「中1ギャップ」と不登校の未然防止
「中1ギャップ」と不登校を未然に防止するために、キャリア・パスポートの活用などもふまえたアプローチの工夫について考えます。
執筆/神奈川県公立小学校教諭・青木洋俊
目次
「中1ギャップ」って何?
担任の声かけ次第で不安は期待や希望に!
「中学校の勉強についていけるかな?」
今の学びの延長に中学校の学びがあることを伝えましょう。
「先輩はやさしくしてくれるかな?」
小学校での縦割り活動などの経験を想起できるようにすると安心できます。
「他校から来た人と仲良くできるかな?」
多様な他者とのかかわりが自分の幅を広げられることを伝えましょう。
「中学校の先生って怖そうだな」
小学校の教員と中学校の教員はつながっているということを伝えましょう。
「やりたい部活って見つかるかな?」
自分の幅を広げるチャンスという考え方も伝えたいものです。
キャリア・カウンセリング
こうした対話は「キャリア・カウンセリング」のひとつです。安易に「大丈夫」と伝えるのではなく、まずは、子供たちの不安に寄り添い、思いを聞くことが大切です。その上で、子供の安心や期待につなげられるように適切なアドバイスを行います。
「キャリア・パスポート」を引き継ぎにも活用
令和2年から、「キャリア・パスポート」の取組が実施されています。「中学校見学会」で取り組んだワークシートなどを「キャリア・パスポート」のひとつとすることも考えられます。その「キャリア・パスポート」を示しながら引き継ぎを行うことで、中学校の先生も興味を持って読んでくださいます。
児童への担任や家庭からのメッセージを含め、引き継ぎの際に、児童が蓄積してきた学校生活の軌跡を紹介しながら中学校の先生に伝えることも効果的です。
不登校児童に対するアプローチ
気持ちの変化のきっかけづくりを
小学校時代に不登校を経験していた児童が、中学校から登校できるようになったケースがあります。環境の変化は、不登校から復帰するチャンスにもなります。
そのためには、担任の日々の働きかけが重要です。学校には来られなくても、放課後であれば来ることができる児童へのかかわりを継続したことで、学校に行ってみようと思うようになった児童もいます。
家庭との連携も大切
きっとこれまでも不登校児童のご家庭と連絡をとりながら、1年間の教育活動を行ってきていることと思います。卒業に向けて、中学校生活へ向けて、どうしていくかといった連絡を密にとっていくことが大切です。
不登校児童のための卒業式
「クラス全員で卒業式を迎えたい」というのが、担任としての思いでしょう。卒業式の直前まで不登校児童の参加のために家庭や本人の思いを聴きながら卒業式を迎えましょう。
卒業式参加の場合の配慮
練習に一度も参加できていない場合も考えられます。前日の放課後や当日の朝に、個別に練習時間を設けるなど、安心して参加できるようにしましょう。
卒業式に参加できない場合の配慮
卒業式に直接参加できない場合を想定しながら準備を進めることも大切です。1人1台タブレット端末の時代ですから、オンラインで参加することも考えられます。また、卒業式終了後に、登校できるようであれば、個別の「卒業証書授与式」を行うことも考えられます。児童の当日のコンディションに応じて対応できるようにしておくことが大切です。
節目をしっかりつくることで、中学校へ一歩踏み出すきっかけになることもあります。
イラスト/高橋正輝
『教育技術 小五小六』2022年2/3月号より