管理職という立場に対する優秀な先生の意識は?【全国小学校授業実践レポート 取材こぼれ話㉔】
目次
管理職に対する先生方の意識
前回の最後に、優秀な先生には管理職になってほしいという私の日頃からの思いを書きましたので、今回は管理職に対する先生方の意識ということについてお話をしてみたいと思います。
「学校って本当に校長先生のもんやな」
この連載の初回に、長く一緒に取材をしてきたT編集長の、「よい先生は本当によく子供を見とるな(関西弁)」と言う名言?について触れました。彼のまた別の名言?の一つに、「学校って本当に校長先生のもんやな」というものがあります。
これは、学校は校長先生が責任をもつものだから、何でも好きにできるというような乱暴な意味ではありません。そうではなく、「責任者たる校長先生の意思が自然と学校全体に行き渡っている」といった意味です。言い換えるなら、「学校には本当に校長先生の色が出ている」といったところでしょうか。ですから、校長先生が優しく人を包むような性格の方なら、先生方もそういう柔らかい雰囲気をもった方が多くなるし、明るく積極的な校長先生ならば、学校の先生方も元気で明るい雰囲気になるというようなことです。
それはマイナス面の場合でも同様で、T編集長と一緒に取材していた私も同様に実感してきたことでした。ですから、前回の校長先生のような、「学級経営も学校経営も同じ」というような確固たる信念に裏打ちされたものではありませんが、私も何となく「よい先生が校長先生になって学校全体の雰囲気がよくなればよいのに」と思っていたのです。
そのため、もうずいぶん以前(それこそ、管理職希望者が減ったと言われ始めた頃)から、授業名人と呼ばれるような先生によい授業を見せていただくと、取材の雑談で「先生は管理職になろうとは思われないのですか?」とお尋ねしたりもしていました。しかし以前は、ほとんどの先生が「いえ、私は管理職はちょっと」とおっしゃっていました。「一生、子供たちのそばにいたいので管理職には…」とおっしゃる方が大半だったのです。
それは、私がたまたまそういう方に会うことが多かっただけなのかもしれません。しかし、私自身の実感としては、「子供と共に時間を過ごすことが大好きで…だから、楽しい授業をしたい」というような感覚の延長で、よい授業をするようになった先生が多いのだろうという感じがしました。だからこそ、楽しく授業ができる子供たちのそばを離れたくないのだと。
管理職になるという優秀教師の増加?
ところが最近、何人かの授業のうまい先生に取材でお目にかかった後、「先生のような方には、ぜひ管理職になって、よい学校をつくってほしいと思うんですよね」とお話をしたら、たまたまかもしれませんが異口同音に「そうしたい」という声を聞くことができたのです。それはとてもすばらしいことだと思うと同時に、「へ~、ひと昔前の授業名人とは少し感覚が違うのだな」という驚きもありました。
しかし、それは考えてみれば当然のことなのかもしれません。前回お話をしたように、最近は現行学習指導要領と、それが求めるものによるところが大きいとは思うのですが、非常に論理的に授業について語られる先生が増えていると感じています。そのように教育について、より大きな枠組みで捉え、考えることのできる先生が増えているということではないでしょうか。もしそうであれば、学校経営をすることがいかに大事なのかが自然とイメージできるだろうし、そういう立場から、より多くの子供たちのために楽しい学びの場をつくっていこうと思っておられても不思議ではない感じがします。
ただし、管理職という仕事は激務であり、希望者が減ったと言われてから、もう10数年になるでしょうか。その後、管理職だけではなく教職全体の激務と、働き方改革にも注目されるようになりましたが、まだまだ大きく改善されたとは言えない状況にあると感じています。
けれども、先にお話をしたような論理的に考えられる先生方が管理職として改善策を考えていけば、状況は大きく改善されるのではないかと、楽しみにしているのです。「あなたに改善のアイデアはないのか?」と言われたら耳が痛いのですが、そんな期待感をもって状況を見ています。なぜなら、学びの場を創る先生方の幸せは、学ぶ子供たちの幸せにもつながるからです。だとすれば、優秀な先生方がそれを改善しないはずはないのですから。
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執筆/矢ノ浦勝之