「21世紀型教育」とは?【知っておきたい教育用語】
21世紀に入り20数年が経ち、これまで誰も経験したことのないことがいつどこで起こるかわからない「VUCAな時代」を迎えています。子どもたちには、10年後の社会がどのように変化していても、その形成者として生き抜く力を育成する必要があります。つまり、教育が担う役割も変化しているのです。その総称としての「21世紀型教育」について、その背景や学校での実現への見通しなどを見ていきましょう。
執筆/創価大学大学院教職研究科教授・渡辺秀貴

目次
「21世紀型教育」とは?
21世紀に求められる教育のあり方について文部科学省が整理した資料に、「21世紀にふさわしい学校や学び、学校教育の情報化が果たす役割等について」があります。ここでは、子ども一人ひとりは多くの能力を有していること、それを自ら発見し、磨き、他者・社会に貢献することで喜びと糧を得ていくこと、そういう人生は一つの幸福な人生であり、そうした人生を一人でも多くの子どもが歩めるような学びの場を創り、維持向上させることが、21世紀の日本の教育の目的でありたいということなどが示されています。
その上で、情報化社会である21世紀には、情報創造力や批判的思考力、問題解決力、コミュニケーション力、プロジェクト力、ICT活用力などのスキルが求められていくと述べています。このようなスキルはこれまでの学校教育では身に付けることが難しく、学習環境やカリキュラムも見直していく必要もあるとしています。
教育改革の背景
「VUCAな時代」を背景に、知識基盤社会、多文化共生社会、情報化社会が本格的、急速に進み、教育も大きな転換期を迎えているといえます。学校で共通に身に付けた知識や技能だけでは解決できない問題がどんどん増えていくことが予想されます。問題状況を判断して必要な情報を検索したり、それらを統合したり、他者とコミュニケーションを図りながら新たな知識を創り出したりして、協働的に問題を解決する資質や能力が、次代の社会の形成者となる子ども一人ひとりに育むことが必要になっています。
つまり、知識や技能の習得を学びのゴールとするのではなく、「実生活や実社会においていかに知識や技能を活用して問題が解決できるか」を育成すべき力の中核に据える教育への転換を目指しているということです。この流れの中で登場したのが、「21世紀型能力」です。 このような教育改革は、世界の教育の動向とも共通した流れと言えます。すなわち、OECDの「キー・コンピテンシー」と、デジタル化・ネットワーク化された環境で協調的に問題解決する社会でICTリテラシーも含めた資質・能力を育成しようとするアメリカの「21世紀型スキル」です。