伊丹市教育委員会後援のギフテッド研修会に、先生70名近くが参加
令和4年度に兵庫県でズームによる「ギフテッド研修(※)」が行われていたという情報をキャッチ! 特別支援学級担任、特別支援コーディネーターの他、小中学校の担任、公私立の幼稚園教諭といった様々な職種の先生方が70名近く参加し、盛況だったと言います。
伊丹市教育委員会、ギフテッド応援隊、そして研修を担当された北海道教育大学旭川校教授の片桐正敏先生にお話を伺いました。
※ 研修の正式名称は、「知的能力の高い,配慮や支援が必要な子どもたち ーギフテッド,2Eの理解と支援ー」
研修日は2022年6月21日(火)アーカイブ配信は8月18日~8月31日
目次
教育委員会が後援するギフテッド研修会

今回の研修は伊丹市立特別支援学校が主催し、伊丹市教育委員会が後援しました。伊丹市教育委員会の嶋本さんは言います。
過去には、ギフテッド応援隊(※)が主催した研修会を、伊丹市教育委員会として後援したこともあります。
※ ギフテッド応援隊 2017年設立の全国規模の親の会
ギフテッド応援隊代表理事・冨吉恵子さんは言います。
ギフテットの研修会は「先生」に聞いて頂きたいので、教育委員会が「後援」をして下さることは大切です。
冨吉さんが知る限り、行政としてギフテッドの研修会を後援したのは、伊丹市が初めてだそう。
伊丹市教育委員会が「前例」を作って下さったので、全国各地の応援隊主催の研修会を各教育委員会が後援するという流れができてきました。
ー なぜ、行政として、ギフテッドの研修会を後援しようということになったのですか?
伊丹市教育長の意向が大きいと思います。ギフテッドを特別視しているわけではなく、「誰ひとり取り残さない」という視点で考えた時、「ギフテッドについて知ることも大切だよね…」となったのは、ごく自然なことでした。
ー 研修の様子はいかがでしたか?
先生方に、ニーズが高い講座だという印象です。
昨年の秋、「ギフテッド」の有識者会議が文部科学省に提言を行い、2023年度の文科省予算案には、「ギフテッド」支援、実証研究費として8000万円が盛り込まれました。
「大きな問題」になる前に概要を「知っておく」と楽
研修の講師を担当された北海道教育大学旭川校教授の片桐正敏先生は言います。
突き抜けたエピソードが語られがちなギフテッドですが、私達が伝えたい「ギフテッド像」は、もう少しマイルドです。(片桐正敏教授、以下同)
- ギフテッドの目安の一つに「IQ>130」がありますが、分布表上は、約2.3%います。
- アメリカのデータによると、公立校に通う生徒の6.7%がギフテッド認定を受けているそうです。
- これらのデータから考えるに、ギフテッドは通常学級に1人はいる可能性が高いです。
文部科学省への5つの施策の提言
ー 通常学級に1人はいる! ギフテッドって、そんなにいるんですか?
はい、どの学級にもいると思いますよ。2022年秋、文部科学省に、ギフテッドに関する有識者会議から5つの施策が提言されました。これらをマスコミが取り上げるようになったことで、不登校や登校しぶりの背景に、ギフテッドの特性があると気が付き始めた保護者も増えています。
2022年9月、「特定分野に特異な才能のある児童生徒に対する学校における指導・支援の在り方等に関する有識者会議」から文科省への提言があり、今後取り組まれる施策として以下の5つが示されました。
https://kyoiku.sho.jp/184049/
- 特異な才能のある児童生徒の理解のための周知・研修の促進
- 多様な学習の場の充実等
- 特性等を把握する際のサポート
- 学校外の機関にアクセスできるようにするための情報集約・提供
- 実証研究を通じた実践事例の蓄積
「大きな問題」になる前に「知っておく」
大きな問題になる前に、ギフテッドのことを「知っておく」だけで、先生方も楽だと思います。
ー 大きな問題とは、どんなことなのでしょうか?
【ケース1】 発言をたくさんする。授業の最初に正解を言う ⇒ 頭ごなしの叱責で、不登校。
ギフテッドが不登校になってしまう理由の一つに、「先生からの頭ごなしの叱責」があります。
子供と対等に向き合っていないという教師の心持ちに、ギフテッドは敏感です。
授業中に必要以上に発言をしたり、最初に正解を言ってしまったりすることに対し、授業進行に支障をきたすと感じ、注意したくなる気持ちはわかります。
ただ、注意の仕方が頭ごなしだと、人権意識や正義感が強いギフテッドは、強い反発を感じます。そんなときは、頭ごなしに叱るのではなく、「なぜ、発言をたくさんするといけないのか?」「なぜ、最初に正解を言ってしまうといけないのか?」ということを理論的に説明して、本人に納得してもらうのが良いでしょう。
【ケース2】 学校では優等生、家では大荒れ。⇒ 保護者が、孤立。
ギフテッドは、「苦手」を高い知能で補ってしまえます。
学校生活の表面上は優等生のことも多いのですが、ストレスは溜まっています。その反動から、「家では大荒れ」ということもあるんです。たとえば、「家で、大荒れで困っています」と、保護者から相談を受けたとしましょう。
担任が「学校では優等生ですから、大丈夫ですよ」とだけ返してしまうと、保護者は「全然、わかってもらえない」と、孤立してしまいかねません。ここで、前述の話を「知っている」だけでも、保護者の話に耳に傾けやすいですよね。「もしかして、ギフテッドかも…」ということを念頭に置いて保護者と関わるだけでも、保護者の心持ちは全然違ってくると思います。