理科授業で、誰もが自信をもって考察をまとめやすくするためのポイント 【理科の壺】
理科では「考察」と言われているものを子どもたちに書かせますが、先生方は子どもたちが考察を書く際にどのように指導をされていますでしょうか? また、「結果」や「まとめ」、「結論」などの意味の違いを理解して「考察」を書かせていますでしょうか。
簡単に違いを言いますと、「結果」は、観察や実験の「事実のみ」を書く。「まとめ」は、よく教科書で使われている言葉で、「考察」と「覚えたい事柄」をセットにしたもの。「結論」は、問題に正対した形で示す簡潔な「最終的な判断」を意味します。
今回は、「考察」をまとめる工夫についてです。「考察」は「事実(観察や実験結果、必要に応じて方法も含む)」と「解釈(結果から分かったこと)」を一緒に述べたものを指します。さあ、どのように指導すればいいのか、そのコツを習得してみましょう。優秀な先生たちの、ツボをおさえた指導法や指導アイデア。今回はどのような “ツボ” が見られるでしょうか?
執筆/神奈川県公立小学校教諭・戸篠直角
連載監修/國學院大學人間開発学部教授・寺本貴啓
「考察」が書けない!どうしたらいいの?
下の例のように実験の結果を共有した後、いざ考察を書くとなったら手が止まってしまう子どもはいませんか。今回は、第4年A(2)「金属、水、空気と温度」における、水がふっとうしたら出てくるあわの正体についての問題を解決する場面を例に、誰もが自信をもって考察をまとめやすくするためのポイントを3つ紹介します。
【例】
ポイント① 子どもたち一人ひとりが実験の目的を把握する
実験の目的を問われた際に自信をもって答えられないようでは、実験の結果を適切に解釈できるはずがありません。予想の共有を行った後、実験方法の構想や確認をする際に「この実験は、何のために行いますか?」などと子どもたちに改めて問い、学習問題や予想に立ち返り、丁寧に実験の目的を確認しましょう。そうすると、一人ひとりが目的意識をもって実験に取り組めるようになります。
ポイント② 子どもが結果の見通しをもった上で実験に臨む
このように実験の結果が出たら、その実験結果からどんなことが分かるのかを実験前に確認しておきましょう。そうすることで、子どもは結果の見通しをもちながら実験に臨み、結果が出た瞬間に「分かった!」と結果を解釈できるようになります。また、見通しをもつことで早く結果を知りたいという気持ちが高まり、ワクワクしながら実験をより楽しめるようになる効果も期待できます。
ポイント③ 子どもが考察の組み立てを理解する
考察の組み立ての基本は、「事実(実験の結果)」+「解釈(結果から分かること・考えられること)」です。実際に子どもが組み立てを確認する際には、次のような例を示すのも効果的です。
下記の考察の組み立てに沿って、水をふっとうさせた時に出てくるあわの正体の考察を書くと、次のようになるでしょう。
<考察の例>
水をふっとうさせた時に出てくるあわをふくろに集めると、「ビーカーの水が減っていた」、「しぼんだふくろの中には水がたまっていた」という結果から、予想通り、水をふっとうさせた時に出てくるあわの正体は水であるということが分かりました。また、「ふっとうしている時はふくろがふくらみ、火をとめて時間が経つとふくろがしぼんだ」という結果から、あわは温度が高くなると水が目に見えない空気のように姿を変え、温度が低くなると水に戻ると考えられます。
さらに応用として、結果から分かったことと既習の学習内容や日常生活の事象を関連付けて考えたことを記述したり、どうしてこの結果になったのか、どんな現象が起こっているのか、といった仮説を記述したりすることで、より深い学びにつながる考察になっていきます。
しかし、まずは実験の結果を基にして、一番の目的である「学習問題の答えを出す」という意識がもてるよう指導していきましょう。
「このようなテーマで書いてほしい!」「こんなことに困っている。どうしたらいいの?」といった皆さんが書いてほしいテーマやお悩みを大募集。先生が楽しめる理科授業を一緒に作っていきましょう!!
※採用された方には、薄謝を進呈いたします。
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〈執筆者プロフィール〉
戸篠 直角●としの・なおずみ 神奈川県公立小学校教諭。同校研究主任。著作に「つながりを生かして学びを深める子どもの育成」(理科三団体連携企画HP2022年5月)。横浜市理科研究会化学部会副部長。SSTA横浜支部会員。現在所属する横浜市立井土ケ谷小学校は令和5年に理科の全国大会を控える。
<著者プロフィール>
寺本貴啓●てらもと・たかひろ 國學院大學人間開発学部 教授 博士(教育学)。小学校、中学校教諭を経て、広島大学大学院で学び現職。小学校理科の全国学力・学習状況調査問題作成・分析委員、学習指導要領実施状況調査問題作成委員、教科書の編集委員、NHK理科番組委員などを経験し、小学校理科の教師の指導法と子どもの学習理解、学習評価、ICT端末を活用した指導など、授業者に寄与できるような研究を中心に進めている。