ダンスの隊形移動は少ない方がいい!子どもも保護者もハッピーに
劇団俳優を経て、公立小学校の教壇へ。得意のダンス指導で日本一になったり、絵本作家にチャレンジしたりと、精力的な毎日を過ごす松下隼司先生。その教育観の底には、子供も指導者も毎日楽しく、笑顔でありたいという願いがあるそうです。そんな松下先生から、笑顔のおすそわけをしてもらう本コーナー。
運動会ダンスの「隊形移動」は、一体感が感じられる定番の演出。でも、子ども目線と保護者目線で考えてみると……? 今回は、「ダンスの隊形移動は少ない方がいい理由」についてお話しします。
指導:大阪府公立小学校教諭/松下隼司
隊形移動は誰のため? 何のため?
運動会ダンスの途中で、隊形移動をさせることがあります。
小さな円になったり、大きな円になったり、風車みたいに1列に並んでぐるぐる回ったり……。
自分もこれまで、ダンス指導で隊形移動を取り入れてきました。
子どもたちがきびきびと移動して隊形移動をするのを朝礼台から見ていると、とても一体感を感じ、感動を覚えました。
練習を始めたときはスムーズに移動できなかった子どもたちが、練習を重ねるたびに、上達していく様子を見て成長を感じました。
本番に向けて、朝礼台や校舎から練習を撮影して、子どもたちに見せて確認させるなどもしてきました。
でも、実際に自分が保護者になって我が子の運動会ダンスを見に行ったとき、気づいたことがあったのです。
それは、
「撮影しにくいやん!」
ということでした。
我が子の前にいてカメラを構えていたのに、ころころと隊形移動するのでカメラに我が子をおさめることができず、悲しかったのです。
我が子のダンスを見に行くまでは、「撮影しないで、しっかり見ておいて」「自分の目に焼き付けておいて」と偉そうなことを思っていたのですが、親として行くようになると、カメラで必死に我が子の姿を追う自分がいました……。
なぜなら、田舎にいる父や母に見せたいからです。何度も見返したいからです。家に帰ってきた我が子に見せてがんばりを伝えたり、残しておいてあげたりしたいからです(特に、コロナ禍の場合、見に行ける保護者の人数が限られていることもあります)。
また、我が子の隊形移動しているときの表情を見返していて、
「なんか、楽しくなさそう」
と思いました。
子ども目線で、隊形移動することを考えたら、確かに楽しくはないでしょう。
「はやく移動しないと、間に合わないで!」
と、せかされて走るだけですから……。
それ以来、隊形移動は、1回(多くて2回)にするようにしました。しかも、前列と後列を入れ替える程度です。
保護者もしっかりと自分の子どもをカメラにおさめることができます。子どもも、純粋に踊ることを楽しめます。
そして実際、隊形移動の数を減らすこと、移動距離を短くすることは、子どもにとっても保護者にとっても好評でした♪
松下隼司の笑って!!エヴリディは、木曜更新です
イラスト/したらみ
松下隼司(まつした じゅんじ)
大阪府公立小学校教諭。第4回全日本ダンス教育指導者指導技術コンクールで文部科学大臣賞、第69回(2020年度)読売教育賞 健康・体力づくり部門で優秀賞を受賞。さらに、日本最古の神社である大神神社短歌祭で額田王賞、プレゼンアワード2020で優秀賞を受賞するなど、様々なジャンルでの受賞歴がある。小劇場を中心に10年間の演劇活動をしていた経験も。著書に、『むずかしい学級の空気をかえる 楽級経営』(東洋館出版社)、絵本『ぼく、わたしのトリセツ』(アメージング出版)、絵本『せんせいって』(みらいパブリッシング)がある。