思われます。
「関係法令(労働基準法、労働安全衛生法)」「労働衛生」「労働生理」などの3科目です。
合格率が50%台ですが、それなりに学習して知識を整理していないと合格できませんので、計画的な学習が必要です。

○対策 計画的に教本で学習
内容は難しくありませんので、さらっと学ぶことができます。しっかり知識を整理しておきたいです。


子どもたちの生活環境に気をくばる視点をもち、自分のあるいは同僚の健康管理などにも目をむけることができるようになります。勤務校の環境をもう一度見直すきっかけとなります。管理職の場合は、児童だけでなく教職員の健康管理に一層気を配ることができるようになります。


これから注目される資格だと思います。管理職の方々には、教職員を守る労務管理領域の教養としてぜひ取得してもらいたいです。
 第二種衛生管理者 ★★(取得50代前半)
 第一種衛生管理者 ★★★

マネジメントに関わる資格はかなりあります。けっこう学校のさまざまなところに関係があるものが多いです。担任としては、直接的には必要がないでしょうが、学校管理的な仕事を志す方は、取得しておくことにこしたことはありません。現在、わたしは再就職(?)のことも考えて、マンション管理士、管理業務主任者など、特に施設管理に関する資格に挑戦しています。これらも詳細をみていくと学校の施設管理にばっちり応用できることが分かり、教職とはいかに広い要素で作られているものなのかと、思いを新たにします。


前回の記事はこちら! せんせいだってどんどん勉強 ~「語学」の資格にチャレンジしよう!~

イラスト/したらみ


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山田隆弘(ようだたかひろ)
1960年生まれ。姓は、珍しい読み方で「ようだ」と読みます。この呼び名は人名辞典などにもきちんと載っています。名前だけで目立ってしまいます。
公立小学校で37年間教職につき、管理職なども務め退職した後、再任用教職員として、教科指導、教育相談、初任者指導などにあたっています。
現職教員時代は、民間教育サークルでたくさんの人と出会い、さまざまな分野を学びました。
また、現職研修で大学院で教育経営学を学び、学級経営論や校内研究論などをまとめたり、教育月刊誌などで授業実践を発表したりしてきました。
『楽しく教員を続けていく』ということをライフワークにしています。
ここ数年ボランティアで、教員採用試験や管理職選考試験に挑む人たちを支援しています。興味のあるものが多岐にわたり、さまざまな資格にも挑戦しているところです。

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