【相談募集中】発達障害があって肉が食べられない私は、教員は諦めるべきか
中学校の教師になりたいけれど、肉が食べられない自分は諦めた方がよいのかという相談が、「みん教相談室」に届きました。ここでは、元中学校校長、「全国教育交流会」代表の中野敏治先生からのアドバイスをお届けします。
目次
Q.発達障害があって肉が食べられない私は、教員は諦めるべきでしょうか
中学校の教員を目指しています。私は少し発達障害があり、お肉が食べられません。発達障害といってもほんの少しで、影響があることと言えば給食のお肉くらいです。すぐに生きている姿を想像してしまい食べられなかったり、中学生のころいじめに遭ったことを思い出したりして、食べられません。無理やり食べさせられた時も吐いたり失神してしまったりしました。
特に不安なのは教育実習の時です。教育実習は実習先の先生方(監督してくださる方)にいかに嫌われず終えるかが大事だと思うのですが、「お肉が食べられなくて減らしてもよいですか」なんて聞いたら即アウトですか…? インターネットでいろいろ調べていた時も、似たような方への回答で「そんなことで教師になれるとでも?」「指導する側が食べられないものがあるなんて通用しない」と書かれていました。やはり諦めるべきなのでしょうか。
(10代女性・17さい。さん)
A.ありのままの姿を見せることのできる教師が、信頼されるのです
教員採用試験で、「食べ物の好き嫌い」は採用基準に入っていません。大丈夫です。「教師は何でも完璧にできないといけないのでは」と思いがちですが、そうではなく、もっと人間らしくあってほしいと思います。失敗もするし、食べ物の好き嫌いもあるし、それでいいのです。
中学校の教員を目指しているとのことですが、どの教科の先生になりたいのでしょうか。自分の得意で好きな教科と、そうではない教科があると思います。きっと自分の得意で好きな教科の先生になると思いますが、得意ではない教科について生徒が質問をしてきたらどうしますか? 素直に「その質問はその教科の先生が詳しいと思うよ」「先生もわからないから、その教科の先生のところに一緒に聞きに行こうか」などと答えると思います。それでいいのです。
サッカー選手と卓球選手でサッカーの試合をすれば、きっとサッカー選手チームが勝つでしょう。卓球の試合をすれば卓球選手チームが勝つでしょう。それぞれに得意分野があり、オールマイティーではないのです。
教育実習に行って、教室で生徒と一緒に給食を食べる時、「先生、なんでお肉を残すの?」と聞かれたらと考えると、不安が大きくなってしまうのではないでしょうか。もっと力を抜いて、ありのままの姿で、素直に会話をすれば大丈夫です。「先生は、これを食べられないの。みんなは食べられるならしっかり食べようね」とさらっと生徒に伝えればいいのです。
食べられないことを隠そうとしたり、その場をごまかそうとしたりしても、感性豊かな生徒はそれを見破ります。
実習先の先生にも、ありのままを伝えてみましょう。教育への思い、生徒を思う気持ちがあれば、必ず分かってもらえるはずです。
教育実習の評価は、指導力を見て、校長が最終評価するものです。「食べられないものがある」ということをきっかけにして、実習先の先生方と折り合いが悪くなったことを理由に評価が悪くなる、などということはありません。なにより、質問者さんの教育に対する思いが伝われば、先生方に信頼してもらえるでしょう。
実際、私も小学校の頃、アサリが嫌いで食べることができず、給食にアサリが出るときは学校を休むことがありました。担任が給食を残すことを許さなかったからです。そんなことを思い出しましたが、とにかく、お肉が食べられないということで、教師になる夢を諦める必要は全くないということです。
インターネットにいろいろなことが書かれているようですが、気にすることはありません。自分を信じ、本当に正しい情報の中で自分の夢を追い求めてください。
教師はみんな完璧ではないのです。もしすべての教師が完璧だとしたら、その中で過ごす生徒は息苦しくなります。ありのままの姿で、生徒を思う気持ちを大切にし、人間味のある教師になってほしいです。そういう教師が生徒から信頼される先生だと信じています。
みん教相談室では、現場をよく知る教育技術協力者の先生や、各部門の専門家の方が、教育現場で日々奮闘する相談者様のお悩みに答えてくれています。ぜひ、お気軽にご相談ください。