見通しを持った働きかけで子供の夏休みが劇的に変わる!
「どんな夏休みにしたいか?」「どんなことができそうか?」といったことについて、一人ひとりにしっかりと考える機会を与えることが大切です。夏休み中や夏休み後の自分の姿を想像させながら、見通しを持った事前指導を行いましょう。
執筆/福岡県公立小学校教諭・村上暢崇
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目次
夏休み前
夏休みの楽しさから考えさせる
長い夏休みだからできる「体験」
自然体験
夏休みは、海や山、川などの自然と触れ合えるチャンスを多く設けることができます。
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社会体験
普段は見ることができない工場などを、個人や家族で見学できるイベントが多くあります。
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家庭の仕事(お手伝い)
家にいる時間を利用して、家族の一員としての役割を果たすことができます。
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長い夏休みだからできる「学習」
復習
1学期を振り返って、自分が苦手だった内容を繰り返し学習し、定着を図ります。
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予習
2学期で行う教科書のページを開いて線を引いたり、ポイントをまとめたりして主体的に学びます。
自由研究
自分が興味を持った事柄に対して、時間をかけてじっくりと向き合ったり、深く追究したりすることができます。
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夏休み前指導のポイント
「伝える」だけでは、子供の行動は変わりません。子供たちに「考える」時間を与えることが大切です。
イメージを持たせる
・1年前の夏休みはどうだった?
・今年はどんなことが起こりそう?
例を与える
・〇〇ができそうだね。
・こんなことをした人がいたよ。
考えさせる
・あなたはどうする?
・あなたは何がしたい?
計画させる
・具体的に何をするの?
・一日一日をどう過ごす?
評価や称賛する
・充実した夏休みになりそうだね。
・夏休み後のあなたに会うのが楽しみだよ。
・一日一日を大切に過ごしてね。
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夏休みの危険性から考えさせる
夏休みの「学習」に潜む危険性
何からやるべきかわからない
宿題の種類が多すぎて、何から手をつけるか悩んでいるうちに、日にちだけが過ぎていくことがあります。
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1学期の学習を忘れてしまう
1学期に、先生やみんなと一緒だとできていたことが、家でするとわからないことがあります。
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無計画で宿題が終わらない
夏休みの残りの日数よりも、残された宿題の量のほうが多い場合があります。
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夏休みの「生活」に潜む危険性
不規則な生活
保護者が仕事に出かけると、自分の力で生活をコントロールすることができないケースです。
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SNSトラブル
興味本位で送ったメールや覗いたSNSがきっかけで、思いがけないトラブルに巻き込まれてしまうことがあります。
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事件や事故に巻き込まれる
夏休みには多様な経験の機会があるからこそ、火の事故、水の事故、交通事故等の危険も多く存在します。
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夏休み中
子供たちは長期間、家庭での生活を送ります。担任が積極的に関与することはできませんが、つながりを絶たないという発想で、機を捉えたかかわりや働きかけを行いましょう。
すべての子供にできる働きかけ
「暑中見舞い」や「残暑見舞い」
教科等の学習と関連づけると、取り組みの幅が広がります。夏休み前に、担任宛てのはがきの表書きを行っておくと、すべての子供からの返信を受け取ることができるようになります。
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気になる子供や家庭への配慮
「電話連絡」や「家庭訪問」
必要性がある場合に、対象を絞って行いましょう。意図的にお願いごと等をすると、個別の連絡がしやすくなります。
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夏休み期間中に地域のイベントなどがある場合には、積極的に参加することで、子供たちの様子を知ることができます。また、それが夏休み中に個別に連絡をとるきっかけになったり、夏休み後の指導に生かせたりする場合もあります。
夏休み後、子供たちの状況を把握する
「言動」から把握
表情や言葉遣い、服装や持ち物といった細部にまで気をつけて観察し、子供の様子の変化を見取ります。
「宿題」から把握
宿題をやっている、またはやっていないといった事実のみに翻弄されず、なぜそうなったのかを想像します。必要に応じて個別に面談等を行いながら、子供たちの状況を正確に把握します。その後、全体に、個別に必要な指導を検討した上で、新しい学期をスタートしましょう。
夏休み期間中に重ねた経験は、一人ひとり異なります。一人ひとりの声にしっかりと耳を傾け、「何があったのか」「何を学んだのか」といったことについて話を聞くようにしましょう。
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夏休みに入る前に、夏休み後の子供の姿を想定し、必要な時期に必要な働きかけを行う!
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イラスト/菅原清貴
『教育技術 小五小六』2021年8/9月号より