【相談募集中】児童の問題行動を改善する糸口が見つかりません
50代の副担任教諭から「みん教相談室」へ相談が寄せられました。問題行動を繰り返す小4男児に指導するもののなかなか改善されず、逆に保護者からクレームが来るという始末……。対応策に困っているそうです。この悩みに兵庫県公立小学校校長・俵原正仁先生が回答した内容をこちらでシェアします。
目次
Q. 児童の問題行動を改善する糸口が見つからない
小学校4年男児について。給食時、当番であるにも関わらずエプロンの身支度をせず、自分の分担の仕事もせずにいるため、担任や副担任である私も、身支度をするように毎日言葉がけをしていたところ、家へ帰って親に「自分ばかり注意されている」ようなことを伝え、ボイスレコーダーを持って学校へ来ました。
これは一例で、その児童は、宿題はやってこない、提出物は出さない、授業が始まっても教室になかなか戻ってこない、決められた約束を守らない、仲間と徒党を組み教室から出て行ってしまうなど問題行動が多いのですが、親は学校の学習や生活に関心を持たず、その児童には何も指導しないのに、先生からきつく注意されると「子どもが傷ついた」などとクレームを入れてきます。親からは「やられたらやり返せ」と教えられているそうです。
こちらが子供の気持ちを聞こうと思っても、何か話しかけようとすると逃げて行ってしまいます(これまできつく言ってしまっていたから、そうなってしまったのは分かっていますが……)。私は担任ではないので、担任と相談しながら、また、指導する時の言い方を変えるなどして様子を見ています。このような子にどのように寄り添い、指導していったらよいのでしょうか。(もりもりきのこ先生・50代女性)
A. 担任に寄り添い、管理職と連携して「チーム学校」で対応を!
もりもりきのこ先生、ご相談ありがとうございます。
「このような子にどのように寄り添い、指導していったらよいのでしょうか」というご相談ですが、もりもりきのこ先生にまずお願いしたいのが、担任の先生に寄り添い、力づけることです。そして、管理職、学年の先生、生徒指導担当などの先生と連携してチーム学校として対応してください。
担任が一人で抱え込むようなことにならないように気をつけてください。特に、管理職に報告することは重要です。「ホウレンソウ」をしっかりと行うことで、責任が管理職に移ります。いい管理職ほど、真摯に対応してくれるでしょうし、そうでない管理職なら責任を押し付けてしまいましょう(笑)。
ちなみに、「一人で抱え込まない」ということは、文科省の生徒指導提要にも次のように述べられています。
① 一人で抱え込まない
文部科学省「生徒指導提要」第3章チーム学校による生徒指導体制より
一人でやれることには限界があります。一人で仕事をこなさなくてはという思い込みを捨てて組織で関わることで、児童生徒理解も対応も柔軟できめ細かいものになります。
多分、このようなことはすでに行っているかもしれませんが、職員室の雰囲気がよければ、たいていのことは頑張ることができます。以前、私は同じ学校の先生から、次のような言葉をいただいたことがあります。
「教室は相変わらず、大変やけど、職員室に帰ってきて、みんなの顔を見るとホッとするわ。クラスはなんぼしんどくても、学年のメンバーがよかったら、何とか頑張れるもんやね」
しんどい思いをしている先生にとって、温かい雰囲気の職員室は、元気を回復することができる拠り所になるということです。そのことを頭の片隅に置きながら、担任の先生に温かい声かけをして、寄り添ってください。
では、ここからは、その子への対応についてお話しします。
あくまでも相談を読んでの印象ですが、この子自体、家でも、保護者の方からあまり関わってもらっていないような感じを受けました。もしかしたら、本人も無意識のうちに、他の子とは違うことをすることで、先生方に関わってもらおうとしているのかもしれません。
それならば、「ほめる」というプラスの関わりを多くすることが、この子をいい方向に向かわせてくれるような気がします。叱ることよりもほめることを多くしていけば、その子も先生は自分のことを認めてくれると感じるはずです。
そのためには、叱る回数とほめる回数の割合を「1対9」ぐらいになるように意識してください。一見、難しそうな感じもしますが、たくさんほめるためのコツがあります。それは、「小さいことをほめる」ということです。
ほめることが無いように見えるのは、誰からも称賛されるようなすごいことをしなければ、ほめることはできない……と、教師が考えているからです。大きなことでほめようとするから、「〇〇くんはほめることがない」ということになるのです。
「朝、校長先生に挨拶をしていた」
「授業中、席に座っていた」
「給食を残さず食べた」
「外で元気に遊んでいる」
など、先生にとってはできて当たり前のように思えることをほめていきます。もちろん、どうしても叱らなければいけないことについては、スルーすることなく冷静に叱らなければいけません。
ただ、大きなことで叱ることが1つあったとしても、その後、小さなことでもいいので、9つほめることができれば、叱るとほめるの割合を「1対9」にすることができます。質も大事ですが、ほめる量を増やすことはもっと大切です。無理やりにでもほめる回数を増やす努力をしてください。
また、叱る回数が減り、ほめる回数がぐっと増えることで、教室全体にプラスの空気が生まれます。このことは、この子だけでなく、クラスの他の子にとってもいいことです。(ボイスレコーダーを持参しているということですが、このことをチャンスと捉えてもいいのではないでしょうか? その子に対するほめ言葉をボイスレコーダーにバンバン録音してもらえば、保護者に対してもいいアピールにもなります)
クラスに気になる子がいると、どうしてもその子一人に意識が行き過ぎて、他の子への対応がおろそかになりがちです。クラスにいるのはその子だけではありません。いつもなら気がつくような予兆を見逃したり、対応が遅れたりして、トラブルに発展することがあります。
そして、その対応に追われ、また別の新たな兆候を見逃すということにつながることもあります。こうなると、クラスのあちらこちらでトラブルが雪だるま式に増えていくという最悪の事態に行きつきます。そうならないためにも、クラスの他の子にも目を向けることを忘れずに、視野が狭くならないよう気を付けてください。
以上、まとめるとこうなります。
- チーム学校として対応する。管理職に相談する。
- ほめる回数を圧倒的に増やす。小さいことをたくさんほめる。
- その子だけにとらわれない。クラスの他の子も意識する
この中で、一番重要なのは「1・チーム学校として対応する。管理職に相談する」になります。2と3については、もりもりきのこ先生の相談を読ませていただいて、私が今まで出会った子どもたちからイメージした対応策を述べさせてもらったにすぎません。
私自身も、実際にその子を目の前にしたら、また違う対応をするかもしれません。やはり、一番、頼りになるのは、実際にその子(保護者)を目の前で見ている学校の先生方になります。現場の感覚を大切にして、2や3については、あくまでも参考意見としてご活用ください。
私の好きな言葉に、「笑顔の教師が笑顔の子どもを育てます」というものがあります。大変なことも多いと思いますが、もりもりきのこ先生には、冒頭でお願いしたように、笑顔で担任に寄り添っていただき、笑顔の教師を、そして笑顔の子どもを育ててほしいと思っています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。