小3算数「分数」指導アイデア
執筆/富山大学人間発達科学部附属小学校教諭・羽柴直子
監修/文部科学省教科調査官・笠井健一、前・富山県公立小学校校長・中川愼一
目次
本時のねらい(本時7/10時 分数の大きさやしくみ、大小について学習した後)
分数のたし算のしかたについて、整数のたし算や図などと関連付けながら、単位分数のいくつ分をもとにして考える。
評価規準
単位分数のいくつ分と見ることで、分数も整数と同じようにたし算やひき算ができることを式や図などを用いて考えている。(思考・判断・表現)
問題
コーヒーが[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]L と牛乳が[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]L あります。コーヒーと牛乳を全部まぜてコーヒー牛乳を作ると、なんLになりますか。
コーヒー牛乳は、なんL作れますか。
コーヒーと牛乳を合わせるのだから、たし算で求めることができます。
式は[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]になるね。
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]L も[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]L も1L の半分よりは少ないけど、合わせたら1Lの半分よりは多くなりそうだね。
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]L も[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]L も1L の半分よりは少ないから、合わせても1Lより多くなることはないね。
コーヒー牛乳は、1Lの半分よりは多くて、1Lよりは少なくなりそうだと分かったけど、正確にはなんLになるのかな。計算して求めてみよう。
でも、分数のたし算は、どのように計算するのかな。
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]の計算のしかたを考えよう。
見通し
- 答えは、1Lの半分よりは多くて、1Lよりは少なくなる。[MATH]\(\frac{4}{8}\)[/MATH]<□<[MATH]\(\frac{8}{8}\)[/MATH] 〔結果の見通し〕
- 「20+30 は、10をもとにすると10が(2+3)で計算できる」の考え方が使えそう。 〔方法の見通し〕
自力解決の様子
A つまずいている子
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{5}{16}\)[/MATH]
分母どうし、分子どうしをたしている。
B 素朴に解いている子
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]=[MATH]\(\frac{5}{8}\)[/MATH]
分子のみたしている。
C ねらい通り解いている子
[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]をもとにして考えると、[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH] は [MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH] が(2+3)個分だから、[MATH]\(\frac{5}{8}\)[/MATH] になる。
単位分数のいくつ分に着目している。
※もとにする数に着目して、計算のしかたを考えている。
学び合いの計画
ここでは、分数の計算ができるようになるだけではなく、どうして分子をたすと答えが求められるのかを既習事項を生かして考えることを大切にします。分数の計算は未習でも、大きい数で学習した「もとにする数のいくつ分」という考え方を生かし、整数の計算に帰着して考えていきます。
問題場面は、[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]L と[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]L を合わせるという設定です。1Lのますの図で表すことで、「[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]のいくつ分」という考え方に気付きやすくなります。また、合わせたときのおよその量をイメージすることができるため、答えの見当を付けて考え進めることができます。
ノート例
全体発表とそれぞれの考えの関連付け
分母どうし、分子どうしをそれぞれたし算して、[MATH]\(\frac{5}{16}\)[/MATH]になったよ。
それはおかしいよ。だって、[MATH]\(\frac{5}{16}\)[/MATH]Lは、だいたいこれくらいでしょ。牛乳の[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]Lよりも少ないよ。分母はたさずに、分子だけたしたらいいと思うよ。

違う大きさなのに、たしてもいいのですか。
たしてもいいと思います。だって、分母の大きさが同じだから。
[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]は[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]が2つ。[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH]は[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]が3つ。たしたら、 [MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]が5つになるよ。

[MATH]\(\frac{2}{8}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{3}{8}\)[/MATH] は [MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]のいくつ分と見たら、2+3と同じだよ。
20+30 を10のいくつ分と見て、2+3と同じように考えるのに似ているね。
200+300 を100のいくつ分と見て、2+3と考えるのにも似ているよ。
もとにする数に注目すれば、分数も大きい数も整数の計算で考えることができるんだね。
学習のまとめ

評価問題
[MATH]\(\frac{4}{10}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{5}{10}\)[/MATH] は、どんな数をもとにすると4+5の計算で考えることができますか。また、計算のしかたをせつ明しましょう。
解答
[MATH]\(\frac{9}{10}\)[/MATH]
[MATH]\(\frac{4}{10}\)[/MATH]+[MATH]\(\frac{5}{10}\)[/MATH] は、[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]が(4+5)こ分だから、[MATH]\(\frac{9}{10}\)[/MATH]。
本時の評価規準を達成した子供の具体の姿
[MATH]\(\frac{1}{10}\)[/MATH]をもとにして、整数の計算(4+5)で考えている。
感想例
- 分子だけをたす理由を考えたことがなかったけど、[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]をもとにしたとき整数の計算になる部分が分子と同じ数になることが分かりました。
- 分数のたし算で[MATH]\(\frac{1}{□}\)[/MATH]をもとにして整数のたし算のように考えるのは、大きな数のたし算で10 や100 などをもとにして考えるのと、考え方は同じだなと思いました。
- 分数のひき算も、[MATH]\(\frac{1}{8}\)[/MATH]などの分数をもとにすれば、整数の計算で考えることができそうです。
イラスト/横井智美
『教育技術 小三小四』2021年12/1月号より